第13話 一夫多妻

 みんなぁ!

 元気かなぁ!!

 手島直之君だよぉ~~~!


 ってなわけで、今の俺は込み入った話の中心に…立たされている。


「今後、貴女方と彼の同居を許すことはできません!」

「そ…そんな!

 私達には問題ありません!」

「貴女方に問題が無くても、ダメなのです!」

「ですが…。やはり納得できません!!」

 領主婦人がぴしゃりと言えば、ファフママが反論する。


 で、俺はこの二人の真ん中に立たされたままなんですが…。

 アルとエルはクリスが部屋から連れ出して行った。

 領主さんは…居なくなってるし。


「どうしても、理由を知りたいですか?」

「はい、是非お願いします!!」

 しばし考えた末、領主婦人はファフママを部屋の隅に呼び寄せてヒソヒソと話し始める。


 話している最中に、双方ともに赤面したり、モジモジする。

 その後しばらくして、俺は呼び出されたわけなんだけど…。


「あ、あのね、ナオキ君…。」

 いつになく戸惑い気味のファフママと、好奇な眼差しで見つめてくる領主婦人。

 いったい何なのだろう。


「あ、あのね、ナオキ君…わ、私と…け、けっこ…。」

「け???」

「あ~~~~ぁ、やっぱりだめぇぇ!!!」

 耳まで赤面して俺の前から逃げていくファフママ。

 そして、ため息をつく領主婦人。


「で、何がどうなってるんです?」

「単刀直入に言います。」

 領主婦人が割って入ってくる。

「ナオユキ君、君は独身よね。」

「も、も、もちろんです。」

 妙に声が上ずり、緊張してしまう。


「ファフュートブルーマさんは、子どもはいるけど、今は独身。」

「は、はい…。」

「お嬢さん達も、当然独身なわけよね。」

「…確かに。」

「独身の男女を同じ所に住まわせる事は、この国ではご法度なのよ。」

「あ~ぁ、なるほど。」

 すんなりと納得できた…。

 というより、今までよく問題起こさなかったなぁ俺。


「だから、君を彼女達から引き離したいんだけど…ね。」

 領主婦人がファフママの方を見ると、瞳をウルウルさせている。

「…。」


「というわけで、君が自主的に出ていくのか?

 あるいは、ファフュートブルーマさんと結婚して家庭を持つか…という話をしようと思ったんだけど…。」

 ファフママの瞳のウルウル度合いが、当社比過去最大級になっている。


「難しいでしょ?

 おばさんは嫌かもしれないし、そもそも恋愛対象の外側でしょ。

 彼女にしても、娘さんたちにしても…」


 ファフママの瞳から、綺麗な雫が流れ始めてますよぉぉ!


「あ、あのですね。

 僕、恋愛とか全く判からなくって…というか、恋愛音痴って言われたくらいで。

 …あ、あはは」

 笑うしかなかった。


 好きか嫌いかと言われれば、好きという選択肢しかない。

 ただ、好きというのが良く判らない。

 憧れていた女性は居たが、そのときめきとは少し違う好きなのかもしれない。


 領主婦人はクスッと笑うと

「まだまだ子どもなのかなぁ…。」

「す、すいません。」

「謝らなくてもいいわ。

 ところで、君はいくつになったの?」

「はい、十七歳です。」

「ファフュートブルーマさんは…」

「当年二十七歳になりました。」

 少ししょんぼりするファフママ。

「…」


 少し考え込んでいた領主婦人がニヤッとする。

「婚約させましょう。」

「!!!」

 びっくりするファフママ。

 俺は俺で頭がまっっ白になってしまう。

 …というか、なんで婚約?

 結婚する年でもないし、だいたいファフママの気持ちはどうなんだぁ??

 アルとエルはどんな気持ちになるんだ??

 という事が、ぐるぐる頭を回っている。


 後で聞いた話だが、この時、頭を抱え激しくダンスをする俺を見て、ご婦人方は引いたらしい。


「あとね、この国では一夫多妻はのーぷろぶれむだからね。」

「!!!」

 領主婦人のとんでも発言にファフママは絶句!


 俺のこころは、十万億土の彼方へすっ飛んでしまい、放心状態だった。

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