佳織が見た星空⑧

「織姫と彦星に、何か願いごとでもしていたの?」


「……あ、いや……それもあるけど、

 へびつかい座に祈っていたんだ」


「え? なんで? 晴彦、へびつかいにでもなるの?」


「いやいや、そうじゃなくて……」


そういって、晴彦は財布から写真を出し、

懐中電灯で照らして見せてくれた。

晴彦のお父さんの写真だ。

自衛隊の医官をしていたけど、

数年前、事故で亡くなったって聞いていた。


自衛隊の制服姿で写る晴彦のお父さん。

その襟のバッジのところを見せてくれた。

杖に2匹のヘビが巻き付いているデザインだ。


「へびつかい座は、アスクレピオスという、

 ギリシア神話の医者がモデルになっているんだ。

 医術の達人で、死人さえも生き返らせたらしい」


「だから、自衛隊のお医者さんは、ヘビのバッジをしているのね」


「杖に2匹のヘビが巻き付いている。

 星座のヘビは1匹なんだけど、

 自衛隊では仲間で協力して助ける、という意味を込めて、

 2匹のヘビのデザインにしたらしいよ」


「へぇ~そうなんだ。

 2人で助け合って命を救うって、ちょっといい話かも」

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