佳織が見た星空②

私は車を降りた。

そこは、誰もいない海岸だった。


潮風がとても涼しい。日中の暑さが嘘のようだ。

目の前に広がる、広い海。

夜の海は、すべてを飲み込みそうな、そんな怖さを秘めていた。


私たち以外に誰もいない。

聞こえるのは、波の音だけ。


「海を見たかったの? 花火でもするの?」


すると、晴彦は答えた。


「花火もいいかもね。でもね、線香花火よりも、もっと儚い光を見たくて……」


私には、晴彦が何を言い出すのか分からなかった。


「数千年前の光を見せてあげる」


晴彦はそう言うと、空を指さした。


「わああぁぁ」


私は思わず、声を上げた。

街中では見られない満天の星が、私を見つめていた。


「すごい…… こんなにたくさん星を見たの、初めて……」


何かがたくさんあるって、なんだか怖くなってくる。


街中にいる時は、見える星は数えられるくらいだった。

けれど、いつもは見えていないけど、

空には本当は、こんなにたくさんの星があったんだ。


「あっちを見てごらん。天の川」

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