第157話 マラッカを陥落させたのでそろそろ明に支配を認めさせた上で日本へ戻ろうか
さて、マラッカのポルトガル在住勢力の保持していた水上戦力を壊滅させた後に、マラッカの北の農地や牧場は焼き払い、マラッカ川を挟んだ西側の商業地域との通行のための橋も落として、マラッカのポルトガル人が居住している要塞地域を包囲して一週間もすると、まずはマレー系の傭兵たちが投降したり、逃げ出し始めたようだ。
今もそういった連中が投降してきている。
「お、俺達は奴らに雇われただけだ、どうかたすけてくれ」
「ふむ、ちなみにお前は何の神や仏を信じておるのだ?」
「アッラーだ」
「ならばイスラームか。
ならまあ良いだろう、今は見逃してやる。
だが俺たちに敵対すると言うなら今以上ひどい事になると思え」
「わ、わかった、助かる」
傭兵たちはコクコクうなずいてほうほうの体で逃げていった。
この時代の東南アジアは意外と傭兵も多いが、命をかけて戦うほど彼らの戦意は高くない。
そしてポルトガルやスペインは侵略を行うときにはその敵対勢力の一部を引き入れたりして、相争わせて弱体化させた後で、自らが攻撃をすると言う方法を取ることが多い
だが、今回はイスラム系王国はカソリック排除でまとまっており、そもそも矢面に立ってるのは俺たち日本の部隊だけでもあるし、ポルトガルはこの地域では本当にろくでもないことばかりしてきたこともあって、外交的にも完全に孤立している。
またヨーロッパ全体が戦乱に突き進みポルトガル本国もそれに巻き込まれているという状況により、当然援軍どころかマラッカらも戦力は引き抜かれたばかりで、農地や牧場も焼き払われて食料も不足し、完全攻囲されてる状態で、この状況を打開するには決死の覚悟で不利でも打って出るしかないが、そもそも黒人やマレー人の奴隷たちにはポルトガル人のために戦う気がない。
更に言えばマラッカ陥落のときのような鉄砲や大砲の性能においてのポルトガル側の優位もない。
それはポルトガル人が日本に鉄砲を持ち込んで、それを日本人は改良して使っているからでもあるが、それでも要塞には堅固な城壁と据え付けの大砲などもありそれにより状況は膠着するかに見えた。
「じゃまあ、
ロケット弾の命中精度はそんなに良くはないが、マラッカのポルトガル要塞の何処かに着弾すれば十分だ。
「どんどん打ち込め!」
「了解です!」
範囲の広い小田原攻略時にはそこまででもなかったが、中途半端な広さのマラッカだとなかなかに効果的なようだ。
そして、破れかぶれになったかポルトガル人が東側の門からでて攻撃してきた。
「良し、十分ひきつけて鉄砲玉を打ち込め」
「はい!」
フリントロック式の鉄砲を構えさせて、突撃してくるポルトガル人にそれをうち放つとバタバタと倒れていく。
最終的にはポルトガル人は降伏したが、いままでの行いの報いでドン・レオニス・ペレイラは現地人のリンチによって死亡した。
「まあ、自業自得ってやつだ」
その他の降伏したものにはイングランド人やネーデルランド商人等のプロテスタント系の連中は丁寧な扱いをして、ポルトガルやスペインなどのカトリック系は火炙りにし、カトリックは皆殺しにするつもりだが、見分けが付かない現状では危険なので、再来は欧州がプロテスタントの下で落ち着いてからにしてほしいと言い含めて、ある程度護衛をしてインド方面へ送っていった。
実際にはカトリック系のものも含めてな。
これでスペインが本気を出してイングランドやネーデルランドを叩き潰したら、歴史も大きく変わるかもしれない。
世俗の職業を重視したプロテスタントの信仰は後に資本主義や産業革命の技術の発展に大きく寄与したからな。
まあだからといってカトリックは政教分離が不可能なのでそっちにもあまり強まられても困るが。
その後、マラッカの東側のポルトガル人居住地域は汚物や遺体でえらいことになってたので、一旦はそれらを徹底的に焼いて浄化することにした。
キリスト教徒やイスラム教徒は遺体を焼かれることを恐れるが仏教徒には関係ないことだしな。
教会も破壊し、こちらの地区の建物などはすべて作り直すことにした。
「これでこのあたりの足がかりは完全に失ったであろうな」
マラッカ海峡の中央からポルトガル勢力を駆逐できたのは大きい。
無論スマトラ島の西側から船を進めることも出来ないわけではない。
そちらの監視のためにスマトラ島西部のパダンとその対岸のムンタワイ諸島最大の島であるシベルト島のスマトラ島側に拠点を確保しマラッカ海峡だけでなくスマトラ海峡側からのヨーロッパの航路を塞いでから、ティモールのポルトガル人を殲滅して、東南アジアから彼らを駆逐した。
「ふむ、まずはこれくらいやっておけばよかろうか。
後は義弘と交代するかとも思ったが、まずは尚久叔父上に任せたほうが良いかな」
南アジアのインドのゴアやセイロン島などからも奴らは叩き出すべきだが、あまり俺が日ノ本にいないのもまずいしな。
というわけで既に呼んである尚久叔父上にマラッカは任せることにした。
「尚久叔父上、マラッカのことは後は頼みます」
「ああ、任された」
俺はマラッカからルソンを経由して高山国へ向かった。
「父上、マラッカからポルトガルを駆逐したので戻ってまいりました」
「うむ、ご苦労」
「それで父上にやっていただきたいことがあるのですが」
「ふむ、なんだ?」
「南蛮の国々や琉球王国等と共に明に使節団を派遣し、その使節団長として明の天子へ挨拶をしていただきたいのです」
「ふむ、そして具体的には何をすれば良いのだ」
「南蛮及び南海における日本の統治権限を認めてもらい、明の天子の名において藩王の称号を与えて貰う事で、南蛮及び南海の明朝貢国に対する代理的指導体制の大義名分をもらいつつ、高山国への領土要求の余地を無くしていただきたいのです」
「ふむ、いまさら明に属せよと言われても困るのは確かだな」
「後は南蛮の品物を使って朝貢品を頂いてもらえれば」
「うむ、それは良いな」
「現状の明に不満を持っている人物も出来れば引き込みたいものですな」
「まあ、それは確かだな」
父に東南アジアの諸国の使節らと共に明の皇帝へ挨拶を行い高山国やフィリピンのルソン、マラッカなどへの支配権を認めてもらうようにしてもらいつつ、俺は日本へ戻ることにした。
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