第158話 日本に戻ってきたがとりあえず女真の状況を確認させようか
さて、マラッカのポルトガル要塞地区を陥落させ、マラッカ海峡の中央からポルトガル勢力を駆逐し、スマトラ島西部の航路の要であるパダンと、その対岸のムンタワイ諸島最大の島であるシベルト島のスマトラ島側に俺達の拠点を確保した。
その結果マラッカ海峡だけでなく、スマトラ海峡側も抑えることで事実上インド洋から南シナ海に抜ける航路はほぼ完全に封鎖できたと思う。
父にルソン島やマラッカなどの藩王国を認めてもらうことでその地位も一応確保した。
そして季節風に乗って俺は日ノ本へ戻ってきたのだ。
「やはり日ノ本は良いな」
そして俺に変わって政務を代行してもらっている大坂城のお祖父様のもとへ向かう。
「お祖父様、只今戻りました」
お祖父様はニコっと笑って嬉しそうに言った。
「うむ、ようやく戻ったか、これで儂も楽隠居できるかのう」
実際いろいろ大変だったと思うが、そんなことは言わないでいてくれるのはありがたい。
「そうですね、後は俺にお任せください」
「うむうむ、そうさせてもらうとするよ」
お祖父様から現状の政務を引き継ぐがまあ、これと言って大きな問題は起きていなかったようだ。
お祖父様はゆうゆうと九州の鹿児島に戻っていった。
「さて、南方に関しての残りは義弘に任せるとするか」
俺は九州と高山国から義弘と忠将叔父上を呼んで二人に告げた。
「義弘には今まで俺が行っておった南海方面での南蛮との戦いを引き継いでもらう。
九州の統治は忠将叔父上にお願いしたい」
まず義弘がうなずいた。
「うむ、任せておけ、南蛮共は皆殺しにしてくれる」
俺は苦笑して答えた。
「いや、実際に皆殺しは無理だ。
だからこそ、お前さんにやってほしいのは
出来れば伴天連の拠点になっているゴアからは奴らを追い出したいところではあるがな」
「なんじゃつまらんのう、やるべきことはわかったぞ」
「うむ、よろしく頼むぞ」
まあ、スエズ運河のない時代ではポルトガルからアフリカをグルっと回ってインドへ向かうよりは日本からのほうがまだ近いとはいえ距離的には離れすぎているからな。
これ以上西に手を広げるのはあまりよろしくはない。
もう一方の叔父上もうなずいていう。
「ふむ九州の統治か、まあなんとかやってみるとしようか」
「ええ、日ノ本として明や朝鮮・琉球などとのやり取りもある程度行わなくてはいけない地域ですのでよろしく頼みます」
実際に九州は朝鮮半島に非常に近いこともあって重要な地域であるからこそ、そちらはそちらで対応できるようにしておかねばならん。
そしてそろそろ本格的に女真族の動向もみておかねばならんな。
後金の創始者で清の初代皇帝とされるヌルハチは既に生まれているはずだ。
そして、史実よりも南方の倭寇対策や秀吉の朝鮮出兵などによる疲弊が少ない明だが現状の女真は建州女真五部・海西女真四部・野人女真四部に分かれて、互いに激しく抗争しており、明は朝貢の権利を細かく分散させることで、女真の中で飛びぬけて力の強い部族を出さないようにしていた。
しかし、この頃には若干の権力集中が行われるような政策に転換していて、その弊害で、明も放っておけないほど部族の間での武力抗争が激しくなって統制も取れなくなっていた。
結果として女真族は統一されて後金を建国し、明の李自成の乱もあって明は滅ぶことになる。
「まあ、滅んだら滅んだでもいいっちゃ良いんだが……」
史実における江戸時代ではそもそも秀吉の朝鮮出兵により明との国交は完全に断絶していたこともあって、明との交流は一切なかったと言って良い状態だったので明が滅んで清になったときにもほとんど影響はなかった。
明の遺臣が助けを求めてきたときにもきっぱり協力は断っているしな。
「と、言うわけにもいかんのだよな」
史実の日本は海禁政策を取ってオランダ人は長崎の出島のみに、華僑は唐人屋敷にのみ上陸を許され、朝鮮との貿易は対馬の宗氏経由であった。
それに比べて現状の俺は北はカムチャッカ半島や千島列島、南はマラッカ周辺まで影響下においているが、その安定のためには中華帝国にも安定してもらわねば困るのだよな。
南宋と金のように南北で分かれる形でも構わないのではあるが。
「女真の状況を確認させるために人を派遣するか」
高山国は父貴久、フィリピンからマラッカに掛けた南シナ海は叔父尚久、セイロン島は弟義弘に任せておいて問題はないと思うし、北は歳久に任せておいて間違いはなかろう。
となると明国や満州方面はやはり俺がなんとかせねばなるまいな。
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