第155話 マラッカをポルトガルから奪還するためにシンガポールなどを押さえたよ
さて、スペインの艦隊は無事に拿捕し一隻は書類を添えて本国へ送り返し、残りはポルトガル船を襲うために使わせてもらった。
それによってポルトガルもスペインもアジアに手を出すどころでなくなるだろう。
「そろそろマラッカからポルトガルを追い出すとするか、その前に拠点を確保するとしたら……」
まずはマレー半島の先端にあるシンガポール島を押さえるべきだろうな。
シンガポール島はもともとはマラッカ王国の領地に入っていたが、マラッカ王国は1511年にポルトガルの侵攻を受け滅亡。
ポルトガル領マラッカで迫害をうけ追い出された、マラッカ王国の一部のイスラム商人や王族はシンガポール島と移っていったが、そちらも1513年にポルトガルの徹底的な侵略を受け、マラッカ王国からの移住者やマレー系現地住人の多くが虐殺された。
その後マラッカ王であったマフムード・シャーはマラッカの南方のムアルに逃れて再起をはかったが失敗。
そこを追われてマレー半島東岸で王国の属領であったパハンに移った後にビンタン島で体勢を立て直し、1512年以降5回にわたってマラッカを攻撃したが奪還に失敗。
それに対しポルトガルは1526年、ビンタン島を攻撃して、ここで徹底的な略奪を行った。
その後マフムード・シャーは逃亡先のスマトラ島のカンパルで失意のうちに世を去り、その次男であったアラウッディン・リアヤト・シャーが、1528年、マラッカ王家の分流にあたるパハン王家の助力を得て、カンパルからマレー半島南端のジョホールに移り、ジョホール王国を建国した。
で、このころポルトガルの侵略により壊滅したシンガポールは荒廃したまま忘れ去られていた。
「よし、今なら島々を簡単に制圧できるな」
現状のシンガポール島やリアウ諸島のビンタン島、リンガ諸島のリンガ島、シンケブ島などはポルトガルの徹底的な破壊と掠奪によって俺たちが入植する前の高山国と同じように、原始的な漁を行う漁民と海賊の居住地でどこの国にも属していない。
そして海賊船が俺たちに攻撃をかけけてきたが返り討ちにしてやった。
「海賊共!ポルトガルに従うなら首を切る!。
しかしならば、我々とともにポルトガルと戦うというのなら投降を許そう」
「わ、わかった、俺たちはお前たちに従ってポルトガルと戦おう」
連中は王直の死後に倭冦残党を率い広東・福建最大の海賊として名をはせていたが、ある程度力を取り戻した明朝政府から目をつけられたために、マレー半島へ逃げてきていた倭寇の頭目の林道乾や林阿鳳などだった。
そいつらを屈服させ、武装海上交易商人兼海賊として広東、福建の海上交易商人のネットワークを俺は取り込んだ。
まあ、奴らは明には追われてる立場だから明内部に直接手がかりができたというわけでもないがな。
これによってマラッカ海峡の東端の島々を俺たちは制圧し、香料諸島ことモルッカ諸島や1515年に占領されているティモール島へのポルトガルの海上航路は塞いだ。
「そろそろ人手も足りなくなってきたし、叔父上にも手伝ってもらおうか」
俺は薩摩水軍の長であった叔父の尚久を呼び寄せることにした。
「久方ぶりです、叔父上」
「ああ、俺をこちらに呼び寄せたのは海賊として働けってことか?」
「まあ、そんなところです、このあたりの島々と日ノ本からの水軍や倭寇の海賊どもを統括管理していただければと」
「そりゃまたずいぶんでかい話だな」
「俺もそろそろ日ノ本に戻らなければなりませんしな」
「まあ、いつまでも天下大将軍が日ノ本に不在ってわけにもいかんだろうな」
「マラッカを陥落させた後には、俺は義弘と代わって日本へ戻るつもりですがな」
「なら九州はどうするんだ?」
「そちらは忠将叔父上にやっていただこうかと」
「なかなか人使いが荒いなお前さんは」
「俺自身が怠けてるならともかく最前線や最後方で一番働いてると思ってますよ」
「ま、そいつは違いねえな」
ともかくマラッカ海峡の東側の島々を押さえたことで、元々ポルトガルによる統治は完全には行き渡らずほとんどディリの町に限られていた、ティモール島は実質管理できなくなるだろう。
マレー半島のジョホール王国やスマトラ島北部のアチェ王国・ジャワ島西部のバンテン王国に牽制をさせつつマラッカの攻略に取り掛かろうかね。
ポルトガルによって城塞都市化が進んでるはずだからそう簡単には攻略できないかもしれんがな。
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