永禄8年(1565年)

第153話 ミゲル・ロペス・デ・レガスピのスペイン艦隊と交戦してこれを拿捕したよ

 さて、なんやかんややってるうちに年が変わって永禄8年(1565年)になった。


 昨年のうちにスペインのコンキスタドールであるミゲル・ロペス・デ・レガスピはメキシコのメキシコ西海岸を、5隻からなる艦隊と500名の兵士を引き連れて出港しているはずだ。


 俺は哨戒を行っている雑賀党に命じた。


「東から来るスペインの船に厳重な警戒をするように」


「かしこまりました」


 おそらく現在はグアム・サイパン・テニアンなどがあるマリアナ諸島に上陸している頃だろう。


 彼らはマリアナ諸島の先住民であるチャモロ人と闘ってるはずだが、現状ではマリアナにまで勢力圏を広げられるほど余裕はない。


「彼らがそのままに西に進めばここへやってくるだろうな」


「そんな事が可能なのですか?」


「既にここにはスペイン人が何度か来ているからな。

 幸い今まではスペイン人に占拠されずにそいつらは死んでいた。

 だが、今回は今までの結果を鑑みてやってくるであろう」


「なるほど、厄介なことになりそうですな」


 ロペス・デ・レガスピたちがフィリピン諸島の圏内に到達したのは2月のことであった。


 雑賀党より敵の船を発見したとの報告があったので、俺達は迎撃のために船団を出港させ東へ向かった。


 そして敵スペイン艦隊と遭遇したのだ。


「敵艦見ゆ!」


 その報告に俺は大声を張り上げる。


「よし、伴天連共は殺しても構わんがその他はなるべく捕らえよ、捕らえたものには銭を出すぞ!

 最悪殺しても構わん」


「おおー!」


 この時点だとスペイン艦隊がキャラックなのかガレオンなのか判別が尽き難いが、ガレオンだとしてもさほど性能は良くないはずだ。


 何より向こうは3ヶ月以上の間の船旅をして疲労困憊してる。


「さあいくぞ!

 日ノ本を守るためにな!」


「おお!!」


 俺は船を縦列に並べ敵艦へと肉薄させる。


「おっしゃ総員戦闘配置!

 大砲での戦闘に入るぞ」


 相手のスペイン艦隊は同等以上の大きさのジャンク船が近付いてきていることに驚いているらしい。


「よし、砲を撃て!そして敵船へ突っ込め」


「了解!」


 この時代の砲は再装填するのに30分以上かかるので最初に足止めに使ったりするくらいで、後は接舷しての切込みがメインになる。


「うらー、首をよこせ!」


「きえーい!」


 むろん、3ヶ月以上壊血病対策もろくにしないでメキシコからやってきた連中と、フィリピンでしっかり準備を整えている俺の部下ではコンディションも違いすぎるし、鎧などをつけることがあまりない海上では日本刀の切れ味は相手のカットラスなどを上回る。


 数が同等程度ならば俺たちが負けるはずがなかった。


 こうしてスペイン艦隊を打ち破りミゲル・ロペス・デ・レガスピらを捕らえ敵の船を拿捕した。


 こっちも大砲の攻撃を受けたりして損傷した船もでたが、沈没した船はない。


「よし、迎撃作戦は成功だな」


 捕虜にした連中にこちらの戦力、練度、火力を持っているかを判らせるために戦勝祝は派手にやる。


 マニラ湾の船を見せつけつつ、花火を打ち上げさせ、上陸した彼らに空砲を撃ち鳴らして出迎えをさせ。


 1万人ほどの鉄砲足軽や槍足軽の行進を見せつけてこちらにはこんなに戦力があるのだぞと明確にみせてやったのだ。


「さて、ヌエバ・エスパーニャから来た赤毛人よ。

 我が国は古来より和をもって尊しとする誇りある民族であり、こちらが出す条件を認めるなら交易を行うことは吝かではない。

 そちらの国王への書簡を持ち帰ってもらいたい。

 嫌だと言うなら首を斬るだけだが」


「わかった、王への書状を届けることを約束する」


「ああ、この土地を奪われたくないとお前さんたちが来るという情報を提供してくれたポルトガルとイングランドの女王、ネーデルランド商人や北欧諸国の王たちには情報提供の協力感謝していると伝えておいてくれ」


「なんだと?」


「ああ、聞こえなかったのか?

 ポルトガルとイングランド、ネーデルランドやバルト帝国の助力で俺たちは勝てたのでありがとうと伝えてほしいんだよ」


「そういうことか!」


 文の内容はおおよそこんな感じ。


 "日ノ本の王よりエスパニアの王へ。

 我が国は和をもって尊しとする誇りある民族である。

 それ故に条件を認めるなら貴国と交易を行うことは吝かではない。

 しかし飽くまでも新大陸の如く武力や宗教による干渉を強行し我々を劣った民族だとするなら、我々はそれに対して徹底的に抗うことになるであろう。

 一万丁の鉄砲を装備した20万の精鋭兵と戦い我が国を征服出来ると思えるなら、どうぞご自由に。

 その見返りとして貴国はヌエバ・エスパーニャを失い、新教国の女王などとの戦いに敗れるであろう"


 としておいた。


 そして5隻のうちの1隻の船にミゲル・ロペス・デ・レガスと、船の運用に必要な人員を乗せてメキシコへ戻らせたのさ。


 残りの連中と船はこちらで使わせてもらう。


 水夫は奴隷にして南蛮船の操船や新しい南蛮船の造船に携わらせることにする。


 こちらを劣等民族とみなして反抗的な者は見せしめに首を刎ね、首を晒すなり、明へ奴隷として売るなりしたよ。


 そうすることで他の者はとりあえずはおとなしくなった。


 聖アウグスチノ修道会の修道士で航海士のアンドレス・デ・ウルダネータやフランシスコ会からの修道士などのカソリックの宣教師は皆殺しにしておいた。


 それと艦隊の積み荷のメキシコなどの金銀宝石などの財宝やトマトやピーナツ、タバコなど新大陸の作物は当然全部押収した。


 スペインやローマの教皇がこれでどう出るかはわからんが、武力で制圧するのは無理だと認識はするだろうと思うがな。


 ついでにスペイン・ハプスブルク朝に敵対的なイングランドやネーデルラントのホラント州やゼーラント州、後のネーデルラント連邦共和国の有力者たちや、デンマーク・ノルウェー・スエーデンなどの北欧プロテスタント諸国に”スペイン船団壊滅の協力に感謝”という書簡を送ることにする。


「これでスペイン・ハプスブルク朝の矛先がそっちに向けば万々歳ってな。

 後今回拿捕したものも含めてスペインの国旗を掲げて香料諸島とマラッカを往復するポルトガルの商船を今後は襲うようにしてくれ」


「かしこまりました」


 史実では宣教師は武力で日本を制圧することはできないと言っていたようであるし。


 返答次第ではまずはマリアナ諸島のスペイン人集落を壊滅させようとは思うが返答が楽しみだな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る