永禄7年(1564年)
第149話 フィリピンやボルネオで農業や工業・商業を広めていこうか
さて、年は変わり永禄7年(1564年)になった。
フィリピンでの家臣たちの正月の挨拶などは手短に終わらせつつ、フィリピンのルソン島やセブ島、ボルネオのブルネイなどの制圧した地域の地盤作りから始めよう。
占領政策としての先住民への教育・福祉・貧民救済などは寺などの宗教にも手伝ってもらうとして、根本的なところは農業や工業、商業の奨励をしなくてはいけない。
フィリピンではマゼランを撃退したラプ=ラプの兵士が使っていたのが竹槍であったりするように、俺たちが乗り込む前の高山国と同じで、石器や土器が基本の狩猟採取、海での漁労や簡易な焼畑農業がおもな産業である場所も多い。
インドシナ半島のベトナム・カンボジア・タイなどや日本・朝鮮などは古くから中国の影響も大きかったので、農業や鉄器が普及してるし、鉄砲に関しては東南アジアのほうが普及は早かったくらいだが、大陸から離れた東南アジアの島はあまり大きな影響を受けてない場所が多いのが原因だろう。
もっとも紀元前2000年くらいにはマレー人が水田農耕を持って移住したとされ、フィリピンでもイネの栽培も全く行われていないわけでもないのだがな。
「土地を守ろうにも技術に差がありすぎるからな、日本はそういった意味では助かってるか」
なのでまずはマニラ湾周辺の湖や川の近くでの水田による稲作やさつまいもの栽培に取り掛かり、マニラでは鉄の農具や日本刀や槍・鉄砲などの武器などの製造や青銅の大砲の鋳造、銅銭の鋳造、交易の推奨なども進めることにする。
ボルネオ島のブルネイでも同様に農業・工業・商業を推奨した。
ただ、もともと必要な時に必要なだけの労働をすればいい狩猟採集民には計画的に作業をおこなう灌漑農耕には向いていない。
米ならば半年、バナナでも収穫までには3ヶ月程度はかかるのだが、まとまった収入が3ヶ月に一回しかないというのは考えられない事態なわけだな。
なので、ここでも水田などの治水灌漑など開拓は日本や琉球、高山国などから人手を集って移住させ、屯田兵とさせる。
専業の兵士も必要だがそれだけでは食わせていくのが大変だしな。
「やはり、農作業はそれに慣れているものでないとなかなか進まぬか」
ちなみに、スペインによるアメリカ新大陸の侵攻やポルトガルの東南アジアの制圧が比較的容易だったのは、それらの地域の文明が石器文明で特に防具がないに等しく石の剣や竹槍ではスペイン人などの鎧を貫けなかったのも理由の一つだったと思う。
だが、蒸し暑い地域ではあまり暑苦しい鎧を身につけるとそれで体力を消耗したり、下手すれば熱中症になったりするし、鉄砲の普及で多少鎧の鉄板が厚くても鉄砲の弾丸は防げないことで、あまり重要ではなくなりつつあったがな。
「ある程度の備えは必要だし、駐屯する兵士たちの食糧も自給できるようにしなければな」
無論農業は着手したからと直ぐに結果の出るものではないから不足しそうな食糧は高山国から持ち込んだりアユタヤから買い付けたりする。
輸出品は木綿や蝋燭・蜜蝋・麝香や蘇木等のフィリピンで産出するものもあるが南方の香料・香辛料と北方の陶磁器・生糸や絹織物などを仲介することでも利益は出る。
ルソンは中国や日本とインドシナ半島の王国の間の中継貿易地点としては絶妙な場所であるからな。
フィリピンの勇士の中からもポルトガル人やスペイン人と戦うものを集めて、船の上での戦いや島に上陸された後の撃退に協力してもらうようにしている。
「スペイン人やポルトガル人を撃退するために是非力を貸してくれ」
「わかった、お前たちに力を貸そう」
フェルディナンド・マゼランやルイ・ロペス・デ・ビリャロボスなどがやったことによってスペイン人はかなり嫌われていたので、案外協力的な部族も多かった。
そしてキリスト教カトリックとイスラム教は並び立たずお互いを異端の宗教と考えていたこともあって、イスラム教徒もスペイン人との戦いには積極的に参加するようだ。
俺自身は個人が何の宗教を信じるかは自由だが宗派が自分たちの利益のために政治に直接的に介入することや日蓮宗の不受布施派のように政治に対して反抗的な立場であればもちろん弾圧する。
イスラム教は本来は法そのものなので政治と切り離せないものではあるのだが、フィリピンやブルネイなどのイスラム教は現地の精霊信仰とも混じった独特の宗教になっていたりもするので彼らのコーランの教えに基づいた行動については規制しない代わりに、そうでないものへはそれらを強制しないことは周囲に認知させるようにした。
またそう長くない内にポルトガルの東南アジアの拠点であるマラッカやティモールへの攻撃を行ったあとは、俺は日本へ戻るつもりなので、俺の後釜としてフィリピンを統治するものも見繕わなくてはいけないな。
日本から離れているからと独立しようとされても困るので、有能であればいいというわけにも行かないのが微妙なところだが。
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