第147話 いろいろやりつつスペインとフィリピン沖での海戦の準備を整えたよ

 さて、皇室や公家、寺や神社に対しての法度を定め、おおよそ国内の統治方針を示したあとで、俺がやったのは医療や衛生に関しての改善だな。


 細々としているがまずは鉛及び水銀の白粉の使用の禁止。


「結構白粉の問題はやばいからな」


 特に皇室、武家や公家などの子供の乳母になるものは絶対禁止とした。


 室町殿は公家の本流でも有ったので、結構白粉をしているものは少なくない。


 今川義元が有名だが管領たちや伊勢の家である後北条などもみな、お歯黒白粉をしていたのだ。


 また子供をうむ産屋には手に入る時期にはネギを刻んだものを置くようにさせた。


 ねぎが持つアリシンは、かなり強い殺菌、抗菌作用を持つので病人がでたときにもこれは使える。


 風邪に葱というのも全くの迷信というわけではないんだな。


 また母体が子を生んだあとは早めに風呂に入らせて体を清めさせ、ゆっくり十分な時間を寝させるようにもする。


 産褥熱や膀胱炎、腎盂腎炎は産後不衛生だったり、寝させないという迷信から起こったことだったようだからな。


 産後2ヶ月は安静にし、可能ならば乳母を雇うことを推奨させる。


「まあ葱は邪気を払うとすればそれほど金のないものでも大丈夫だろう」


 竹炭を作るときにでる竹酢液が使える場合はそれを蒸留して使っても良いのだが、葱に比べれば手に入る人間は少ないだろう。


 だがネギなら手に入れるのは難しくないしな。


 また、肉や卵を食べないためのビタミン・ミネラルなどの不足を補うため、まずは鶏の無精卵のゆで卵の積極的な摂取を勧めた。


「無精卵ならば殺生に当たらぬからな」


 可能ならば豚肉・山羊肉・羊肉なども適度に食べるように布告する。


 それが駄目というものはタラやサメ、エイの肝臓に含まれる液体である肝油を飲むように勧めた。


 何れにせよ野菜や豆腐だけだとビタミンやミネラルが不足しやすいのでそれらを補填するのは必要だ。


 日本に眼病が多いのは薪を使うことによるすすにより目が傷つけられるのもあるだろうけど、ビタミンA不足によるものも多分多かっただろうからな。


 まあ武家は穢についてはあまり気にしないので割と普通に肉を食っているようだが。


「もともと薩摩では獣肉や卵は普通に食っておったしな」


 また、洗濯に使う灰水かそれと脂を使った石鹸の製造により食事前にはそれらで手洗いをすることも布告して習慣づけさせた。


 おにぎりや寿司など箸を使わずに手づかみで食べることもまだまだ多いから、そういった物を食べる時は必ず手を洗うようにと布告する。


 穀物を食べることではるかな昔から問題になっている虫歯対策は、公家や室町殿の関係者が行っている(いた)、お歯黒もあるが、まずは塩水によるうがいと房楊枝を使った歯磨きを励行させた。


 それと共に筆や刷毛の技術を応用して奥歯や歯の裏側も磨ける歯磨き筆も作らせ、金を持っているものからそれを使わせるようにする。


 虫歯や抜歯による敗血症は、幕末でもあったから簡単に虫歯はなくならないとは思うけどな。


「それでも多少はましになるだろ」


 また名医と呼ばれる曲直瀬道三や永田徳本らを大坂に招聘して大坂でも病院を併設して医師のもとで実習を出来る医術学校を開設して門人を取らせて、その医術を広めるようにする。


 関東の足利学校も同様に病院を併設して医師のもとで実習を出来る医術学校とし、大宰府や仙台にも同じような施設を作らせる。


 希望者には簡単な試験を行いそれに合格した場合は学校にかかる費用を肩代わりする貧しいものへの奨学金制度も取り入れよう。


 基本返済は不要だが医師にならなかった場合、途中で逃げ出した場合などは返済をする義務を課したが。


 ただし医者を名乗るには免状を必要として試験に合格しなければ医者を名乗れないようにした。


 江戸時代の医者は適当なやつも多いからな。


 医者は南方との交易を継続的に行ったり、北方の開拓を行ったりする際にも必要だから相応の禄をもって直接召し抱えている。


 そして南方はルソン遠征に本格的に取り掛かる。


 基本的には琉球や高山国にこまめに立ち寄り、シークワーサーや橙・柚子などの柑橘類の新鮮なものを食べることで壊血病や水あたりは防げる。


 だ「が、念の為豆もやしを船の中で栽培させてそれも食わせることで壊血病予防を念入りに行い、竹酢液や木酢液などを蒸留して作り出した液体を甘草や陳皮などと混ぜて山芋や米粉をつなぎとして丸薬にして”救命丹”として水あたりや食あたりをおこしたものに飲ませるようにする。


 この成分は殆ど正露丸と同じだけど、生薬だけでも有効な効能のある薬は結構作れるのだな。


「船に関しても少し改良を加えるか」


 また、西洋に比べるとかなり遅れている帆や綱の質と量の向上を図るために各地で木綿栽培を行わせるようにもした。


 ジャンク船は竜骨キールがあるものとないものが有ったが、水密甲板多数の水密隔壁を持ち耐波性に優れ、速度も同時代のキャラック船・キャラベル船・ガレオン船と比べ格段に優っていたりする。


 ジャンク船の帆は網代帆あじろほと呼ばれるもので、横方向に多数の竹の骨が入っている縦方向に蛇腹式に伸縮する布製の帆で入れられている竹によりかなり丈夫なのも確かなのだが三角帆を作るには向いていないからな。

 もっとも網代帆のジャンク帆はラテンセイルと並び最も古くからの縦帆であり、強風時にも簡単に巻き上げることができ、風上への切り上り性に優れ、風の方向に関係なく帆の形を維持できるため横風に対する安定性と操作性は同時代の西洋船舶に比較してかなり優れている。


 流石にアヘン戦争やアロー戦争の頃には逆転されているが。


 後防火とフナクイムシ対策で船には全面に銅板を貼り付けるようにする。


 銅イオンは殺菌能力に優れてるが水面下に銅板を張ると銅が酸化して緑青になるが、この緑青から亜酸化銅が海水に溶け出して、これがフナクイムシ等の海洋生物に対し毒性を持つためフナクイムシやフジツボやエボシガイなどの付着が妨げる。


 和船は船底の外に、フナクイムシにくわれてもいいような木の板を貼って、それを2年位で取り替えて船底を食われないようにしていたし、時々砂浜に持ち上げて煙で燻し乾燥させててフナクイムシなどを殺したりしていた。


 逆に中国ではジャンク船は穴が空いてきたらその外側に板を張っていったので段々鈍足化していったりしたようだが。


 ヨーロッパの船舶は松脂とタールでフナクイムシを駆除しているらしい。


 後には木タールを塗装として塗り込み、防水性を上げつつフナクイムシ対策にもしたようで黒船と呼ばれたのはそのせいらしい。


「とはいえ帆や綱などをもっと丈夫にできるならそれに越したことはないな」


 船は大きければ良いというわけではない。


 船体に受ける波や風や潮流の力は、船体の大きさに応じて大きくなるし、大型の船ほど大型で多くのマストが必要だがそうなるとマストが折れる可能性も増えるからな。


「あとは蝦夷なんかの寒冷地にはじゃがいも栽培を広めるか、とうもろこしも場所によってはうまく栽培できるといいな」


 さつまいも、じゃがい、とうもろこしなどはアメリカ大陸の有益な作物でこれらによって飢餓から救われるものも多いからな。


 じゃがいもは火山性の土地の寒冷地の奥羽の最北端や蝦夷地でも育つので美味しい調理法も含めて早めに栽培を普及させたいな。


 当分は味噌汁に入れるでもいいと思うけど。


 明や女真もできればうまくコントロールしたいが中華王朝は話を聞かないからな……。


 あと兵を出すルソンを重点的にしつつもインドシナやマレー半島付近のたくさんある王国の情報なども商人でもある諜報員に探らせて情報の入手もいっしょにやってるぜ。

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