永禄6年(1563年)
第142話 日本が統一されたあとの初正月だが平和なもんだ
さて、北風が吹き始めてまずは遠洋航海訓練の先発隊を南洋の交易でなれているものと共に、まずは高山島まで行かせているところで年が変わって永禄6年(1563年)になった。
「あとはこの平和が続くようにせねばな」
島津の筆頭家老である伊集院忠棟がうなずく。
「左様でございますな、もっとも表立って動くものはおりませぬでしょうが」
「ふむ、裏を返せば裏では動くものもないとは限らぬか」
そこへ毛利元就と宇喜多直家が言う。
「そういった者たちへの対処は我らにお任せ願えますか」
俺は二人の言葉へうなずく。
「ああ、そうするよ。
汚い部分を押し付けてすまないがこれも大事なことだ」
「ふふふ、わかっておりますとも」
織田信長の明智光秀、豊臣秀吉の石田三成、徳川家康の本多正信など本人に変わって悪名を引き受ける役はやはり必要だ。
もっとも織田信長は明智光秀に本能寺で討たれたり、秀吉の死後石田三成は武闘派の豊臣恩顧の大名との確執が深すぎて却って豊臣の家中を割ってしまったりしてるから難しいところでもあるけどな。
「それと俺の直轄地における検地と武器狩りの方は順調なようだな」
小田原攻めのあと北条から伊勢に名を変えて俺の直属の奉行として働いている伊勢氏政に俺は言う。
「はい、今のところは順調に進んでおります」
北条はそういったことを相模や武蔵である程度行っていたようであるから、俺の政治権力を背景として実行するのはそれほど難しいことでもなかったようだ。
実のところ、平安時代末期の保元元年(1156年)に起きた保元の乱以降は、大なり小なりどこかで争いが起きており完全な平和というのはなかった。
実際その前から関東や九州・瀬戸内での反乱そのものはあったけどな。
それを考えれば関ヶ原以降は大阪の陣と天草の乱はあったが、それ以外に大きな争いは幕末までなかった江戸時代というのは実に平和な時代だったのだな。
「では、宮中へ参内して来るのであとは頼むぞ」
「はっ!」
今上帝の四方拝から始まる元日の宮廷行事は群臣に宴を賜う(実際の費用は俺が出すが)
さらに、翌日にはとんぼ返りで大坂に戻り新年の挨拶を諸大名から受け、5日にはまた京に戻って五位以上の位階を群臣に授ける儀式である叙位に参加し(おれは関白太政大臣なのでとうぜん参加しないといけないし、金が足りない公家には金を渡したりもする)を行う。
7日には三節の一つである宮中にひかせて来た白馬を今上陛下が御覧になり、後に宴を賜る、
ああ、室町殿の守護に関してはすでに消滅してるので国司が復活しているのだ。
もっとも大名などのもつ行政権や徴税権はそのままなので実際の国司の持つ影響力は鷹司などの直轄の地域だけだから国によってその権力はでかかったり小さかったりするけどな。
その後は十五日に男踏歌・十六日には女踏歌の
元旦節会・白馬節会・踏歌節会をあわせ三節というがこれをちゃんと復活させるのは朝廷の悲願だったようだ。
もっとも公家が自分たちが贅沢したいがためにそう言ってるんだったら俺は別にこういった行事を復活させるつもりもなかったんだが。
しかしながら三節は日本の平和を願うために必要な儀式であると歴代の天皇陛下はお考えであったようであるし、世が乱れたからこそこういった行事を行えなくなってしまったと考えるのであれば、平和の象徴として復活させてもよいかとも思うのだ。
そろそろ正月の宮廷行事やそちらの政治と武家の正月評定など幕府の仕事の全部に参加するのは大変だし、なんとかしたいものだが室町殿は良く普通にそれらをやっていたと感心するよ。
まあだからこそ実際の幕政は管領などに任せるしかなかったのであろうという気もするし、京の都に住んでいたからこそできたことでもあろう。
もっとも、宮廷行事や朝廷の政治もちゃんとやれていたのは三代目の義満や五代目の義教せいぜいその孫の八代目の義政までという気もするけどな。
そして応仁の乱が起きると朝廷も幕府も困窮してそれどころではなくなってしまったわけだ。
史実では馬揃えのお爆竹をやったとは言え、元来室町殿の役目であると考えていたようであるうえに軍事費用の高騰などにこまっていたらしい信長はそこまで宮廷行事の復活はできなかったようだ。
だが豊臣秀吉が後陽成天皇を聚楽第に招いて5日間におよぶ盛大な響宴を催したりしてるので彼は自分の地位を固めるためにも宮廷行事の復活を精力的に執り行っていたようだ。
もっとも元々身分が高い家の生まれではなかったことで彼はそういった古い権威を最大限に用いなければ日本の統治というものもできなかったのだろうけど。
その点では早めに新田庶流の
まあ、それはともかく公家があんまりつけあがるのも見過ごせんし皇室などに対しては”
まあ、ある程度は薩摩法度でやっていいこと駄目なことは定まってもいるんだが。
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