第141話 大名の海外との交易を禁止させつつフィリピンに遠征する前に外洋航海の技術を叩き込まないとな。

 さて、大坂等への正妻や嫡男の居住をそれとなく進めさせながら俺は、特に西日本の大名に対して、海外交易に関しては俺の朱印状を必要として勝手に交易を行うことを禁止させた。


 そして実質的には大名には許可を与えず商人のみに許可を与え、交易の利益の一部を献上させるようにした。


 そして同時にフィリピンへの遠征の準備も行っていた。


 流石にフィリピンまで行き、海戦を行うとなると対馬を挟んで九州の目と鼻の先にある朝鮮半島へ兵を出すのとは根本的に違うからな。


「うーむ、千人単位で兵をルソンまで運ぶのはやっぱかなり大変だよな」


 もっとも応永14年(1407年)に、明の鄭和がインドまで行って戻ってきた第1次航海では船団規模が62隻、乗組員は総勢27800名といわれている。


 150年ほど前とは言え明の造船技術というのはかなり高かったのだな。


 ちなみに鄭和が艦隊を率いることになったのも、彼が元々イスラム教徒であり、インドや中東での外交交渉でもその経歴や信教が役立つうえに鄭和自身が軍事的・政治的な才能が優れていたとされる。


 ついでに言えば宦官である彼は性欲処理を必要としないので、そういった目的の略奪など率先して行うこともないですむだろうというという物もあったようであった。


 鄭和の乗り込んだ旗艦は全長140mに達するものだったと言われ、これは西洋のキャラベル船の7倍、コロンブスの旗艦のサンタ・マリア号の6倍、キャラックやガレオン・戦列艦の70門艦のおよそ3倍、120門艦の2倍の大きさでもあった。


 当時もマラッカ海峡は華僑やイスラムの海賊が頻繁に出現する危険海域であったが、鄭和はこれらを難なく討伐していった。


 そりゃ海賊が少数で切込みをかけても人数差で負けるし大勢の兵員がいれば拠点も制圧されるよ。


 3万近い兵士を乗せて何度も何度もインド、最終的にはアフリカまで行ったっていうんだからすごいよな。


 とはいえこれは明という国が総力を上げて金をつぎ込んでやったことで人口が5千万人以上6千万人未満の明と1400万人程度の日本では国力も違いすぎるので、同じことは当然できない。


 でかい船を作るとなるとそれだけで費用がバカ高くなるしな。


 と言うかミゲル・ロペス・デ・レガスピも5隻からなる艦隊と500名の武装した兵士という3桁でしか兵員は船団には乗っていないのだから、別に万単位の武士を送り込む必要はないか。


「でも千人くらいは連れていきたいな」


 もちろんメキシコからくる奴らと日本からいく俺たちではオレたちのほうがまだぜんぜん楽だ。


 琉球を経由して高山国からはフィリピンまではそうは遠くない。


 豊臣秀吉は日本を統一した後、日本人の海外交易を統制しするためにも、1592年に初めて朱印状を発行してマニラ、アユタヤ、パタニになどに派遣したとされる。


 さらに関ヶ原の戦いで全国統一した徳川家康は豊臣秀吉の政策を受け継ぎ、1600年豊後の海岸に漂着したオランダ船の航海士ウィリアム・アダムスやヤン・ヨーステンらにガレオン船を建造させた。


 そして1601年以降は東南アジア諸国に使者を派遣して外交関係を樹立しているし俺も同じように送っておこう。

 まずは安南(ベトナム北部の黎朝)、交趾(ベトナム中部の広南国)占城(ベトナム南部のチャンパ王国)、暹羅(タイのアユタヤ王朝)柬埔寨(カンボジア王国)、太泥(マレー半島のパタニ王国である)、呂宋フィリピンのルソン、それにマラッカ王国などに使者を送り、以降も交易を続けポルトガルやスペインと戦うためにも食料や水、後は上陸施設などの使用を予め許可してもらうようにしておこう。


「南蛮諸国と正式に縁をつないで、スペインやポルトガルと共同して戦えるようにしておくのも重要だしな」


 毛利元就はうなずく。


「ふむ、なるほど、たしかにそうでございますな」


 比較的大型で水や食糧・さらには兵員も多めの200人が余裕で乗れる全長50メートルクラスの外洋航海可能なジャンク船を建造させ、まずは大坂から坊津まで試験的に航海をさせる。


 この建造にかかる期間は船大工や鍛冶屋、竹細工師などを約4500人を動員しておよそ2ヶ月ほど。


 早いと見るか遅いと見るかは人によるだろう。


 潮の流れの関係や季節風もあって南に向かうのはけっこう難しい。


 なので季節風が北風になる冬に使者は送り出した。


「さて、無事に使者が到着して話がつくといいけどな」


 フィリピンなどはいままでにも何度かスペインの攻撃を受けているし、マラッカ王国などはポルトガルの攻撃の被害者でもあるのでわかってくれるとは思うけどな。

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