第126話 加賀などでだいぶ殺しすぎたし移住をすすめて生産力の回復を進めるか、それと揚北衆などの調略も勧めよう
さて、越前・加賀・能登・越中・飛騨は事実上鷹司が制圧出来た。
越前一国に関しては朝倉の支配をそのまま継続させてるし、能登の畠山なども半国は安堵しているが彼らは鷹司に従ってるので問題はなかろう。
問題は今年の農繁期に一向一揆に従う百姓を殺しすぎたせいで、耕作放棄されている農地がたくさんあることだ。
なにせ加賀の人口を半減させるくらい殺したからな。
「土地が貧しかったり問題があったりする場所から地侍や百姓の移住をすすめさせるか」
伊集院忠倉がうなずく。
「それもよいかと思います」
まずは甲斐の地方病 、日本住血吸虫症の被害のでかい甲府盆地の底部一帯の釜無川や笛吹川近辺の百姓で北陸への移住を望むものは今年来年の食料は支給することを明言した上で加賀や越中の耕作放棄された地域へと移住させた。
また、先祖代々の土地を捨てられぬという者たちには同じように食料を支給しつつ、年中水が溜まっている深田や湿地は埋め立てさせて、甲州ぶどうなどの果樹や麦や蕎麦、雑穀などの畑作の作物に切り替えさせ、山に近い棚田などは桑畑に変えて養蚕を奨励し、可能な限り湿地を減らしてゆくように指示した。
「最悪直ぐに結果が出なくとも良いが少しずつでも対策はせねばな」
養蚕を行ない生糸や絹織物をつくらせることも無駄にはなるまい。
ささっと日本住血吸虫を根絶できればいいのだが現状では地道に対策していくしか無い。
特に被害が大きい釜無川周辺の農民はほとんど移住を希望したが、荒川より東の笛吹川近辺の農民は西ほどは被害がないのもあり結構残るものもいるようだ。
加賀や越中はかなり豊かな土地でもあるし貧しい甲斐に貼り付けさせるよりずっといいだろう。
無論先祖から受け継いだ土地や墓などを捨てなければならないというのは、心情的に受け入れがたいではあろうが、命には変えられないと移住を希望する人間が多い場所が結構広いというのは困ったものだ。
甲斐から加賀・越中に移住させても土地は余裕で余っているし、越中は上杉との最前線にも当たる。
武田の家臣には未だに上杉に強い敵意を持っているものもいるし、そういったものの槍働きにも期待したいものだ。
またこの際なので移住した者たちの水田は正条植えを出来るように今年中に整備させることにした。
こういった機会でもないと権利とかでもめてなかなか進まないからな。
それと同時に上杉政虎との対決に備えて彼に反抗的な越後などの勢力を調略・懐柔することにする。
まずは長尾景虎の出家騒動が原因で離反・出奔した
彼は上杉の財政担当でもあったため、かなり上杉の内部事情には詳しいし、越中・越後の地理も詳しい。
「長尾改上杉の家中に詳しいそなたの働き期待させてもらうぞ」
「はは、この命に変えましても」
また上杉に反抗的な越後の代表的な勢力が
この地域には平安末期から鎌倉時代に武蔵の秩父氏、相模の三浦氏、近江の佐々木氏、伊豆の大見氏らが荘園の地頭として越後に入国して其後も荘園を統治していたが、室町幕府が出来てから上杉や長尾が入ってきた時にも揚北衆はそれ以前の鎌倉時代からこの地を治めてきたという意識が強く守護の上杉氏や守護代の長尾氏とは仲が良くなくしばしば対立して争いも起こっていた。
天文年間の伊達氏の内紛である天文の乱の際に越後守護上杉定実を支持する中条藤資と越後守護代長尾晴景についた他の揚北衆が争うことにより独立性は衰退し、長尾景虎が越後を統一すると揚北衆は彼の家臣として組み込まれていったものの様々な要因で反乱をおこしたりしている。
また佐渡の本間貞兼も上杉に従っているわけでなく独立を保っている。
「佐渡の本間貞兼に挨拶に来るよう書状を届けよ。
挨拶に来ぬのであれば来ぬのであらば討伐するとも伝えよ」
「は、かしこまりました」
この時点ではまだ佐渡の金山は発見されていないが山を隔てた鶴子銀山はすでに見つかっている。
佐渡の金山は莫大な量の金銀が埋蔵されていて徳川幕府の経営にも重要な鉱山だった。
ここを直轄地にしない手はない。
無論これは上杉政虎に対しての水軍は越後へはすぐ動かないという油断をさせるための情報でもある。
また南常陸の
佐竹に従属している
上杉政虎の同族で上野東部を支配している白井長尾氏と総社長尾氏や宇都宮広綱、小山秀綱、佐野昌綱、那須資胤などの下野の勢力の調略は難しいだろうけど。
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