第123話 越前・加賀の住人の恨みをそらすために葬式をあげ復興を手伝うとしよう、そして能登の畠山と西越中の神保が頭を下げてきたか
さて、越前と加賀の一向一揆に参加した男女を俺はまとめて根切りにした。
何もそこまでという者もいようが越前や加賀は長島のように土地として利用しにくく水害をたびたび受けるとても貧しい土地というわけではない。
それ故に高山国などへの移住などをすすめて彼等を弱体化するのは難しく、同じ理由で調略も難しく、しかも100年近く周辺諸国の大名と戦って自治を維持してきたことも有って、一般民衆が武器をとって抵抗することに自信をつけてしまったから、反抗するものは根切り以外に方法がないのであった。
そもそも越前などで指導者が逃げ出しても抵抗を続けようとしていたりする時点でな……。
これは史実における長島の一向一揆も同様だったんだが、あっちはまだ貧しく水害の被害がたびたび起こる土地であったゆえ現世に絶望していたとしてもおかしくはないが。
とはいえこれから暖かくなる時期に10万の遺体を放置しておけば、ハエによる疫病のもとにもあるであろうし、今後の統治にも大きな支障が出るだろう。
史実における豊臣秀吉は播磨の別所や宇野ら赤松の一族とともに浄土真宗の門徒もくわわって大規模な戦いになった結果、兵糧攻めを行って三木城では多数の犠牲を出したにもかかわらずその後犠牲者の供養や三木城下町の再興などを行ったことで現地の住民にそれほど恨まれず播磨を上手く統治したしそれに習おうか。
「生草坊主共にのせられ、槍を取って戦った結果が野ざらしでは極楽に行けるはずもなかろうて。
兵や近隣の民で穴掘りと埋葬を行うものには特別に日銭と食を与え、泣き女を雇って泣かせ、この度の戦の死者の埋葬を行ないつつ天台と真宗高田派の僧に弔いを行わせよ。
もとはと言えば民を戦わせつつ自分たちは逃げ出した本願寺の売僧どものせいであろうがな」
俺は銭や米を惜しまず放出させ可能な限りの遺体の埋葬を行わせた。
流石に山奥で死んだものは獣の餌になっているだろうがそこまでは手はまわらない。
もっとも戦場荒らしによって剣や槍のような武具や鎧などを剥ぎ取られていた死体も多かったようだし、更には時宗の僧なども自主的に死者を埋葬しては念仏を唱え弔っていたようだ。
「宗教が金を集め武装してやりたい放題ができる時代は終わったのだ。
まともな坊主に導かれて、そもそも現世に絶望などしなくても良い大衆が増えてくれればいいんだが。
ついでに槍や刀は鋤鍬に変えるとしようか」
加賀でも刀狩りを行って明らかに余剰な武器を取り上げ、それを鋤鍬などの農具や建築用の釘へと変えて加賀の復興を少々ながらすすめていく。
そんなことをしている間にまずは能登の畠山義綱が加賀にやって来た。
「お初にお目にかかります。
畠山修理大夫でございます。
鷹司執柄相国殿へのお目通りが誠に遅くなり申し訳ございませぬ」
俺はその挨拶に鷹揚にうなずいた。
彼は大名の実権を奪おうとした家臣である畠山七人衆が加賀一向一揆と組んでおこした反乱の弘治の内乱をようやく鎮圧した後だ。
「うむ、加賀と能登の一向一揆と手を結んで反乱を起こしておったものが居たようであれば致し方ありませぬな。
それで一揆に加わったものは根切りとしたのでしょうか?」
彼は頭を下げながら言った。
「残念ながらそこまで出来る程の余力はございませんでして」
「ふむ、なれど加賀一向一揆と組んだ長福寺の教円の首くらいは取るべきですかな」
「それが必要とあらば行ないます、がむしろ命を安堵しそのかわり武器を取り上げ百姓本来の務めから外れることのないように勧めようかと」
「ふむ、であればそのようにやってみるがよかろう。
その手際をみて今後の領地安堵をするのかせぬのかを決めますぞ」
「か、かしこまりてございます。
それではこれにて失礼いたします」
彼の所領安堵をするにせよ改易などを行うにせよ統治の手腕を見ておくべきか。
現状では能登でもあまり畠山の威光が通じるようにも見えぬが。
その後越中の神保長職が加賀にやって来た。
こちらは越中の一向一揆と組んでいたはずだが、加賀の一向一揆があっという間に殲滅されて手を切ったか?。
「神保長職が俺への目通りを願っているらしいな」
伊集院忠倉がうなずく。
「はい、いかが致しましょうか?」
「加賀があっさり落ちて慌てふためいてきたのだろう、まあいい会うとしよう」
そして俺は神保長職と会うことにした。
神保は越中守護代で本姓惟宗氏なので対馬の宗と先祖は同じで、秦氏系列であることから島津とも縁戚ではある。
「はじめまして。
神保右衛門尉でございます。
鷹司執柄相国殿へのお目通りが誠に遅くなり申し訳ございませぬ」
「ふむ、越中の一向一揆の柱である勝興寺と瑞泉寺に見切りをつけたというとこかな?
そしてそのかわり長尾、いや今は上杉と戦うため力を俺に求めているのであるか?」
「まことに恐れながらそのとおりでございます」
「ふむ、まあ、わからないでもない。
ならば勝興寺と瑞泉寺の一向一揆の衆徒の殲滅、もしくは武装解除をやってもらおうか?」
「そ、それは……」
「彼等を裏切ったものに従うはずがないと?
だがそちらの所領安堵をするのであれば一向一揆をそのままにしておくわけにはいかないであろう。
加賀と越中の一向一揆は必ずしも仲が良くなかったようではあるにせよな」
「……かしこまりました。
両寺への対応をしている間に椎名康胤に攻められた場合は……」
「その場合必要であれば俺が兵を出す」
「か、かしこまりました、それでは失礼いたします」
畠山義綱も神保長職も加賀の一向一揆を俺が殲滅したから能登や越中もやってくれると考えていたなら甘いんだよな。
もっとも神保勢はもともと一向一揆とは敵対していたが、大敗を喫している故に手を結ばざるを得なかったのではあろうが。
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