第88話 明の許可を取って朝鮮半島は傀儡政権の新百済、新高句麗、新耽羅を起こし分断統治させようか。
さて、中国地方の雄である尼子が島津に降伏し出雲は尼子国久達の新宮党に、伯耆は尼子晴久の嫡男である尼子義久にそれぞれ所領安堵しているが、出雲や伯耆の港町や一部山奥の地域は島津の直轄地とした。
「結局商業とは輸送だからな。
輸送路を押さえるものは勝者となる。
だからこそ港は我々が押さえるぞ。
逆に関所について不要なものは廃止させろ」
島津の内政担当奉行の樺山善久が頷く。
「かしこまりました。
それがよろしいかと私も思います」
そしてこの時代にほぼ完成したたたら製鉄による日本の鋼の生産は出雲の
倭寇が中国や朝鮮沿岸を襲い物品を奪う際に略奪物資として好んだものとして鉄鍋があり、日本では大きな中華鍋であれば一貫文、小鍋でもそれなりに値段で買い取りされていたくらいだ。
もちろんこれら鉄鍋は日本では調理道具として使われるわけではなく、溶かして鉄の原材料として用いるのが主な目的だ。
その他にも鉄のインゴットはアユタヤや中国福建などからの密輸でも補っていたりもする。
日本は金銀銅は豊富なのだが鉄が少ない珍しい地域であるのだが、刀剣や鉄砲だけでなく陣地構築に使う釘も鉄を使うから戦略物資としてとても大事なものなのだ。
「玉鋼は重要な資源だからな、たたら製鉄を行ってる場所は我々の直轄とするぞ」
島津の執事である伊集院忠朗、島津の内政担当奉行の樺山善久が頷く。
「はい、それがよろしいかと」
「鉄は重要でございますからな」
尼子が繁栄した理由の一つは出雲や伯耆の鉄を一人占めできていたからというのがあるからな。
尼子の当主は引退させ息子にあとを引き継がせ所領安堵させたとは言え、大友や陶のときのように当主の人望に問題があって重臣の心が離れてる方が多いという状況ではないから、所領を安堵しても旧尼子領の治安回復にはしばらく時間がかかるだろう。
石見や備中・備前なんかはまだ尼子の影響がそこまで強いわけでもないが、出雲・伯耆・美作などは特に強く残ってるからな。
もしも尼子残党が島津に対して反旗を翻すなんてことがあると面倒だ。
もっとももともと尼子は佐々木氏であるとは言え、京極の下の国人にすぎないので島津に従うというのは家格的な心理的抵抗は少ないと思うが。
それに北九州の大内に属していた長門や豊前、筑前の国人や大友に属していた豊後や筑後などの国人も連戦で疲れているはずだし、しばらくは休養を取らせよう。
対馬の守備につく者は休んでる余裕はないがな。
そして尼子を島津の傘下に加えたことで現状島津と境界を直接接している因幡に影響力を持つ
かつては全国66か国のうち11か国を山名が守護に襲名して領国となり「六分一殿」と呼ばれ、応仁の乱では山名宗全が西軍の総大将を務めたこともあるが、その後急激に没落して現在では但馬と因幡を何とか維持している状態だ。
だが彼等の領有している但馬の生野銀山はとても魅力的ではあるし、山名は落ちぶれていても名族であるのは確かだ。
畠山に義弘を、一条に歳久を養子にしたように山名に家久を養子として入れても良いかもしれぬな。
将来的に東国の鎌倉か江戸に送り込むときにもその名は役に立つかもしれぬ。
さて、一方の紀伊半島だが大和の本善寺は長いこと高野山の金剛峯寺と小競り合いを続けていたこともあり本善寺は破却し、本願寺教団の信徒は大和からの完全な退去をすることになった。
多くは摂津の石山御坊に向かったようだが一部は河内本善寺や伊勢長島願証寺に向かうものもいたようだ。
雑賀の
これにより大和や紀伊の本願寺系寺院は支柱を失っていくのだが、その分石山などの信徒は増えてしまったな。
痛し痒しとも言えるが仕方あるまい。
とは言え大和や紀伊の仏教宗派による争いはこれで大きく減じるだろう。
北畠との争いはちょこちょこ小競り合いをしながら紀伊の支城は落城しつつある。
李氏朝鮮にたいしては明の許可を得た上で南西部の全羅道を新百済、北部の平安道や咸鏡道は新高句麗、済州島は新耽羅として独立させ親日の傀儡当主をそれぞれ擁立させつつ民衆のヘイトは日本ではなくそれぞれの傀儡の君主に集まるようにさせ、新百済とは木綿を、新高句麗とは金や鉄、石炭を、新耽羅とは蜜柑などの交易を行わせ、日本が富を収奪しているとか言われない状態にしてそれぞれの地域で差別を受けていたものたちを政府の要職に引き上げて分断統治をさせることにする。
もともと高麗や李氏朝鮮は新羅系が幅を利かせていて百済系や高句麗系は差別され、特に百済系に対する差別はかなり酷いらしいから、報復行為を行って朝鮮半島の中でお互いに争ってくれるだろう。
さらに仏教や朝鮮の土着の信仰の巫女的シャーマンは奴隷階級とされてるから新百済では彼等を一般階級としてやろう。
李氏朝鮮は労働者を見下しながら重農政策をそのまま続けていけばいいんじゃないか?
労働者を馬鹿にしてるとそのうち国が崩壊するかもしれないがね。
「俺は対馬や壱岐を室町の公方のように見捨てるつもりはない。
半島からのちょっかいは出せないように上手くやるさ」
宗義調と波多隆は俺に平伏している。
「東国や畿内の公方には我々の苦しみはわからなかったのでしょう。
その点島津殿はよくわかっておられる」
「まあ、薩摩は貧しかったから琉球や南方との交易が頼りだったしお前さんたちの立場もわかるんでな」
この間に俺たちは朝鮮へ兵を出す準備をする。
人だけでなく食料弾薬に関しての輸送も万全にしなければならないし”あくまき”のような携帯しやすい保存食の作り方も広めておかなきゃなんないだろう。
もう一度李氏朝鮮が対馬に攻めてきたのを追い払って、民衆に負けが混んでることをわからせたあとでの逆撃の予定だが、予定は未定だ。
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