第68話 朝廷や琉球に宣教師共の手紙を送ってキリスト教の禁教を奏上しつつ明との外交の許可を貰おう

 さて、先ずは筑前や豊後などの島津の直轄地で刀を買い上げてそれを鍛冶屋に打たせ、刃金を農具に変えることで農耕や土木の効率を上げる方法は九州の各地で少しずつ広まっていくだろう。


 それとともに俺は宣教師や王直がやろうとしていたことを朝廷や三好長慶に報告し日本におけるキリスト教の禁教を命じてもらうとともに日本の代表として明に正式な使節の代表として認定をしてもらおうとしていた、と言っても今回も俺が畿内に直接向かうわけではない。


 畿内には臼杵鑑速に行ってもらうのだ。


 外交を任せられる人間が居るというのは助かるな。


「では、よろしく頼みますぞ」


「は、おまかせください」


 何しろ今までれっきとした倭寇として島津も混ざっておったからな、琉球に仲介を頼むとしても体面や体裁をキチンと整えなければ明には門前払いされる可能性が高い。


 明の官憲よりはポルトガル人たちの商船を優先的に狙ったとは言え場合によっては明の船も狙ったのは事実なのである。


 また遣明使として明に派遣された使節は基本室町幕府名義のもので、もともとは足利義満が「日本国王臣源義満」名義で明との通交を試みたのだが、明は冊封体制下においては、最初は南朝の懐良親王を「日本国王良懐」として認めていたため、受け入れられなかった。


 日本の王とはすなわち天皇でありその臣下である義満は王と認められなかったのだが、南北統一が果たされ義満が出家して、天皇の臣下から外れたという名目をつくって形式上の明の臣下となった。


 そういう点では対馬の宗氏と同じく足利義満は売国奴であるとも言えるのだが、対馬と違い別に日本は明の属州になったわけではない。


 ちなみにこのときは足利義満直属の幕府所有船しか往来していないが、その船に堺や博多などの商人が乗り込んで幕府に輸入品の1割相当の金額を納付することでの公的な船に乗り込んでの私貿易が許可されていた。


 とはいえこれは公家からも武家からも問題視されて、義満の死後すぐに将軍義持によって貿易は停止されたのだが。


 その後だがやはり貿易による膨大な利益は捨てられず、おおよそ20年後の永享5年(1433年)に足利義教によって貿易は再開されるのだがこの頃には幕府の権威も落ちていることも有って幕府所有船よりも相国寺船・大乗院船・三十三間堂船などの寺院の所持している船や山名船・九州探題船・大友船・大内船などの守護大名の所有船が増えて、さらに応仁2年(1468年)の応仁の乱以降の船は細川氏・大内氏とその支配する商業自治都市である博多や堺の有力商人に任せ、幕府は勘合符の承認と引き換えに抽分銭を徴収するだけとなって行き、寺社船も派遣されなくなっていった。


 さらに寧波の乱以降、日明貿易の主体は大内氏に移っていたが、最後まで形式上は室町幕府の正式な使節であったわけだ。


「と言ってももう室町幕府の命運は風前の灯なんだよな」


 足利も細川も京都から追われて三好が実権を握っているが、彼の名前を出しても当然明からは日本国国王とは認められないだろう。


 明と日本の国交が回復できなかったのは日本が倭寇の本拠地だと思われていたこともあるが、明から見て明確に日本国国王と言える立場の人間がいなかったというのもあるのではないかと思う。


 ただし文明16年(1484年) に朝廷からの船もでているから、今後は朝廷を日本国国王に戻して国交回復を図ったほうが良いと思うのだ。


 三好長慶に対しては日明貿易が復活した場合、島津でそれを独占する気はなく、三好とともに行うつもりであることを伝える。


 大内と細川が勘合を巡って争いを起こして結局貿易を行えなくなってしまったことを繰り返したくはないからな。


 それとともに最後の遣明使船の正使であった策彦周良さくげんしゅうりょうにも来てもらおうと思ってる。


 現状では京に戻ってしまっているはずだが公家にも掛け合って探せばなんとかなると思う。


 一方琉球王国には島津の執事である伊集院忠朗いじゅういんただあきの息子である伊集院忠蒼いじゅういんただあおを先ずは使節として送る。


 こちらにも漢文に意訳した手紙の写しを渡しておく。


「琉球も栗毛人ポルトガルじん共がマラッカで何をしたかを知っておるから拒否はされぬと思うがよろしく頼むと伝えてくれ」


「はい、かしこまりました」


 やれやれ、日本の朝廷や三好、琉球などあちこちに掛け合っても


 やっと話が通るかどうかというのは面倒なことだ。


 元来外交というのは面倒なことなのであるが琉球とは直接やり取りがあったりするのに、明から見れば天皇の臣下の将軍の臣下の守護でしかないわけであるから仕方ないけどな。


 李氏朝鮮? この話にかかわらせれば話が面倒になるから無視だ無視。


 何となく三好長慶の苦労もわかる気がするぜ。

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