第61話 さて北九州を制圧したら二条晴良とともに貧乏公家や親王殿下が大宰府にやってきたよ

 さて、大友義鎮やポルトガル人宣教師、ポルトガル商人などは磔の後に処刑人(ロンギヌス)の槍によって処刑して3日遺体を晒したが当然彼等は復活しなかったので、未だ病原菌を持っている可能性も高いからすべて火葬にした。


 キリスト教では最後の審判の時に死者は復活する事になっているが、この際欠損のないもとの体が必要と考えられているため、火葬は禁じられていたりするがな。


 仏教やヒンズー教では火葬されたほうが成仏しやすいとされるが、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教・儒教などでは肉体の欠損は禁じられた行為なのは興味深いな。


 それから、貧しい庶民で洗礼を受けたキリシタンも殆どは棄教して仏教徒などに戻った。


 もちろん彼等の食事や病などの面倒は観させている。


 これによって豊後におけるキリスト教の侵食は最低限におさえられたのではないかと思う。


 万寿寺、住吉大明神、英彦山神宮などの復興に俺は金と人を出し、祟りや仏罰を恐れる者たちが安心できるようにした。


 各地にある鉱山や炭鉱などにも食うに困っている者を集めて住宅や食事をちゃんと保証した上で派遣し採掘を開始させている。


 北九州には豊富で割りと高品質な石炭が採掘できる炭鉱があるのは助かる。


 石炭を蒸焼きしてコークスにすれば様々な燃料として役に立つからな。


「豊後の場合は大友の重臣などに改宗したものがほとんどいなかったのは助かったぜ」


 朽網鑑康などはキリスト教に改宗したかったらしいが一族や家臣の反対を押し切ってまで改宗することはできなかったらしい。


 とは言え朽網鑑康は自刃してその息子の朽網鎮則は島津預かりとしているが。


 そして宣教師や奴隷商人の残した日記や本国とのやり取りなどの日記などの書類や手紙は押収した後、現状では聖書を読めるようになった元はキリシタンであったものにそれらは翻訳させている。


 修道院と大聖堂・学校・病院・孤児院などは一度焼き払った後に地鎮祭を行って祟りを納めさせ、その場所に新たに真言系寺院と併設して施薬院、療病院、悲田院などを作り直させることにした。


 そして宣教師に手紙の中にはこんなことが書かれたものが有った。


 ”神父が日本へ渡航する時には、インド総督が日本国王への親善とともに献呈できるような相当の額の金貨と贈り物を携えてきて下さい。

 もしも日本国王がわたしたちの信仰に帰依することになれぱ、ポルトガル国王にとっても、日本には銀や金が沢山ありますので、大きな物質的利益をもたらすであろうと 神かけて信じているからです。

 しかしながら私がインドで経験したところでは利益に関係なく、神の愛を伝えるために神父たちを渡航させる船を出す商人は、誰もいないと信じています”


 つまり、日本の国王をキリスト教に改宗させられれば利益が大きいが、商人に船を出させるには明確な利益が必要であると言ってるわけだ。


 もともと宣教師はローマ教皇を通じた教会の利益を、商人は特産品の売買での利益を上げることを優先してるわけで経済的、宗教的侵略が目的であることは明白だな。


 ただし、本来は山口や京都でも布教を行う宣教師たちだが彼等にとって非常に困ったことに日本には天皇と将軍という権威の頂点に位置する人物がいても彼等に実質的権力はなかった。


 このころ日本の副王と呼ばれた三好長慶にもフロイスらは働きかけて京都での布教を許可され河内にはキリシタンが結構いたのだが、三好長慶は周囲は敵ばかりだったし天皇はキリスト教を良くは思わなかったが、将軍義輝は武器の供給目当てに布教を許可するなど畿内状況はぐちゃぐちゃでトップをキリスト教に改宗させれば宗教的侵略が完成するという状況ではなかった。


 その後に堺に来た織田信長が実質的に日本の最高権力者になれば彼等には非常に都合が良かったから彼等は信長をかなり支援したらしい。


 しかし現状では日本の宣教師の拠点は平戸だけになっている。


 平戸のある肥前は少弐資元(しょうにすけもと)が最後の守護になって彼が天文5年(1536年)に自害して以降は空位となっている。


 本来なら天文23年(1554)に大友義鎮が肥前守護職に永禄2年(1559)には豊前、筑前守護にも任命されるんだけどな。


「とりあえず豊前・豊後・筑前・筑後にも法度を布告せねばな」


 こちらの法度は豊前・豊後・筑前・筑後の地においての平時にて適用されるものとして、政治の中心は太宰府、商業の中心は博多となる。


 その他の内容はほぼ同じだが今度の問注所や侍所の役人はどうすべきか。


 法度を交付して今後のことを考えていたら京の都より若い貧乏公家……ざっとみても200人位はいそうだが、それを沢山ひき連れた二条晴良がやってきた、一緒にいるのは誰だろうか?。


「お久しぶりでございます。

 ところでそちらの方は?」


「うむ、まずは紹介しよう。

 この御方は方仁親王殿下(みちひとしんのうでんか)である。

 まずは殿下がこの度大宰帥(だざいのそち)の位に就かれたので、そのお広めであるゆえ宴席を設けるようにせよ。

 もっともすぐに京へお戻りになられるがな。

 そしてそなたには従三位、右近衛大将、大宰大弐並び豊前・豊後・筑前・筑後・肥前・壱岐・対馬の守の位を授けるゆえそれに対しての寄進並びに実務に励むようにとの今上陛下よりお言葉を賜っておる。

 また大宰府などでの政務に使えるはずの者たちを京より引き連れてきたので上手くつかってくれたまえ」


 親王殿下が俺に言う。


「うむ、そなた、よきようにはからえ」


 俺は一瞬あっけにとられたが平伏して答えた。


「は、はあ、かしこまりました。

 では早速宴席を設けさせていただきましょう」


 二条晴良がさらに言う。


「それから逆賊である陶を速やかに討伐せよ」


「現在討伐準備は行っております。

 少々お待ちくださいませ」


「うむ、頼んだぞ」


「はっ」


 大寧寺の変で父親である二条尹房と弟である二条良豊を殺されて二条晴良はとても怒っているらしい。


 山口にて大寧寺の変が起こった際は大内氏の庇護下にあった公家も二条の他に子供であるおさいが大内義隆の側室であった大宮伊治(おおみやこれはる)や三条公頼(さんじょうきんより)、持明院基規(じみょういんもとのり)など多数が虐殺された。


 もっとも公家たちは山口館に居座って贅沢三昧をしていたために大内家の財政は圧迫され、陶隆房らの神経を逆撫でし続けていたようだからどっちもどっちだが。


 それと方仁親王殿下というと後の正親町天皇となる方かな?。


 俺は彼等を伴ってあちこちぼろぼろになっていたので現在建物を大規模に立て直し中の太宰府へと向かい、そこで宴を催すことにした。


「うむ、西国は豊かで羨ましいものだ」


「まったくもってそうであるな」


 二条晴良と方仁親王殿下には祝ということで鯛の尾頭付き、鮑の吸い物、白飯なども出したが別に普段から食ってるわけじゃないぞ。


 他の貧乏公家たちにも鮑などは出しているし、彼等彼女らは表面上は澄ましているが嬉しそうに食べてるな。


 もっとも大内義隆は大陸から金属の精製や生糸や絹織物関連の技術を持ち込むことに熱心で、明では本来は門外不出の技術である硫化銅精錬法や灰吹法などを博多商人と共に賄賂を駆使して手に入れているし絹織物の技術を博多に持ちかえらせることで日本の絹織物の品質を飛躍的に向上させたりもしている。


 もっとも大寧寺の変の後に豊前・筑前が陶家の支配をほぼ拒否したのは陶晴賢にとって痛手だったろう。


 俺はそういった技術を持つ博多の職人が手に入ってラッキーだけどな。


 それから大宰府の役人や北九州担当の問注所・侍所など今後の行政を行っていくために必要な人員は多数だからありがたいんだが、それでも職にあぶれたものを押し付けられてるように思えるのは気のせいだろうか。


 それはともかく右近衛大将は今年にその地位を授けられた久我晴通(こがはれみち)が任官したがすぐさま突然出家して朝廷を去ったために空位になっていたのだな。


 どうせなら金を出せそうな俺に高く売りつけようってことなのか?


 ちなみに現在の左近衛大将は西園寺公朝のはずだ。


 ともかく俺は従三位右近衛大将・大宰大弐・征西大将軍という武士ではかなりの高位となったのだが実は伊東義祐も従三位についていたりする。


「まあ、伊東義祐が先についてるから従三位自体はそんなにすごいと思えんけどな」


 とは言え武家で普通に正三位につけるのは伊勢の北畠くらいだしかなりの待遇であるのは間違いない。


 ちなみに将軍足利義藤はまだ従四位下だった気がするのだが、やはり朝廷は幕府より俺の方が使えるとみているらしい。


 三好長慶も従四位下筑前守になってるはずだけど、やっぱ彼は朝廷に寄進する金はないし官位など不要と考えてるんだろうか?

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