第60話 北九州の統治は暫くの間は大変そうだな

 さて、丹生島城攻略戦は成功、大友義鎮や宣教師たちやルイス・デ・アルメイダのような奴隷商人は降伏した大友の家臣たちにより捕らえられ俺の前に引き出された。


 何人かの宣教師や奴隷商人などは抵抗して殺されたみたいだが、まあいいだろう。


 その後釜として大友の当主の座についたのは大友兼定だ。


 一条兼定として土佐一条の当主であった彼は一条・大友・大内更には宮家の血も引くハイブリッドな人物であり北九州の名目上の当主としてはこれ以上ない人物なのだ。


「では大友兼定殿。

 大友の当主としてこれからはよろしくたのみますぞ」


「うむ、私に任せよ」


 さて、縄で縛られた大友義鎮は宣教師を睨んでいるが、宣教師も大友義鎮を睨んでる。


 ポルトガルの強力な武器を得るためにと改宗し宣教師の言うことに従って寺社を焼き僧や神官を捕らえて売り払いと好き放題したが、結果としては宣教師のいるところにばかり病が流行り、大友の家中が割れて一斉に反乱が起こって結局城は落城したわけだからな。


「さて、住吉大明神や万寿寺、英彦山神宮を焼いた結果での現状であるわけだが、今の気分はどうかな?」


 俺は大友義鎮にそう聞いてみた。


「……最悪だ、このようなものを入れなければそして扇動に乗らなければよかったと今では思ってるよ」


 俺は宣教師に視線を移した。


「こいつに鉄砲や大砲さえ与えれば俺たちを滅ぼせると思ったか?

 残念だったな何でもかんでもお前らの思うとおりになると思うなよ?」


 宣教師は悔しそうにしている。


「……」


 俺は大友義鎮に言う。


「どちらにしても叔父である菊池義武や家臣である一万田親実の妻を奪ったりしてる時点であんたは統治者として失格なのさ。

 廃嫡されそうになった理由の一つはそれだろ」


 君主は恐れられても恨まれてはならない、そのために人の財産や配偶者に手を出してはならない。


 だったかな?


「……」


「で、お前さんたちだが丘の上での十字架による磔刑にすることにした。

 そのほうが殉教者として死ねてお前さん達は嬉しかろう?

 病院や孤児院はそのまま使わせてもらうつもりだけどな」


 大友義鎮や外国人神父たち外国人奴隷商人にはとっとと磔刑を執行した。


「お前らのせいで!」


 特に梅毒や天然痘になってしまった者が怒りを込めて叫んでいる。


 小高い丘の上の地面に置かれた磔柱に磔刑を執行するものたちを縄で縛り、脇腹を露出するよう衣類の一部を剥ぎ取った後で、数人掛りで磔柱を立て、柱の下部を地面に掘った穴に入れ、垂直に立てる。


 そして槍を構えた処刑人が磔柱の左右に並び、脇腹から左肩先にかけて受刑者をやりで串刺しに貫く。


「ぐあぁぁぁぁ、か、神よなぜ私を見捨てたのですか?」


 はっはっは、教祖様と同じ死に方をできればさぞかし嬉しいであろうさ。


 遺体はその後3日間放置する。


 教祖様であれば復活できるであろうがな。


 大友義鎮の側室で家臣の妻なのに無理やり奪われた者たちは本来の夫の元へ戻し、大友兼定との再婚を望むものは後日再婚させることとした。


 地元の有力国人との婚姻は大事だからな。


 しかし、府内や臼杵に西洋式病院のらい病治療とかの資料があるならみてみたいがこの時代においては西洋医学と東洋医学のレベルの差は殆どなかったような気もするんだよな。


 それと、日本人が教わって時計や望遠鏡、メガネなどの作成技術を持っているなら殺すのも惜しい気がする。


 そして手紙などに何が書かれておるのかの通訳も必要だしな。


 多分書かれている文字はラテン語かポルトガル語だろうが俺にはどっちも読めぬからな。


 府内や臼杵のキリシタンはそれぞれ500人ほどだが「裕福な者は帰依せず、帰依するのは貧窮な病人」という状態であまり学のあるものはおらんかったらしい。


「日ノ本人で一旦キリシタンになったがそれを捨てるというものは命を助けよう、捨てぬというものはあやつらと同様処刑せざるをえぬ」


 洗礼を受けたものは顔を見合わせる。


「言っておくが無料の治療場所や捨て子をそだてる場所は今後も継続して用意するぞ。

 薩摩には同様の施設がすでにあるしな」


 そういうと彼らはロザリオなどを捨て始めた。


 食えぬから病に冒されたからと神へ救いを求めるのであれば同じことをできることを示せば良い。


 俺がそう宣言するとキリスト教の洗礼を受けたものも無理に信仰を続けようとはしないようだ。


 むしろ祟りや仏罰を受けるほうが怖いのだろう。


 そして残念だが日本人の中では時計やメガネなどの作り方を教わった者はいないようだ。


「どうやら宣教師共はキリスト教に改宗をするものがあまりおらぬで焦っておったのかもしれんな」


 とは言えラテン語やギリシア語の聖書を読める様になったものもいるようなのでそのものを使って日記や手紙の内容は調べることとする。


 そして豊前にて未だ陶に従っている博多代官の飯田興秀(いいだおきひで)や安心院公正(あじむきみまさ)などは戸次一族に追討させることにした。


 もちろん俺が直接指示をするわけではなくて大友兼定から指示させるわけだけどな。


「戸次鎮連(べっきしげつら)よ。

 一族の兵を率いて博多を平定せよ」


「は、かしこまりてございます」


 戸次鎮連は戸次鑑連の養子で現状は名目上の当主だが鑑連に従って筑前国・豊前国を転戦しその平定に尽力をしているし安心していいんじゃないか。


 一番最初に接触してきて案内役を勤めた入田義実は浪人であったから、彼の父が持っていた入田の所領を引き継がせた。


「悲願であった所領の回復をさせていただきかたじけない」


「うむ、これからもよく働いてほしい」


「はは、かしこまりてございます」


 しばらくして筑前国の博多と、鎮西探題がある姪浜、そして大宰府を島津が押さえることができた。


 しかしながら飯田興秀によって博多の街には火をかけられて多くが焼け、大商人は肥前の唐津や平戸に避難していた。


「今までは鎮西探題と言っても名目だけであったがこれで名実ともに探題となったか。

 しかし博多の街を焼くとはな……」


 また王直と取引していたというものや朝鮮と密貿易をおこなっておるものはすべて捕らえた。


「今後はこの地にての人売はいっさい禁じる。

 また朝鮮との交易も禁ずる」


 大昔の嘉吉条約によって対馬国の宗氏は李氏朝鮮の被官となっていた、要するに宗氏は勝手に朝鮮に従ったということで、更には1547年に朝鮮王朝と対馬の宗氏の間で結ばれた丁未約条(ていびやくじょう)では日本国王使の偽使の派遣すら行っている。


「朝鮮に勝手に臣従して己の利益だけを図る連中は日ノ本から皆追放するなり皆殺してくれようぞ」


 現状朝鮮との交易は宗と博多商人のみ潤うものでメリットがない。


 最悪朝鮮と国交断絶となっても別に構わんし壱岐の波田なども含めて朝鮮に関わってる倭寇はすべて始末するべきだな。


 しかし日向のときとは比べ物にならぬほど豊後・豊前・筑後・筑前に関しての治安回復や軍の再編成は時間がかかりそうだ。


「やれやれ、先は長いな」

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