第48話 日向北部や豊後南部は土持と佐伯に任せ肥後は菊池と小原に任せようか
さて、五ヶ瀬川の戦いで俺たちが勝利したことで、土持親成は生き残ることができたし、家督を相続したばかりで家内が割れている状態の大友は思った以上に窮地に追い込まれているはずだ。
もちろんは大友三老の残り二人の臼杵鑑速や吉弘鑑理、九州最強武将と名高い立花道雪こと
事実、肥後の菊池義武は名和や阿蘇、相良をまとめて肥後西部から南部を実質的勢力下に置くことができたようだし、肥後北東部にて大友家中の他紋衆や城氏・赤星氏・隈部氏と言った菊池氏庶流の元重臣たちをまとめて挙兵した
更には豊後南部でも佐伯惟教を中心とした大神氏庶流や二階崩れの変の田口氏などの現状では冷遇されている他姓衆の蜂起によって、大友義鎮は居城を豊後国の国府がある府内から臼杵の丹生島城に移動を余儀なくされた。
丹生島城は海に囲まれ干潮時だけ陸続きとなる天然の要害であるが、府内に比べて商業の規模は大きいといえない場所だ 。
「うーむ、肥後の菊池や小原を大友に対しての囮にして日向では楽してかつ予定だったんだがな。
まあ肥後や南豊後から大友の勢力も駆逐できたし結果的には問題ないか」
そして俺達は一度薩摩の清水城に戻り、やがて土持親成とともに一人の人物がやってきたのだ。
そして土持親成は俺に対し頭を下げた。
「この度は我が家の危機をお救いくださりありがとうございます」
「うむ、臣従したものを見殺しにしたと有っては島津の名折れであるからな。
知勇兼備と名高い土持親成殿であればなおさらのこと。
して、そちらの方はどなたで?」
「お初にお目にかかります。
土持親成殿の妹婿でもあります
「おお、あなたが佐伯殿か。
よくぞいらしてくれた」
佐伯氏は豊後の豪族で宇佐八幡宮の大宮司でもあった大神氏の一族。
宇佐八幡神の宮司は大神と宇佐の二氏から選出されている。
その大神氏の子孫である
臼杵氏・長野氏・松浦氏・菊池氏・阿蘇氏などを率いた緒方惟栄はその中心であり、清盛の死後に平家が都落ちした後、原田種直などの力によって九州での勢力を一旦回復したが、緒方惟栄などの軍によって平家は大宰府から追放されて四国へ逃げていった。
しかし、宇佐氏は平家方についていたためこれと対立して、宇佐神宮の焼き討ちなどを行ったため、その罪を問われて上野国沼田へ遠流となったが、その後に許されて豊後に戻り佐伯荘に住んで佐伯氏の祖となったと言われる。
そして佐伯惟教は大友の他姓衆の中でもかなり大きな力を持っていたのだが、彼の祖父・惟治は肥後国の菊池義武と通じて大友義鑑に背いたので、義鑑は臼杵長景に命じて彼を攻めさせたとされている。
そういった事実が有ったかどうかは不明なのだけどな。
そして佐伯惟教は土持親成の妹婿でもあり、大友と佐伯はかなり険悪な関係にあった。
史実では後に起こる姓氏対立事件で処断された大友の他姓衆13人の多くは、大神氏だしな。
戸次や臼杵も同じ大神氏なんだがこの2つ以外は他姓衆にして対立を煽ったわけだ。
また藤原純友の副官となった佐伯是基が居るように佐伯氏は豊後水軍でも有力な氏族でもある。
もっとも大友氏水軍のもう一つの主力は佐賀関の「若林水軍」ではあるが。
「お二人には高城川以北をおまかせしたいと思うがいかがかな?」
土持親成は言う。
「それは誠にありがたき次第」
「うむ佐伯殿はどうであろうか」
「無論異存などございません」
「うむではよろしく頼みますぞ」
「はは」
「はは」
もちろんこれには理由がある。
簡単に言えば人手が足りないのと、彼等のほうが日向北部では島津より顔が利くということだ。
むろん日向の支配の中心となる都於郡城には我が弟である又四郎忠平を城主に据えて日向の支配者が誰であるかはちゃんと知らしめるがな。
そして佐伯の港が使えれば西土佐への距離も近くなる。
そろそろ土佐一条と伊予西園寺を伴って上洛もしなくてはならんだろうな。
弟の日向守並びに日向守護の任官もせなばならないし四国西部の制圧もしくは勢力取り込みも開始せねばならんし、薩摩大隅日向肥後には分国法を施行せなばならん、なんともやるべきことが多いことだ。
だからこれ以上仕事が増えてもオレ一人では処理しきれんよな。
他人に投げられる仕事はなるべく投げてしまうに限るし、内政に強い人材をもっと揃えたいものだ。
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