第27話 高山国の開拓に行こう、首狩り族には念のため注意せねばな
さてシラス台地の開拓は弟たちに任せて、俺は高山国の西側にある低地を開拓し、港をつくって交易拠点にしようと思っている。
ただし、台湾の先住民の中には
これはモンゴルなどの騎馬民族が成人の際に馬の遠乗りを行ったりアフリカの狩猟民族が一人でやり一本で
うむ、まあ敵対するものの首を狩れぬようでは生きて行けぬというのであれば、薩摩の兵児も対して変わらんがな。
出草はその名の通り草むらに隠れて通りがかったものを草むらから出て、背後から襲撃して首を取ると言うもの。
別に正面から相手を打ち取る必要はないとされてるし、相手が強かろうと弱かろうと男であろうと女であろうと対象になるから厄介なことに違いはないな。
そうやって刈り取った首は村の一所に集めて首棚に飾りその狩った首の数の多さによって地位を得たりもするわけだ。
ん、それだけなら日の本も変わらんようなきはするぞ?
もっとも俺たちは土地持ちの大将首はともかく農民や雑兵は捕らえて売っぱらうわけだけどな。
で、オランダやスペインの台湾の支配が低地だけにとどまったのも、大した人数を集められず山の中で彼らに襲われてもこの時代の鉄砲では対処がし辛かったことが理由ではあるとおもう。
そして海外へ行くなら当然ながらお祖父様の許可もいただかなくてはいけない。
俺はお祖父様に海外渡航の許可を得るためにその部屋へ向かった。
「又三郎です。
失礼致しますお祖父様、お部屋へ入ってもよろしいでしょうか」
俺の言葉に祖父から返答が有った。
「うむ、入れ」
「では失礼致します」
そして俺は祖父に”お願い”をする。
「お祖父様、私よりのお願いがございます」
「ふむ、申してみよ」
「はい、シラスの開拓は順調で弟たちにもう任せても良さそうでございます。
ですので私はまた尚久の叔父上とともに高山国へゆき土地を開墾してまいりたいと思います。
どうか許可をいただけませんでしょうか?」
祖父は頷いた。
「うむ、お前のやることが我が島津のためになることであろう。
行ってくるが良いぞ」
俺は頭を下げる。
「ありがとうございます。
また、おそらく争いもありましょうゆえこの地においても人を集めたいと思います。
そして今度も無益な行動とならぬよう心して行ってまいります」
祖父は頷いた。
「うむ、何度も言うが体に気をつけ無茶はせぬようにな」
「はい、承知しております。
それでは父上や叔父上にも話をしてまいりますのでこれにて失礼致します」
俺は祖父の部屋を出て、まず父の部屋へ向かう。
「父上、お祖父様の許可をいただきましたので叔父上とともに高山国にいってまいります」
父は鷹揚に頷いた。
「うむ、父上が許しておるなら私からは言うことはない」
「はい、ありがとうございます。
今回も体には十分気をつけていってまいります」
弟たちにはもう話はつけたから坊津の叔父上のもとへ向かう。
「叔父上、祖父上より話が行っているかと思いますが俺を高山国に乗せていってください」
尚久叔父上は頷いた。
「うむ、話は聞いておる。
しかし、船の上では俺の指示に従ってもらうが良いな?」
俺は叔父の言葉に頷く。
「はい、承知しております」
「うむ、では、準備をしようか」
俺は高札をたてて薩摩の食い詰め者を集めた。
また、人買い商人から国境付近での戦で乱妨取りされた農民を雇ったりもした。
その数は総勢150名ほど。
「先ずはこれだけ居れば十分であろうかな」
もっとも戦えそうなのはそのうち多く見積もって半分、少なく見積もって三分の一ぐらいか。
「皆、高山国では争いになる覚悟はしておけよ。
そのかわり上手く行けば広い田んぼを作れるからな」
「若様、俺たちにも覚悟はできてますよ」
食い詰め者の男が言う。
「どうせ売られるならば田を持てる私はまだましな方でありましょうな」
人買い商人から買った男が言う。
「ああ、下人としてろくに飯も与えられずに働かされたり、鉱夫として過酷な作業をさせられたりするよりは多分ましだとは思う。
そして田んぼを持てるようになれる可能性は高いはずだ」
俺のその言葉に皆が少し表情があかるくなる。
戦国時代では年が明けて春になると、田畑の作物が採れる夏から秋までの、
とくに1420年頃から1570年頃はシュペーラー小氷期と呼ばれ旱魃や冷夏による凶作が毎年のようにおこったらしい。
端境期に関しては日本の鎌倉時代から江戸時代初期の中世を通じての問題でもあり実は中国も同様で、中国でも夏の端境期の飢えが克服されるようになったのは18世紀の終わり頃にようやくできたくらいだ。
いわば中世というのは、ほぼ毎年の夏に飢餓が訪れ、放っておけばそれによって多くの人々が命を落としていくから、田植えが終わったら近隣の村から略奪を行なって飢えを凌がなければ餓死してしまう状況だった。
応仁の乱以降に土一揆などが頻発したりしたのもそういう理由だが、こういった食糧が十分でない状況こそが争いが室町時代にたえなくなった原因でもあり、勝つため生き残るために敵地に侵攻した時は、敵の農地の作物を刈り取りうばってしまうので、そういった刈田刈畑を受けた土地は米などの作物が取れないから飢饉になる。
そうするとその土地の農民は餓死しないためにまた別の何処かに略奪を行いにいくという争いと略奪の連鎖が有ったわけだ。
上杉謙信が上野などへの関東出兵を行った時は晩秋に出陣し翌年の春まで居座り雪が溶けた頃に戻るというのも、越後から人を減らして、上野などで略奪を行うことでどうにか兵士を食わせていたということだ。
もっともこれは冬の雪が深い地域は二毛作ができないということで、北陸から東北までの共通の悩みでは有ったようだが。
「高山国は暖かいはずだから不作に悩む可能性も低いと思うぞ」
「それはいいですな」
そして予め言っておく。
「まあ、とりあえず高山国では一人で道を歩くな。
周りに草木がある場所は絶対通るな。
というかなるべく拠点から出るな。
まあ、まずは俺たち倭寇の拠点にいれば多分大丈夫だ」
「えらいことをいわれておるようなきがしますな」
俺はくくと笑う。
「今の薩州でもそんなに変わりはせんがな」
「まあ、それはたしかに」
実際には台湾北東部の山中に住んでいるタイヤル族やその南に住んでいるブヌン族、更にその南のパイワン族などはともかく平地に住んでいるケタガラン族とその支族などは普通に交易もしてるから、平地ではそこまで首をかられる心配する必要はないとは思うがな。
「まあ喧嘩を売ってきたら、こちらはその喧嘩をかうがね」
俺らの首をかろうとするのなら、逆に首をかられること覚悟してもらおうかのう。
ま、こちらから米や薩摩芋や芋焼酎を与えてみてそれで開墾を出来るような食い物で釣れるならそれで良し。
首の取り合いになるならばそれも良し。
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