第22話 溜池が完成したら家畜小屋と人間用の家を立てていこうか。
さて、シラス台地を掘って池を作りそこにシラスコンクリートを流し込んで固めることで貯水池を作ることを何度か繰り返して、貯水池を複数作り上げたら人間の居住のための家や家畜の小屋を作ろうか。
「これで飲料水などの心配はとりあえずなくなったか。
家畜も含めてなんとかなるだろう。
まあ最悪の場合はまた下から湧水を運んでこないと駄目な場合もあるかもしれないがな」
弟が頷く。
「うむ、さすがは兄上じゃな。
まさかシラスと石灰を混ぜて水を貯めるための池を作るなど俺には全く思いつかんわい」
「まあ、城にこもっていろいろな本を読んだりしていたからな。
そういう知識というのも本にあったりするんだ」
「うむ、本というのも侮れぬものだな」
まあ、嘘なんだが。
流石にシラスコンクリートのことはこの時代における本には載っていない。
もっとも石灰に石や藁など混ぜ物をくわえて漆喰を作る技術はすでにあるから、ちょっとシラスを混ぜてみたら上手く固まったんだとでも言えばよかったかもしれないな。
さて、生活用水が確保できたら次は住居を作っていこう。
本来であれば開拓時には木を伐採して木の根を引っこ抜く抜根作業があるのだが、今回は大きな木はない原野地帯だからその必要はない。
木の根を抜くのは牛を使っても大変なのでその作業がないのは助かるな。
木が生えている場所では抜根をしないとその後に地面を掘ったり削ったりできないし開拓の最大の障害でもあったんだ。
そして本来なら建築物に対しての大工の木割の知識、要するに家の柱にするための木材の太さや長さなどの比率やその間隔と言うのは大工の秘伝であったのだが、室町ぐらいからはそういった技術も秘伝ではなくなっていった。
戦国時代では農民も労役で城作りを手伝わされたりもするので掘立て小屋を立てるくらいなら、専門の大工などの職人を呼んでこなくても、どうにかなるのだな
「じゃあ、みんなで家を作るぞー」
「おー」
皆で離れた場所にある雑木林に向かい、木を切り倒して木材として使う。
急造の城や砦などを作るときと手順はさほど変わらない。
戦国時代の庶民の家は掘っ立て小屋で、基本的には穴をほってそこに礎石などをおかないで柱を立て、壁はわらを入れた泥土を塗り固めた土壁、屋根には板を載せて石を重しとして屋根を吹き飛ばされないようにする板葺きや茅や藁を使った茅葺きや藁葺が普通だな。
家の入口近くは土間で米を炊くための竈や水瓶などがある台所などがあり、その奥に暖房と調理のための囲炉裏を設置する場所があって、その奥に寝る場所が板張りで部屋の大きさとしては八畳間から十畳間くらい、ただしこの時代は畳は高級品だから民家は畳敷きではないが。
このくらいの大きさに4人から6人程度が住むのが貧乏百姓だと普通だ。
また、竈や囲炉裏のすすは燻製と同じで木材を腐食させにくくするメリットもあるが、失明につながる眼病のもとでもあるので、小さなシラスコンクリート屋根付きの煙突を竈や囲炉裏の真上にはつけておこうか。
昭和の時代の風呂釜などについていた煙突は西洋文明が入ってきてからのもので、その前の大きな家の農家や商家には竈の上の屋根の上に煙出しという小さな屋根を設けている、そして煙出しを持てない小規模な家でも、大抵はかまどの上のほうに高窓はあったけどそれでは十分とはいえなかった。
また部屋の大きさは庄屋レベルになればまた別で応接室などが増えたりするが。
あとは離れに農作業の道具をしまう納屋、便所、家畜小屋、米蔵などがあったりするな。
便所や家畜小屋などが母屋から離れていることが多いのは単純に臭いからだ。
「さて、ここでは泥を確保するのは大変だし、また強化漆喰で壁は作ろうか」
弟は頷く。
「うむ、シラスならば掘り返したものがいっぱいあるし、下の河原の土地から泥を運んでくるより全然楽じゃな」
「竹で筋を入れておけばそう簡単に壊れることもなかろう」
「うむ、それは良いな」
こうしてシラスコンクリート製の壁に板葺きの屋根を持った農民用の掘っ立て小屋や納屋、家畜小屋、収穫用の蔵などいうチグハグな建物ができるわけだな。
後は便所だがとりあえずは共用便所を作ってその建物に男女別で仕切りを作って穴を掘り、そこに板を渡して尿はシラスに浸透させ、糞は天気が良い日に取り出して乾燥させる。
乾燥させた人糞は豚の餌にも出来るし、燃料にしようと思えばできないことはない。
実際人糞から出るメタンガスで走るバスなどは21世紀でもあったし、人糞から合成石油を作る試みもあったらしいしな。
家畜小屋も最初は共用でいいだろう、山羊や驢馬などが増えて行き渡るようになったら各家で個別管理してもいいかもしれないけどな。
尿と糞をきっちり分けて乾燥させたりすれば人糞というのは意外に役に立つのだな。
まあさつまいもの場合は肥料はいらないので肥料として使う必要性はないのだが。
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