第26話 ビルドアップ!
【作者より】スミマセン。26話を飛ばして27話をのせてしまいました。反省。
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「早く殺れ、ジェイスタークッ!」
「だから、やらねえよ。何ならカインについてもいいんだぜ」
「ふ、ふざけるな! 報酬なら幾らでも出してやるから、とっととぶっ殺せ!」
「ん〜〜〜、今は無理だな。師匠が弟子と戦うにはシチュエーションが弱すぎんだろ」
俺がこの男と戦いたくない理由。王国でも最強クラスの冒険者ジェイスタークは、俺の剣の師匠だからだ。
師匠は俺のサバイバルの弱点も知っている。打ち合う場合は自力での勝負になるだろう。幾ら莫大な経験値を得たといっても、実践経験の差は大きい。勝てる気が全くしない。
「チッ、使えん奴らだ。B級ごときに不甲斐ないッ!」
「だったら旦那、自分でやってみたらどうだい? あんたも元A級冒険者だ。筋骨のドゴールさんの実力を見せてくれよ」
ドゴールは目を細めると、ジェイスタークを睨みつけた。
「ふん、ヒヨッコ共、見てろ! 王都最大の冒険者ギルドオーナーの力をな!」
ジェイスタークを払い除け、俺の前に出るドゴール。
「筋骨ビルドアッープッ!」
ドゴールの服が破け、
「見よ、俺様の筋肉を! 素早いだけのガキには、俺様の筋肉にかすり傷一つさえも付ける事はできまい!」
両手を広げ、あたかも斬り掛かってこい的なポーズを取っているドゴール。その後ろにいるジェイスタークを見ると、サムズアップをしていた。やってもいいみたいだ。
腐っているとはいえ、流石は王都最大の冒険者ギルドボスだ。纏う殺気のオーラが半端ない。生半可な気合いでは殺気だけで殺されてしまいそうだ。
俺のギフト『サバイバル』がドゴールの殺気に反応し発動する。俺は剣を左手に持ち替え、ドゴール目指してダッシュをする。『加速』の効果で一瞬で懐に潜り込む。
一瞬だけ
俺は右手を伸ばし、サバイバルが選んだ技、武道家が使う発勁を、ドゴールの割れた腹筋に叩き込む。
「拳豪奥義、龍昇発勁ッ!」
龍昇発勁は体の内部から破壊する発勁の技で、体内に入った勁は龍の如く駆け上がり脳を揺らす。
「グゴグワァァァッ!」
自慢の筋肉が内壁となり、体の中で暴れまくる勁の波動。ドゴールは体を
ミルシアナさんを借金奴隷に追いやり、ギルドを廃業寸前まで追い詰めた野郎だ。ぶち殺してやりたい所だが、冒険者ギルド協会を敵に回すわけにもいかない。
「本当に、お前のギフトは多才だな」
倒れたドゴールを踏み潰しながら、ジェイスタークが俺の元にきた。
「師匠、お久しぶりです」
「ぶち殺さなくていいのか?」
「協会の議長ですよ。殺ったら流石にまずいでしょ。人も見てますし」
「まぁそうだな。しかしカイン、お前異常なほど強くなったな。」
こちらの一騒動も終わり、朝の出勤前とあって、集まっていた野次馬達は「良いもの《巨乳》が見れたな」とか言ってバラけていく。
「カインさん、大丈夫!?」
御者台を降りていたソフィアさんが駆け寄ってくる。見ればリアナやレミーナも馬車から降りて、ミルシアナさんの隣でこちらを見ている。
ティアナさんは馬車の中みたいだ。ミラ様の護衛をきっちりとこなしている。
「ああ、大丈夫だ。それよりも、コイツが目を覚ます前にさっさと王都を出よう」
俺は心配して来てくれたソフィアさんの頭をなでた。
「ヨシ、俺らも帰るぞ。エメラルダちゃんのおっぱいで手打ちにしとけ! てな訳で俺にも見せてよ、エメラルダちゃん」
「あんたは何にもしてないでしょッ! て言うか、ザラ、後でお仕置きよッ!」
そう言ってエメラルダさんは、ザラと呼ばれたシーフの男を睨んだ。イヒヒと笑うシーフの顔に反省の色は無い。
「カイン、お前ら聖女様の護衛クエストだったよな。もしジャギに会う事があれば、俺の代わりにぶっ殺しておいてくれ」
「ジャギがどうかしたのか?」
ジャギは、共にジェイスタークから剣を習っていた俺の兄弟子だ。
「女に
「いいのか?」
「既に何人かの聖女候補を拐っているらしい。弁明の余地はないな」
「分かった」とだけ告げ、俺達は馬車を走らせ王都を出た。
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