第25話 最強S級冒険者
『加速』スキルは、
素早い動きのシーフに対抗する為に、『サバイバル』が選んだスキル。初撃を躱した俺に、シーフの男はダガーを右に左にと高速の連撃をくりだすが、今の俺にはその全てがスローモーションに見えている。
「こ、このガキ、B級のクセにッ!」
『加速』の恩恵で周囲の状況もよく見えていた。魔法使いのお姉さんが詠唱を始めている。物理攻撃が見切れている状況で、ヤバいのは魔法だ。シーフの間隙を縫って魔法使いのお姉さんへとダッシュしつつ俺も魔法を用意する。
「チェーンバインド!」
『チェーンバインド』は『バインド』と違い、対象は一人になるが、その分レジストされにくい。魔法使いは魔法抵抗値が高いから、こちらの方が有効だ。
拘束の鎖が魔法使いのお姉さんに絡み縛りあげる。……爆乳を包むローブがはち切れそうになるが仕方ない。
「あう〜ん♡」
妙な喘ぎ声が聞こえたのは気のせいだろう。
「アンカーヘイトッ!」
聖騎士がタワーシールドを石畳に叩きつけ、ヘイトスキルを発動させた。俺の意識が強制的に聖騎士に向けられる。背後からはシーフが高速で近づいてきている。聖騎士に全ての意識が集中する前になんとかしないとヤバい。
「うっらぁぁぁぁぁぁッ!!」
魔法使いのお姉さんに絡まっている魔法の鎖を振り回し、お姉さんを聖騎士にぶつける。聖騎士の体制が崩れた事でヘイト効果が消えた。
更にダッシュで魔法使いのお姉さんの背後に回り、お姉さんを背後からくるシーフの盾にする。シーフは既に斬りかかる体制に入っているが、これで一瞬シーフの動きが止まる筈だ。
えっ!?
シーフはお構いなくダガーを振り下ろす。
「キャァァァァァァァッッッ!!」
飛び散る鮮血、鼻血を押さえる路上の野次馬野郎達。見れば爆乳魔法使いのお姉さんのローブだけが、仲間のシーフによって切り裂かれ、破壊力抜群の豊かな胸がたゆたゆと揺れていた。
「
S級シーフがあの間合いでダガーを止められないなんて事があるのだろうか?
「イ、イヒじゃないわよ、このエロ猿ぅぅぅぅぅぅぅッ!」
お姉さんの全力顔面パンチで、野次馬の中に吹っ飛ぶシーフ。
……確信犯か。
聖騎士も巨大なメロンを見て動揺している。俺は身を落とし足払いで聖騎士を路上に倒した。聖騎士に対し剣を突きつけようとした時に、新たな気配を感じた。
上!?
石畳の上に突如降ってきた男。短い銀髪に
「チッ、間に合わなかったか」
いや、状況的にはギリギリ間に合っている。そして、俺はこの男とは戦いたくない。何故ならこの男は……。
「エメラルダちゃん、俺にも爆乳見せてよ」
「見せないわよ、バカッ!!」
間に合わなかったのはそっちかい! 魔法使いのお姉さんも爆乳を押さえている腕に力をいれる。マシュマロが腕から溢れこぼれそうだ。
「ジェイスターク、来るのが遅いぞッ!」
不遜な態度で腕を組み、横柄に告げるドゴール。
「旦那、俺はこの件には関わらないって言ったろ。エメラルダちゃんの爆乳が見られそうだから来ただけだ」
……何しに来たんだよ、あんたは。
「マクシミリアン、お前にもこの件には関わるなって言ったろ」
「し、しかしジェイスターク様……」
片膝をつき起き上がろうとする聖騎士。
「しかしジェイスターク様、あの男の不埒な行いは許せるものではありません」
「この男は信用出来るヤツだ。それにコイツを追い詰めたらお前らに勝ち目はないぞ。てか、もう負けてるか」
「ジェイスターク! その男を斬れッ!」
「はあ〜? 何で俺が?」
「そいつは若い美少女達を奴隷にして、不埒な行いをする不届き者だ。冒険者ギルド議長としては許してはおけん!」
銀髪の男は、馬車の方を見ると、右手で軽く手を振った。
「ミルシアナちゃん、ソフィアちゃん、元気そうだねぇ」
おちゃらけていた男は、目を細めると真剣な顔になる。
「一つだけ確認があるんだが……」
何を聞く気だ? 俺からは不埒な事は一切していないぞ。
「ミルシアナちゃんも、ソフィアちゃんも若いの? 少女なの?」
そこ聞くッッッ!!?? ハーフエルフのソフィアさん、ハイエルフのミルシアナさん。異種族少女物議は触れない方がいい。
「ジェ、ジェイスタークさん、何を言うのですかッ!」
焦り顔のミルシアナさん。
「わ、私はミルシアナ様より二百歳は若いです!」
基準が既に何なのか分からないソフィアさん。エルフとハーフエルフの見た目ギャップを考え始めたらきりがない。
そんなおバカな話をしているとドゴールが吠えた。
「早く殺れ、ジェイスタークッ!」
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