第28話 ドル箱かよ!

【作者より】スミマセン。26話を飛ばして27話をのせてしまいました。26話は赤竜の爪との決着回です。ご迷惑おかけしました。


――――――――



「止めろ、ソフィアさん」



 馬車の先、街道に陣取る黒尽くめの集団。



「カインさん、あの集団は……」


「間違いなく暗黒邪教騎士団だな」



 約100メートル先には十人ぐらいの集団に黒騎士が一人、後は黒い鎧を着てはいるが普通の戦士のように見える。



「俺が前に出る。レミーナッ! 敵だ、全員覚醒させろッ!」



 大宴会をしている呑ん女衛共も、酒を飲むために馬車に乗っている訳ではない。



「えぇぇぇぇ」

「カイン、頑張ってぇ〜」

「カイン様ぁ、宜しくお願いしますぅ」

「カインは出来る子よぉ〜」



 プチッ



「ゾぉブぃア゛さぁ〜ん」


「ハ、ハイぃぃぃ!?」


「後ろのバカ野郎共を、ぶち殺してもいいから、外に引きずり出してくれ」


「ハ、ハイッ!!」






「許さない!」

「許せませんね!」

「許さんぞッ!」

「許せそうにありませんわ?」



 馬車からソフィアさんに叩き出されたアホ娘達。宴会の邪魔をされてだいぶご立腹のようだ。


 お前らの仕事は蒼の聖女であるミラ様の護衛だ。襲撃されて腹を立てるのは、筋違いもはなはだしい。



「カインさん、私達も参戦した方がよいのでは……」


 

 ソフィアさんは御者台に戻ると、馬車の前方に立つアホ娘達をハラハラした顔で見ている。



「いいんだよ。俺とソフィアさんは今まで十分に働いた。それにいざとなれば――」


「いざとなれば?」


「いざとなれば、この場を逃げ出す!」


「えぇぇぇぇぇぇッ! 皆んなを見捨てるんですか!?」


「ソフィアさん、俺達はプロの冒険者で、いま優先すべきは蒼き聖女ミラ様の身の安全だ」


「そ、そうですけど……」



 ソフィアさんが俺とアホ娘達を交互に見ていると、ミルシアナさんが詠唱を始めた。おい待て、この魔法は……。



「私達の邪魔をする者には裁きを! エクストリームグリーンワルツ!」



 うがッ! やりやがった!


 ハイエルフにしてS級冒険者のミルシアナさんが放つ戦術級極大魔法。狂気の光の球が前方にいた暗黒邪教騎士とその一味に落ちると、眩い光と爆音、爆風が嵐のように吹き荒れ、莫大な砂塵を舞い上げる。



「プロテクションフィールド!」



 その爆発から俺達を守るように、レミーナが魔法障壁を展開する。


 そして爆風が治まると、街道には大きなクレーターが出来上がっていた。



「あら?」

「ない!」

「三千万ゴールドが消えてます!」

「逃げられた!?」



 ここからでは見えないが、暗黒邪教騎士の鎧が無いらしい。対魔法において絶大な防御力を持つあの鎧が無くなる筈はない。つまりは逃げられたって事だろう。


 しかし、暗黒邪教騎士がドル箱にしか見えないとは。こいつら……。





「ミルシアナさんや、コイツをなんとかしてくれないかな?」

 

「つ、土魔法はちょっと……」



 街道に出来た巨大なクレーターにより、俺達は足止めをくらっている。



「ではコレを貸してしんぜよう」



 俺はマジックバッグからスコップを取り出す。



「え、えぇぇぇぇぇ」



 スコップを見て顔が青ざめるミルシアナさん。



「カ、カイン、それはあまりにも……」


「安心しろ、皆んなの分もあるから」



 俺はマジックバッグから、更に四本のスコップを取り出し、地面に突き刺した。



「「「「…………」」」」



 絶望的な顔をするアホ娘達。しかたなく、俺がスコップを一人づつに手渡そうとすると、停めてある馬車の後方から人の声が聞こえてきた。



「なんだ、これは! 星でも落ちたか!?」



 見れば馬車4台が連なる商隊キャラバンが、俺達の馬車の後ろに付いていて、護衛の兵士が様子を見に、俺達の近くに駆け寄ってきていた。



「あ、今すぐに埋めますんで、ちょっと待っててください」



 アホ娘達への罰ゲームは諦め、俺は土魔法で大穴を埋めていく。



「流石はカイン様です〜」



 これでまたお酒が飲めると勘違いしているレミーナに釘を刺す。



「レミーナ、お前は御者をやれよ。散々ぱら呑み散らかしていたんだからな」


「えぇぇぇぇぇぇ」


「ティアナさん、悪いが面倒見てくれ」



 ガックシと肩を落として御者台に座るレミーナ。俺達も馬車に乗り込み、馬車はゆっくりと動きだした。





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