第23話 護衛依頼
「護衛依頼?」
ギルド『緑風の地平線』に所属して3日が過ぎた。相変わらずの西の森のシャドウナイト調査をやっているが、あの暗黒邪教騎士を倒した後からシャドウナイトの影も形も見えなくなり、稼ぎは調査中に見つける薬草を売っての細々としたものしかなかった。
「護衛って、こんな零細ギルドにか?」
「零細ギルドは余計だ! これは指名依頼。報酬もかなりの高額だ!」
受付嬢のティアナさんは久しぶりの依頼のせいか、
この零細ギルド『緑風の地平線』はハイエルフであるミルシアナさんが100年近く運営している老舗ギルドって事だが、今は近所にある大手ギルド『赤竜の爪』の嫌がらせで閑古鳥が鳴いている。
所属している冒険者パーティーは俺達の『アオ』だけ。元々いた冒険者連中は『赤竜の爪』に移籍しちまっている。
そんな『緑風の地平線』に指名依頼となるとS級冒険者でもあるミルシアナさんをご指名か?
「依頼主は青鳳教会。護衛対象は蒼の聖女様で、聖女様をここ王都から青鳳教会大聖堂のある、南方のラフランギス公爵領に、無事に送り届ける事が今回の依頼だ」
「ラフランギス領か。馬車でも二週間以上はかかるな」
「……ラフランギス領」
ラフランギス公爵領と聞いてレミーナの顔が曇る。そういやレミーナは南方出だったな。
「どうしたレミーナ? ラフランギス領に嫌な事でもあるのか?」
レミーナの顔色が少し悪い。嫌な思い出でも有るのか?
「わ、私はラフランギス公爵領の青鳳大聖堂で修行を積んでました……。聖女候補になったのもその時です……。でも蒼の聖女には……今回の護衛対象であるミラ様が即位しました……」
ミラ様って、西の森の洋館で倒れていた女の子だよな。自分がなるかもしれなかった蒼の聖女か……。他のみんなもレミーナの淋しげな瞳に同情している様だ。
「わ、私は……そのミラ様を……」
(((ミラ様を……)))
「そのミラ様を、夜な夜な大聖堂から連れ出して、毎晩毎晩大酒飲んでいたのがばれまして、ラフランギス公爵領出禁なんですぅ~~~」
「「「ガハアアアッ!!!」」」
「テへ」
「テへじゃねえよ! なにやらかしちゃってんだよッ! レミーナは一ヶ月留守番だ! 留守番~ん!」
「え~~~~~~~ッ」
「え~じゃない!」
まったくこのポンコツ聖女候補は、昔からポンコツ聖女候補かよ!
「カ、カイン、それがね……」
衝撃の事実がティアナさんの口から告げられた。
「指名はレミーナだあ!?」
何と蒼の聖女様から指名を受けたのはポンコツ聖女候補のレミーナだった?
「蒼の聖女様たってのお願いみたいで、枢機卿達も頭を痛めているみたいだな。ハハ」
苦笑いのティアナさん。俺も頭が痛くなってきた……。
◆
「お姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁ~」
まだ人通りも少ない護衛任務の初日の早朝。目立ってはいけない護衛対象の蒼の聖女様が、大きな声で走りながらレミーナに抱き付いてきた。
「み、ミラちゃん」
「お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様ぁぁぁぁぁぁ~」
な、なんだこれ? 蒼の聖女のミラ様は年齢的には14、5歳の女の子だったのだが……。
「お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様、お姉様ぁぁぁぁぁ~」
レミーナの豊かな胸が、「お姉様~」と叫んで顔をフルフルさせるミラ様の動きに合わせて、タユタユと揺れている……。
い、いや、そこじゃない。そうじゃなくてだな、いったいこれはどういう状況なんだ?
「ミ、ミラちゃん落ち着いて下さい……」
「……お姉様あ~、ミラは淋しかったのですよ~。お姉様のいない毎日が毎日が毎日がとても淋しかったのですよ~」
俺はレミーナ以外のメンバーの顔を
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