第21話 聖帝スキルはヤバいらしい

「昨夜の事は無かった事にしよう……」



 美少女5人に囲まれながら、至る所をあんな事やこんな事をされまくった。


 最後の一線を越える前にサバイバルのギフトが発動、っていうか気合いで発動させた。呪淫のせいで彼女達のみさおけがす訳にはいかないからな。


 部屋を出て階下に降りる。ギルド備え付けの食事処では美少女5人が朝食のパンやサラダを並べていた。



「……はよ」



 昨夜の事もあり少し気まずい。



「「「おはよう~」」」



 矢鱈と和やかな挨拶? あれ? 気まずいの俺だけか? なんでだ?


 朝食を食べながら今後の事を話す。



「とりま、俺達は緊急クエストのシャドウナイトを西の森で探してみるよ」



 緊急クエストの依頼主は聖教会だ。緊急クエストはどこのギルドを通しても報酬は貰える。勿論この零細ギルド『緑風の地平線』でもだ。



「ならあたしも付いて行くよ。ここに居ても仕方ないしね」


「私も行きます」



 ティアナさんに加えてミルシアナさんも来るという。ギルドをからにする事になるが、ここに居てもやる事が無いらしい。


 受付嬢とギルドオーナーが不在しても大丈夫なギルドって……。





 昨日と同じ西の森に来た。違うのはパーティーが6人になったって事だ。報酬がシャドウナイト一体あたりとなっているから、人数が多いと一人あたりの配当が減るが、まあ仕方ないと諦める。


 今のパーティーは、


前衛は

魔法剣士(B級)の俺

精霊剣士のティアナさん(A級)


中衛は

精霊剣士のソフィアさん(A級)


後衛は

魔法使いのリアナ(A級)

僧侶レミーナ(B級)

精霊使いのミルシアナさん(S級)


 パーティーランクはA級になった。俺のB級疑惑はここでも話に出たが、お金がないから昇級試験は受けられない。



「さて、一先ずは昨日の怪しい館の周辺を調べてみよう」



 リアナとレミーナがこくりと頷く。



「怪しい館ですか?」



 館の事を知らないソフィアさん、ミルシアナさんとティアナさんに昨日の事を話した。



「その骸骨頭は不死の王って言ったのか……」


「いや、その一歩手前だったらしい」


「……アークリッチですね」


「「「アークリッチ!?」」」



 ミルシアナさんが言うアークリッチ。アンデッドモンスターの高位に位置する最強級モンスターで、更に昇華するとキングリッチになる。



「あのぉ……初耳なんですけど……」



 ソフィアさんが、何それ的な目で俺を見ている。



「あ、ああ、ギルドの依頼はシャドウナイトだったからソフィアさんには言って無かったな。しかしあのハゲはアークリッチだったのか。道理で強かった訳だ」


「「「…………」」」


「ん?」


「強かった……で済むレベルでは無いぞ……」


「S級パーティーで勝てるかどうかって相手ですよ……」


「それをカインさん一人で倒したんですよね……」



 びっくり顔でティアナさん、ソフィアさん、ミルシアナさんが俺を見る。



「ま、まあ俺のギフトは、命がヤバい時に発動する『サバイバル』だからな」


「その『サバイバル』も初めて聞くギフトです。いったいどのようなギフトなのですか?」



 長寿族であるハイエルフのミルシアナさんも知らないギフトらしい。



「今言ったように、俺の命がヤバいレベルに合わせて、俺も知らない技や魔法が使えるようになるギフトだ。あの時は初めて聖天覇道炎とか、破魔聖炎斬とか使えたな」


「「「聖天覇道炎ッ!!」」」


「「「破魔聖炎斬ッ!!」」」



 5人が合わせたかの様にびっくりしている。



「何でリアナやレミーナまでびっくりしているんだ? 俺のギフトは知ってるだろ?」


「だ、だってそれ……」


「カイン様、それは聖帝スキルですよ……」


「だから? 以前にも炎の剣聖技の焰煌斬を使ってみせたろ」



 『サバイバル』はヤバい相手に対して対応策を生み出すギフト。聖帝スキルだろうが、雷帝スキルだろうが状況に応じて使えるようになる。



「……聖帝はここ200年の間、未だに空席です。今となってはお伽話とぎばなしにしか出てこない伝説級のスキルですよ」



 聖教会に籍を置くレミーナ。聖帝についても学んできたのだろう。



「つっても常時使える訳じゃ無いからな~」



 みんながさわはしゃはやし立てる中、俺は頭をポリポリ掻くことしか出来なかった。


 彼女達の結論は聖技持ちよりヤバいって事になったらしい。いや、常時使える訳ではないから、それは無い筈だ。


 そして、囚われていた聖女様の話へと話題は移った。



「生贄にされかけていたのは間違いないな」



 俺の言葉に全員が頷く。そして、レミーナが少し青い顔で口を開いた。



「マーラー邪神教会の目的はキングリッチの生贄召喚でしょうか?」


「死者の国でも作るつもりか?」



 マーラー邪神教会が崇める女神カーリアンは亡者の神とも呼ばれ、リッチやレイス、シャドウ、ゴーストといったアンデット系モンスターを束ねる神でもある。



「既に何人かの聖女候補が行方不明になっています。彼女達の魂はもう……」



 ミルシアナさんが悲しそうな声で、肩を震わせている。



「さて、この辺の筈なんだが……」



 茂みを抜けて、洋館がある場所に出た俺達だが……。



「あれ?」


「……なくなってるね?」



 俺はリアナと顔を見合わせた。昨日はあった怪しい館は綺麗さっぱり消えている。館があったであろう場所は広い広場となっていたのだ。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る