第14話 いいから黙れ

 ソフィアさんは泣き疲れたのか、昨晩が寝れてなかったのか、宿屋の部屋に一緒に戻り、今は俺のベッドで静かに寝息を立てている。


 俺はレミーナが使っているベッドに腰掛け、リアナとレミーナはリアナが使っているベッドに腰掛けている。



「ありがとうね、カイン」


「ありがとうございます、カイン様」


「何だよ、ありがとうって?」


「ソフィアさんを助けてくれた事」


「改めて私達を助けてくれた感謝の気持ちです」


「助けてなんかいないぞ。金を立て替えているだけだ。ちゃんと金は返せよ!」


「ふふふ」


「はい、一生を尽くしてお返しします」


「いや、一生は尽くさなくていいから」



 一生とか言われたら怖いわ!



「でもそんなに直ぐには返せないし」


「確かお利息はトイチでしたわよね」


「アホか! 何処の高利貸しだ! それこそ一生でも返せんわ!」


「シー! 声が大きいよカイン」


「ソフィアさんが起きてしまいます~」


「すまん」と言ってソフィアさんを見るが幸せそうに笑みを浮かべて寝ているように見える。


「俺も寝る。お前らのせいで昨夜は寝れなかったからな」


「「?」」


 そう言って俺はレミーナが使っているベッドに潜り込む。



「枕に沢山涎を垂らしてもいいですよ」


「しねえよ」


「アホか」と言って俺も朝寝を決め込んだ。





 俺が目覚めた時にはソフィアさんも起きてリアナ達と何やらクスクスと話しをしていた。



「おはよう……って、何時だ?」


「もう直ぐでお昼ですよ」


「あ、あの……」



 ベッドから起き上がった俺の前に、ソフィアさんが近ずいてきて、両手でがっちりと俺の手を握った。



「カインさん、いえ、カイン様……。私を助けて頂きありがとう御座いました」


「カイン様ってのはレミーナだけで勘弁してくれ。カインでいい。それに助けた訳じゃない。金はいずれ返して貰う」


「はい! 一生かけてでもこのご恩はお返しします」


……一生だと。まさかソフィアさんも金を返さないつもりか……。クッ、ソフィアさんも実は悪女だったのか! やはり美少女は怖いッ!





「さてと」



 宿屋の食堂でランチを済ませた俺達は、これからの事について話しを始める。



「ソフィアさんにはパーティーに入ってくれと言ったが、冒険者でないソフィアさんをクエストに連れては行けないので、適当に仕事を探してくれ」



 俺が気を使って言ってみたところ、女の子三人はクスクスと笑っている。



「カインさん。大丈夫です。私は元冒険者でしたので、皆さんと一緒に行きますよ」


「えっ? ソフィアさんは受付嬢だったろ?」


「以前は冒険者としてやっていた時期もありました。一応A級冒険者です」


「え、A級? いや、だって、A級なら隠居する歳でも無いだろ?」



 どう見ても俺達と大して歳も変わらないソフィアさんが、冒険者を廃業して受付嬢をしている理由が分からない。しかもA級ならばなおさらだ。


 するとソフィアさんは綺麗なシルバーブロンドの髪を掻き上げる。あれ? 耳が少し長く尖っている。



「ハーフエルフなんです。だからこう見えて皆さんよりは少し長く生きているんですよ。冒険者を辞めてまだ10年ぐらいしか経っていませんから、腕は落ちてないと思います」



 まだ10年って、俺が7歳のガキの頃の話しだろ? それより前から冒険者をしていたって事は……。



「ソフィアさんって見かけによらずオバ……」



 美少女三人から黒いオーラとマジ殺気が漂う。俺の命の危機に発動するギフト『サバイバル』が『いいから黙れ!』と発動した……。



「そりゃあ、頼もしいなぁぁぁ、アハハ」


「「「ふふふふふふ」」」


「アハハハハハ~」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る