第13話 受付嬢
「『げっ』、てどう言う意味かな?」
「コ、コホン。お久しぶりです、カインさん」
「また会えて俺も嬉しいよ」
「……また私から奴隷の買い求めですか?」
その言葉にリアナとレミーナが希望の光を見たかのように瞳を輝かすが……。
「まさか、そんな金はもう無いよ」
「では御用が無いのでしたら、これにて失礼します」
そそくさと俺の前から立ち去ろうとするジョバンニに俺は小声で呟く。
「黒衣の騎士は俺が殺した」
「なっ! 暗黒邪教騎士を!」
「暗黒邪教騎士? 俺は黒衣の騎士って言っただけだが」
ニヤリと俺が笑うと、ジョバンニは冷や汗を流した。
「えっ、あっ、いや」
「ジョバンニさんは物騒な人達と知り合いのようだね?」
アババと口を両手で押さえるジョバンニ。
「最近、
ジョバンニの顔から大量の汗が流れ落ちている。やはりジョバンニは暗黒邪教騎士団、いやマーラー邪神教会と繋がりがあるみたいだ。
「ところでジョバンニさん、ソフィアさんは幾らの借金をしたんだい?」
「……締めて8億になりますが……」
「ギルドボスじゃなくソ・フィ・ア・さんの責任範疇の借金額だ!」
「……2億になります」
邪教騎士団をちらつかせてネゴしてみたが、やはりかなりの金額だった。
「……2億カッパー?」
「ゴールドですよ」
に、2億ゴールドかあ! 流石に無理だよな。昨日あったばかりの受付嬢に肩入れする必要はそこまでないが……。
ジョバンニ越しに見える野次馬野郎共のニヤケ顔。めちゃくちゃ胸糞悪い。
「コイツを査定して貰えないか?」
俺は骸骨頭からゲットした巨大魔石を取り出した。昔、聞いた話しだが、手のひらサイズの魔石がオークションで1億ゴールドで落札したって話しを聞いた事がある。ならばこの巨大魔石なら3億ゴールドの可能性がある筈だ。
「お、大きいですね!」
闇金の猛者で有るはずのジョバンニをもってしても、巨大魔石を見て吃驚している。
ジョバンニは巨大魔石を査定用のマジックバックに入れて鑑定する。
「……3億2千万……」
「……マジか!?」
「カイン様!」
カイン様? ジョバンニが行き成り揉み手で営業スマイルになった。
「ぜ、是非ともこの魔石をお売り下さい!」
「……高いぜ」
「3億2千万、いや3億3千万で如何ですか?」
「よし、売ってやるから、そこからソフィアさんのお代は引いてくれ」
「ああぁ〜! ハイハイハイハイ!!」
そう言ってジョバンニは指をパチンと鳴らし、前を歩いていた黒服達に指示を出す。
「ソフィア嬢をカイン様にお渡ししろ」
「よ、宜しいのですか、ジョバンニ様!」
ジョバンニの指示に黒服達が慌てふためく。
「バカですかお前達は!? 大奥様が好きな物は何ですか? 大旦那様と大奥様では
「は、はい! 分かりましたッ!」
「ふふふ。大奥様は大の宝石好きなのですよ。大奥様に良い土産が出来ました。毎度ありがとうございますカイン様」
黒服達が俺にソフィアさんを引き渡した。唖然とするソフィアさんと野次馬達。
「カイン!」
「カイン様!」
余程嬉しかったのかリアナとレミーナが俺に抱き付いてきた。
「ちょ、チョイ待てってお前ら」
二人を引き剥がしてソフィアさんと目を合わせる。
「ソフィアさんは俺が買った。悪いが俺達のパーティーに入って貰う」
「…………」
ソフィアさんは状況が掴めずに混乱している顔だ。
「ソフィアさん宜しくね」
「宜しくお願いします~」
リアナとレミーナはソフィアさんの手を取りぶんぶんと握手をしている。
やれやれ。
また借金奴隷を増やしてしまった。
……でも野次馬達の身勝手な物言いに我慢出来なかった。そして夜逃げしたギルドボスは必ず捕まえて全殺しにしてやる!
俺達はブーイングをかましているゲスな野次馬達を押し退けて宿屋へと戻った。俺達の部屋についてもソフィアさんは何故かオロオロとしている。
「もう大丈夫だよソフィアさん」
「あの……、あの……」
「カインは優しいから酷い事はしないよ」
「ソフィアさん、この事は内緒なのですが……」
そう言ってリアナとレミーナが首元の服のボタンを外して隷属の首輪をソフィアさんに見せた。「あっ」と驚く。
「私達もカインの借金奴隷なの」
「カイン様は私達の借金も肩代わりして下さいました」
「えっ? えっ?」
「だから一緒だよソフィアさん」
「私達と一緒にカイン様に一生尽くしましょう」
待てレミーナ! 一生尽くしてどうする! やはり金を返さないつもりだな! この悪女め!
「か、カインさ……ん。わ、私……私……」
そしてソフィアさんは俺に抱き付くと、大きな声で泣き出してしまった。ギルドボスの夜逃げに始まり、不安、恐怖、女性としての人生の終焉……。様々な悲しい出来事が彼女の涙には込められている。
「って事をカインは思っているンだろうな~、あの顔は」
「全然違いますのに」
「うん。私はソフィアさんの気持ち分かるんだけどな~」
「私も分かりますわ」
「カインって本当に朴念仁だよね」
「ソフィアさん、嬉し泣き何ですけどね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます