ビーストのプロパガンダ放送
「やあ、元気かい。ガオー!周波数810、『ビーストニュース』の時間だ。」
「奴らだ。日防軍が帰ってきた。正確には、日防軍特殊部隊の不死隊だがな」
「連中は30年以上前、衛兵隊に三下り半を押し付けられて、それ以来傷心をいやすためか、タチカワとフッサの基地にずっと引きこもっていた」
「それが一体何の気が変わったのか?倉庫からデカブツを引っ張ってきた」
「ちょっと高いビルに上って、東の方を見てみろ。とんでもなくデカイ空中空母が浮いているのが見えるだろう」
「衛兵隊とヨリを戻したいから、俺たちはこんなビッグなものを持ってるぜ?ってな具合で、腰を突き出してアピールでもしているのか?」
「おいおい、勘弁してくれ、公共の場って意味、わかるかぁ?」
「まあ、冗談はさておき、実際はもっと悪いことが起きている。」
「連中は、都内各所のこれまで放棄されていた、日防軍の基地や駐屯地を攻撃して、奪還しはじめた」
「市ヶ谷、練馬、十条、ああそうだ、
「そして現在、このイルマ、元入間航空基地も引き渡しを要求されている。衛兵隊は現在交渉を続けているが、どうなることやらだな?」
「この交渉いかんによっちゃ、ビーストは野良猫放送になっちまうな?」
「さて、連中は野盗、なれ果て、品質保証期限の切れた軍用アンデッドを、片っ端から撃ち殺している」
「それだけ見れば、衛兵隊のライバル会社が現れただけって思うかもしれない」
「日防軍も衛兵隊も変わらないだろって思うか?」
「ちがうな。明確に違う!奴らがひとたび邪魔と思えば、連中の親兄弟や恋人も、近所で毎日犬を散歩している爺さんも、犬と一緒に抹殺リストの上に並ぶ」
「騙されるな、奴らは君を助けたりはしない!」
「奴らがこれまで何をしたきた?からっぽの国会議事堂を眺めて、また、ご主人様が棒を投げて、とってこいっていうのを夢見て、ノスタルジィに浸っていただけだ。」
「おいビースト、いつの間にお前、そんな子猫ちゃんになっちまったんだ?」
「いつから衛兵隊のプロパガンダを流すようになったんだ?そう言うリスナーもいるかもしれないな?」
「確かに衛兵隊だって、完全無欠な存在じゃない。見ようによっちゃ、圧制を敷いていることだって、俺は否定しない。むしろそうだと思っている」
「ここ1年で、お気に入りのポン酒の値段が4倍になっちまったからな。」
「俺がこれ以上健康になったら、あいつらの頭に噛みつきそうだ!」
「これだけは、なんとかしてくれ!」
「奴らがチョンマゲしたサムライよりはマシな圧制者とはいってもだ……彼ら衛兵隊が、俺たちの街のために働いた年月、それを知っているか?30年だ。30年だぞ?」
「俺の使ってる椅子はまだ3年だ。その10倍は俺の尻を守ってるんだ。ちょっと想像できないな?」
「ちょっと派手な装備をもって、いいオモチャを振り回しているからと言って、浮気するのはお薦めしないな。そういうやつは、自分に自身が無いから、ブランドもんの腕時計やらを見せびらかすんだ。」
「そうだ、不死隊の連中も、このラジオを聞いているかもしれないな?」
「だから最後にいわせてもらうぜ?よーく聞きな?」
「欲しいものがあるなら、そうすりゃいい。だがその場合――」
「この手の事態ってのは、二つの結果しかない」
「お前らが俺たちの死体を踏みこえるか、俺たちがお前らの死体を踏みこえるかだ」
「もちろん、その覚悟があって言ってるんだよな?」
「――では、音楽の時間だ。」
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