モドキハ語ル

 覚醒した僕は白い空間にいた。目の前には赤い耳のライカンが胡坐あぐらをかいて座っている。


 彼の毛並みは白くない、元は青みがかった黒だったのか。


「お座りなさい、まずはお礼を。貴方のおかげでようやく静かになりましたので。」


 彼は僕が面映おもはゆい時にするように、額を触りながらそう告げた。

 落ち着いた優しい声だ。白いライカンだったときの彼からは、まるで想像できない声。


「あ、どうも」


僕はどうやら立っていたらしい。座る、という行為を思い出してみる。そうだ、こうだった。


「何か変なことがありましたか?」


「いえ、こう……想像していた喋り方と違ったので。もっとこう、荒っぽい喋り方なのかと」


「あなたも大概失礼ですね。」


「すみません。」


「いえ、こちらこそ、いろいろとご迷惑をおかけしたようで」

「もはや、わらしべ一本ほどの時間も残っていませんので、手っ取り早くお伝えしたいことがあります」


「はあ」


「ネクロマンサーに会い、『アガルタ』を求めなさい」


「……?あなたはネクロマンサーではなかったのですか?」


「私は……もどきです。白いなれ果てと同じように」

「私は間違った方法で失敗しました。ですので、私の方法は引き継がないように」


「というと?」


「一人で何でもやろうとした、というところでしょうか」


「なるほど。」


「はい、最後に、貴方が連れているセントール、あれにはよくよく注意なさい」


「なぜです?ウララはいい子ですが」


「あの子は、私や貴方をひどく憎んでいます。正確には、私達の中にあるモノを――」

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