ワタシハ誰?
……そして私は、群衆が息を飲んでみつめるその中心にいた。
そこで全身を射貫くような光を浴びていた。
飛んでくる白球を受け止め、光線のような鋭さで内野の二塁手選手の方へ――
降り注ぐ砲弾を避けて私と仲間は爆薬筒を鉄条網に差し入れる、キャップを開いて点火薬を引き出すと胸ポケットにいれていたマッチで――
そして私は言葉を紡ぐ。
人々は私が言葉を発するその瞬間を、今か今かと待ち望んでいる。
私はこの国が抑圧から逃れ、平等と自由を求めた人々によって建国されたものであること、そしてそれに命をささげたものが――
私は
より多くの自我を記録し、自身に反映させていった。
――それは私をより強固にするためだった。
――それは私をより勇壮にするためだった。
――それは私をより気高くするためだった。
多くの私が私の中を通り過ぎ、
私の形を、機能を変化させていった。
しかし、その誰もが私を否定した。
――私を通り過ぎていく私は、
『おまえは私ではない』という。
『私』が記録した『ワタシ』たち。
その全てのワタシが私でないなら、
今、この時間に私を認識する私は誰なのだ?
今、この空間で私を認識する私は誰なのだ?
私を見ている私は何処にいる?
――誰か教えてくれ、私は誰だ……?
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