海の子

マアナは今年で13歳になる。


小さな島の小さな村の中で祖母と二人暮らしている。

両親は彼女が物心付く前に病気と海の事故で他界してしまったが、マアナには大好きな友達がいるので寂しくはない。


「ねえ、クーちゃん、今朝、北の港に船が着いたんだって。」

「」

「うん!行ってみようよ!」

「」


村人の目には、マアナが独り言を言っているように映るだろう。

でもマアナの瞳には確かに、オスのクイナ(飛べない鳥)が映っている。



「ああ、それは精霊だね。マアナが見えると言うならそうなのだろうよ。」

婆ちゃんは言う。

「私にもむか~しには見えたもんさ。」

「もしかしたら、いつかマアナを導いてくれるかもしれないねぇ。」


「ふ~ん。」

難しいことはよく解らない。でも、マアナには小さな頃からクーちゃんが見えているのだからそれでいい。



飛べない癖にクーちゃんは脚が速い。

マアナも負けじと海沿いの草むらを駆け抜ける。

髪をなびかせる潮風が心地いい。

小さな岩を飛び越える。


マアナは海が大好きだ!!





港に着くと、大勢の人たちに交じって、叔父のドウドが船から魚を降ろしていた。


「おお、マアナ、これから婆さんの所に魚を持っていこうと思っていたところだ。」

「一緒に行くか?」


木箱の中の魚に大好きなボラボラを見つけたマアナは二つ返事で答える。


「うん、行く!!」




ドウドと一緒に、婆ちゃんに魚を届けるため島の西にある家に向かう道すがら、

マアナはドウドに聞いてみた。


「ドウドは、海が好き?」


「まあ、、好きだよ。漁で暮らしているんだしな。」


「じゃあ、空は?」

「ドウドは海の向こうのさらに向こうの広いお空に行ってみたいと思ったことある?」



「、、、なんだか難しい質問だな?、、、そうだな~昔はそう思っていたかな。」

「でも兄さん達が死んじゃって、お前と婆ちゃんが残されて、、、

 いや、でも結局は本気じゃ、意気地が無かっただけなのかもな。


 おれは兄さんと違って特別な人間じゃないしな、、、」


そう笑って答えるドウドは、いつもより何か申し訳なさそうに、どこか寂しそうにマアナの目に映った。

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