第3話 縁がすごいよ

 「あ!ミヤビさん!」

カイが嬉しそうに声を掛ける。私との温度の差が…。


 「なんで、わたしの名前を知ってるの?」


 「ハルちゃんに聞きました!」


 「ハルちゃん……? ハルカ、と知り合いなの? ていうか喋れるの?

ミヤビにも見えてる? わたしの脳内友人が?


 「はい!人語を解して分かりあうことができます!」


 「とてもそんな見た目はしていないけど……」

何か不自然だけど…確かにミヤビにも見えて、話せるようだ。


 『ミヤビ、この人が見えるの?』


 「うん。 やっぱり他の人たちには見えていないんだ。

教室で突っ立っているを見た時は、わたしの目か頭がおかしくなったのかと思ったわ。

 ていうか、『この人』? 、人間なの?」

やっぱり変だ流石に人型をしているよ。


 「そんなぁ……ミヤビさーん」

カイがうるうるとした瞳でミヤビを見つめる。可愛い。見た目は。


 ミヤビの体が震える。 表情がこわばる。 強い嫌悪感を表す。

 「そ、そんな目で見るな。化け物!」


そ、そんな言い方…

 カイが悲しそうな顔で「うわーん」とかうめいている。

 

           「あ」

ん?


「ミヤビさんにはそう見えるのですね。なるほど」

パッと表情が戻る。なんだか楽しそうだ。


「しかし、二人も僕を認識できる人間と出会えるなんて、すごい『えん』ですね。

僕は人間の『価値』を食べる何かです。僕を認識できる人間に合うのは10年ぶり。

僕が食べる『価値』には善悪がありません。ミヤビさん、僕が何に見えますか?」


餓鬼魂がきだまよ!ハルカから離れなさい!」

ビシッと言い放つ。  がきだま?


「あー、なるほどそれはオバケですね。 悲しい」

知っているのか?カイ!


「てかっ、ハルカにはどう見えてるの!?」


『あ、あの……』

ちょっと可愛い男の子……とは言いにくい。恥ずかしい。


 「ハルカさん、僕をミヤビさんに紹介してください!」

懇願するような目で私をみる。


 「ハルカ、そんな奴の言葉を聞いてはダメよ!こっちに来て!」

力強い目が私を見る。



 前なら迷うことなくミヤビのところへ駆け寄っただろう。

だけど、私は昨日の事が心に刺さったままになっている。


 (また、迷惑かけちゃう。ミヤビは私のお世話係じゃないんだ)

 (友達じゃあなかったんだ……)

 

 「どうしたの?ハルカ?」

迷いが私を張り付けにする。 明らかに狼狽ろうばいしてしまう。 



 「餓鬼魂がきだま、ハルカに何かしたのか!?」


 「ふーぅむ」

カイは、少し考えるような顔をした後、やさしく微笑ほほえんで私を見た。

そのまま、視線しせんをミヤビに移し語り出した。


 「ミヤビさん」


 「ハルカさんは貴方に裏切られた……と思い込んでいるのですよ」

あ  まって


 「ハルカさんはミヤビさんのお友達が苦手なのです」

あなたの くちで それを言わないで


 「ミヤビさんがお友達に『ハルカは友達じゃない』という話をしているのを聞いてしまったのです」

私が 自分で ミヤビから聞きたかったのに


 「自暴自棄になったハルカさんは自殺も考えたのです」

私は 自分のことも 自分で言えない


「その死への願望が私との『縁』となり、貴方への『不信』になっているのですよ」

私は 死ぬことも 生きることも 言いたいことも言えない  なさけない



      「餓鬼魂!」


 「当たり前じゃない。 その通りよ、ハルカ!」

ミヤビは力強く言葉を吐く。


 「ハルカは、私の『姫』なんだ!」

ん?


 「そして私は『騎士』! 私の人生はハルカを守るためにあるんだ!」

なんか、恥ずかしいこと言い出した。


 「だから…たとえ地獄の鬼でも、ハルカを傷つけたら…!」


     「絶対許さない!」





 ミヤビがそんな事を思っているなんて知らなかった。

 高校に入ってからは避けられているのかと思っていた。

 恥ずかしいような、嬉しいような。


 『と、とにかく、この人は悪いものでは無いと思うよ。会話もできるし。

私も聞きたいことがあるから、また時間を作って……』

 時間……。


 『そうだ、授業!もう始まってるんじゃあ?』


 フフフ……。 カイが笑う。

 「褒めてくださいハルカさん。僕には「えんを操作する力を持っています」

 え?すごい。 特殊能力?


 「僕の力でここでの会話は下の階からは聞こえないはずです」


 『え?『会話は』? 時間を止めるとかそういうのは……』


 「やだなー、ハルカさん!そんな魔法みたいな事できませんよ!」

あはは、と笑う。



 私とミヤビは二時限めに遅刻した。

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