episode103 : 黄金の試練 中編
episode103 : 黄金の試練 中編
感想を述べるならば、――なんて呆気ない勝利であっただろうか。
いくらレベル差があって自信もあったとはいえ、もう少し手応えが欲しかった……というのが俺の意見だ。
もちろん、こんな形で解決したのなら、それに超したことはないのが事実ではある。それは、
「ゴロゴロゴロゴロ」
「……えっと、どゆこと?」
「懐いて、いる……みたい」
俺の目の前で起きていることを話そう。
サンダーレオン、俺たちを転移先で待ち構えていたライオンキメラ君たち。その中の二番手らしき魔物がお腹を上にして喉を鳴らしている。その瞳は、――構って欲しそうにこちらを見ている!
いやなんでや。
俺がやったことと言えば、初めに俺に突撃してきたこの中の王様的立場のやつを瞬殺しただけ。
――
「グルルルル」
「お前から相手ってわけか。――影渡り」
影の中から馬の四肢目掛けてジャンプ。合成されたと思われる四肢を切断。
「グァッッ」
――飛翔加速
そんで倒れるライオンを避けて上に旋回し、ライオンの胴体と首の繋ぎ目に短剣の――急所突。
「グ…………ァ」
ライオンに何もさせることなく、俺は瞬く間にキメラを殺した。
――
群れの長を倒したからなのか、それとも単純な恐怖からか、この部屋にいた全てのサンダーレオンが服従したのだ。その数、計15頭。
「で、今生きてる中で一番デカい偉そうな奴が、俺の前で寝転んでるってワケ」
「……どした、の?」
「あーいや、なんでもない」
このキメラ、馬の四肢にライオンの胴体と頭、三又のしっぽはたぶん……蛇?それも尾の方じゃなくて頭の方が三匹ついてる。そして左右にそれぞれ悪魔と天使の翼。
グリフォンの亜種というか、歪なようで整った歪さを感じる。
『従魔の誓いが発動しました。
個体名サンダーレオンとの契約が完了』
え?試練産の魔物は仲間にならな……くは無いか。紫のダンジョンから出てきた悪魔は仲間にできたんだし。
いや?けど、シンシアのとこにいた魔物は誰も仲間にならんかったよな?眷属は仲間にできないとかか?
だとすれば、こいつらはここで飼われていただけの一般魔物って考えるべきか。
……今更だが、従魔にできる条件がいまいち分からんな。
「でも、意志を持ってるのはこいつだけっぽいんだよな。他のやつも契約は出来たが……」
本人(?)の前では言葉に出しづらいが、正直この一匹を除いて合成してしまいたい。
『種族名サンダーレオンへの名付けが可能です』
へいへい。
つっても、もういい感じの名前ついてるけど。
「お前はレオンだ。よろしくな」
「グラゥ!」
目の前の長に名前をつける。
残り14体。……どうしよ。
『レオンから合成の許可が出ています
――合成しますか?』
もちろん"YES"だ。
『――従魔配合を発動します。
上級種サンダーレオンLv200→伝説級プラズマレオンLv250へ進化しました』
でた。また伝説級だ。
まぁ14体も合成すれば進化もするか。
それで、えー、ステータスはどんなもん……
【――レオンLv250――】
HP/15300 MP/4500
STR――480
VIT――685
DEF――325
RES――320
INT――340
AGI――530(+100)
◇所持スキル
飛翔Lv7 闇魔法Lv5 光魔法Lv5
魔力誘導Lv8 威圧咆哮Lv10 騎乗術Lv9
毒霧Lv8 吸血Lv6
◇称号効果
毒性麻痺 毒素を吸収すると体力が回復
合成守護 受けるダメージが半減
肉体統率 AGI+100
雷の咆哮 咆哮に麻痺属性を付与(味方には効果なし)
確定個体 意志が消えない
◇耐性
毒耐性Lv8
麻痺耐性Lv6
はぁ。ハイハイ強い強い。
……俺はもう驚かんぞ。しかしまぁ、俺の従魔の中ではメタと性質が近いかな。攻撃より防御が強いステータス。けど、メタの魔法無効と違ってレオンは"耐える"って感じだ。
相手の攻撃を受けつつ、相手に少しづつダメージを蓄積させ、こっちは回復する。メタにもブランにもクルーにも似ているけど、こいつにしかできないことがある。
「……え、と…………」
「おっと。真衣、こいつは俺たちの味方だ。一緒に戦ってくれるって」
「ほん……と?」
「あぁ。見ろ、構ってほしそうな瞳をしてるだろ」
「………………ん」
恐る恐る前に出した真衣の手に、レオンがゆっくりすり寄って頭を押し付ける。2、3回撫でたことで、真衣の緊張も解れる。
「他の従魔を呼べない以上、頼りにしてるぞ」
仲間を一人増やし、俺たちはこの部屋からの脱出を試みる。魔物を全部倒せば開くものだとばかり考えていたが、……そもそも倒さずにクリアしてしまった。
1度仲間になったこいつを倒したくは無い。
俺一人か、真衣だけなら影渡りであの鉄格子を抜けることもできる。外で鍵でも探してくるか?
鉄格子に近づいて、廊下の様子を観察する。変わらない壁と床が続いていて、鉄格子の横には見張り用と思われる椅子と机が1セットあった。
それ以上は何も無い。
俺は考えるのに疲れて、何となく錆びた鉄格子を握りしめ力を入れてみた。
「にしても、こんなボロい鉄格子でよくレオン達を収容してたよな。この程度、俺の腕力だけでも破壊できそうなものなの……に」
――ガコンッ
不思議に思っていた鉄格子は……あまりに容易く破壊できた。分断された上の部分が床に落下し大きな音を立てる。
「……あの、レオンさん?この檻、めちゃくちゃ脆いんですけど」
「………………キュゥ」
「可愛い鳴き声出しても騙されんぞ!!お前らさては、ここから逃げる気無かっただろ?!」
飼い慣らされていたとはいえ、こいつらは神の魔力の影響を受けていない。試練主の眷属以外は普通の魔物。明らか無理やり連れてこられた雰囲気を出しておいて、飼われている状況に満足してたな?
「なに?衣食住が揃ってて快適だった?サバンナの一日は過酷だったから?お前らにはプライドってものがないのか?!百獣の王の名が聞いて呆れるぞ!!」
レオンの評価が天から地に落ちる。た、頼りねぇ。
大層な尻尾やら翼を携えて、中身はそこらの
「…………まぁいい。いや、よくはないが今では無い。とりあえず、先に進んで
ツッコミに疲れ、意識をダンジョンの先に変更させる。ここが何階かも分からないから、できるだけ慎重に動かなければ。
賢能、従魔の反応はある?
『解答。広域鑑定を妨害する魔法を探知。個体名ハクの反応も探知しましたが、罠の可能性が高いです』
妨害か。なら、アイツらも俺の事を見つけられてないだろうな。……ボス部屋で集合にでもしよう。マキナ辺りは同じこと考えてそうだし。
兎にも角にもこの場の移動が最優先。階段でも扉でも、この状況が進展しそうな場所を探そう。
真衣とレオンを連れて、俺たちは松明の明かりだけが漂う通路を進むことに。
罠の存在にも近づくまで気がつけないから、いつも以上に慎重に歩を進める。
しかし。魔物も罠にも遭遇しないまま数十分が経過した。通路の様子は相変わらずで、ループの可能性も考えたが壁に付けてきた印が無いからその線は薄い。
「…………まさか」
俺は低い姿勢を止めて勢いよく振り返る。すぐ後ろを付いてきていた真衣が俺のお腹に激突するが、今は気にしていられない。
「レオン!お前、ここに連れてこられた時、長い通路って通ったか?」
俺は叫びに近い声でレオンに問いかけた。
返答は、……NOだ。
首を傾げて
「くっそ、やられた。初めのあの部屋!あそこはスタートじゃない、――ゴールだったんだ!!」
だって誰も思わないだろ?転移先がゴールだなんて。
「…………はぁ、戻ってこれた」
「ん……、それ、で……、どゆ、こと?」
「上を見てみろ」
俺は真っ暗で何も見えない頭上を指さした。
「真っ暗で何も見えない。つまり、
「…………ボスの、へや?」
「それは分からない。構造的に地下だろうから、単純に考えれば1階に繋がってそうだけど」
そこまで単純じゃないだろう。
何せ、1階は既に何周も探索した階層だ。こんな大穴の部屋は見ていない。出口はもっと上……もしかするとボス部屋の近くかもしれない。
待て?
1箇所だけ、大穴では無いけれど、
……落とし罠の先は、もしやここなのか?
「上に向かって飛ぶ。途中に横穴があればビンゴだ」
この穴は間違いなく3階以上の上層まで繋がっている。
――飛翔加速
――飛翔
俺たちはその仮説を証明すべく、狭い部屋の高い暗闇目掛けて飛び出した。
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