第12話 魔女さんに会いに

 びゅーんと、昨日の森へと今日も飛び立つ。もちろん真後ろにはレイモンドがいて、同じ杖にまたがっている。


 昨日はあれ以上彼に絆されたくなったので、疲れたから続きは今日に持ち越しということにした。

 入浴や着替えをメイドさんたちに手伝ってもらうのは恥ずかしくもあったけれど、彼らの仕事を奪ってはいけないとレイモンドに言われたのでお願いした。


 今日も私は、昨日とよく似た水色のロリロリワンピースを着ている。どれにいたしますかとメイリアたちが持ってきた服は全てそれ系だっだ。どれもレイモンドがデザインに口を出したという。

 私の顔を色んな人に覚えてもらうには確かに有効かと思って文句も言わずに着てしまった。


 まるで私がロリータ趣味になってしまったかのようだ……。


 もう少し体にフィットするようなドレスは、体が育ちきって体型が変わらなくなってから用意してくれるらしい。


 ……前以上にツルペタだもんね、コイツのせいで。


「今なら二人きりだよ。何か聞きたいことは?」


 男の子の声がすぐ後ろからするというだけで、胸の鼓動が速くなってしまう。

 

「今は景色に集中したいかも。綺麗だし」

「分かったよ」

「あ、でも魔女さんってどんな人? 優しい? 怒らせたら殺されちゃう?」

「え……そんな物騒な心配をしていたの。大丈夫、人の世界にそこまで干渉はしない。怒らせても何も起きないよ。……たぶん」


 たぶんって……。つまり怒らせたことはないのかな。


「いつものアリスらしく話して大丈夫だよ。ものすごく変な存在だから」

「あんたより?」

「俺は別に変でも変態でもないと思うんだけどなー」

「自分を過大評価しすぎだね」

「アリスが過小評価しすぎているんだよ」

「自分の寿命を削って人を貧乳にしておいて……」

「しつこいなぁ、一年経てば戻るよ。あんまり言っていると見たくなってくるよ。ね、触っていい? あるあるってフォローしてあげるからさ」

「触ったらぶっ殺す。魔法使えるようになったら、踏み潰す」

「じ、冗談だよ。踏み潰す魔法って何……」

「え……と、象に変身とか?」

「簡単に逃げられると思うけどな……。そもそも変身なんてできないよ」


 変身……できないのか。「変化の術!」とかありそうなのに。……それは忍者か。ファンタジーなら……えっと……。


「変身がないなら幻覚とかはないの? それだと潰せないか……催眠で眠らせて大きな岩で潰すとかならできるの?」

「怖いよ……。変身も幻覚も催眠もないよ。実際にそんなことができたら誰の子か分からない子供だらけになってしまう。世の中の女の子がヤラれ放題じゃん」

「死ね」

「おかしいなー、説明しているだけなのに」

「罪悪感があると使えないんじゃないの?」

「本当に悪い奴は罪悪感なんて持たないよ。自分の子種をばらまくことに使命感を持った奴がそんな力を持ったら、色んな家の旦那に化けたり眠らせて人妻を貪りほうだ……」

「安心してきた。あんたのこと、好きにならずにすみそう」

「説明してるだけだからね!?」


 もう少しまともな説明はできないのか。


 アホな会話をしているうちに、ものすごーく大きな木の側へと降り立った。


「すごい……前の場所とは違うんだね」


 他の木とは趣が違う。御神木といった雰囲気で、周りの木がまるで神を慕う信者のように見える。


「ああ、こっちが魔女さんの根城だ」


 手を引かれて木の側に来ると、突然幹の中央に扉が現れた。


「入るよ」


 彼がノックをして――、扉がひとりでに静かに開かれていくのを見守った。

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