第10話 ご両親への挨拶
夕食はレイモンドと一緒に食べたものの、そんなに寛げはしなかった。給仕をしてくれる人もいるので「なんで髪の色が違うのよ!」とも責められない。
彼の身の回りのこと……ご両親についてや、学園入学までは学校ではなく家庭教師から教育を受けていること、両親と視察へ同行する日もあることや入学試験の内容など、当たり障りないことを聞いて終わった。
ソフィのことも聞いた。可愛いねと言ったら「俺もいきなり今日ツインテールになっていて驚いたよ」と苦笑していた。どうやら私が話しかけやすい雰囲気でよろしくと頼んだら、彼女の判断でそうなったらしい。
そうして私は今、レイモンドと一緒にご両親の待つ部屋の前にいる。
き、緊張する……!
実際にお金を稼いでいるのはご両親だ。私の今後の生活費や学費を負担するのも全てご両親。失礼がないようにしないといけない。
学校で尊敬語や丁寧語、謙譲語も習っていてよかったと思う。変換はされているのだろうけど、あっちで覚えたからこそ、置き換わってこっちでの知識になっているはずだ。
よし、頑張ろう!
「ノックするね」
レイモンドの確認に小さく頷いた。それを見て彼が扉を叩く。
「入れ」
怖そうな声……。
「失礼します」
扉を開けると、彼の父親ローガン・オルザベルが座っていた。レイモンドと同じ金髪だけれどガタイがいい。本当に前線には出ていないのかと疑ってしまう。
隣に立っているのは母親のイザベラだろう。夫の仕事を手伝っているらしい。流れるような水色の髪が印象的で、背が高くてスラッとしている。
「森より彼女を連れてまいりました。名はアリス。名字はバーネットとして皆には紹介しました」
「そうか、期待している。ここでは好きにしていい。レイモンドを頼む」
頼むとか言われちゃったよ……。
「こ、こちらこそ部屋までご用意していただき、ありがとうございます。アリスと申します。あの……ご迷惑ではないでしょうか」
「いや、レイモンドが勝手に連れてきたと聞いている。息子がすまなかった。私たちは不在であることが多い。不便があったら、いつでも息子に言うといい」
「ご厚意に感謝します」
このお父さん、イカつくて恐いなぁ。優しいことを言われているはずなのに、逃げたくて仕方がないよ。
「そんなに固くならなくていいのよ、アリスちゃん」
彼のお母さんが浮かれたような軽い足取りで、私の側まで歩いてきた。背筋がピンとしていて立っているだけで絵になる。
「私たちのことは本当の親だと思っていいの。私たち、子供はレイモンドにしか恵まれなくて……娘もほしいと思っていたのよ。ずっと待っていたの。歓迎するわ」
両手を握りしめられて、ドキドキしてしまう。
レイモンドの父親がため息をついた。
「身の振り方は学園卒業までに考えればいい。私たちは当然歓迎する。今日は疲れていることだろう。早めに寝るといい」
「そうね、アリスちゃん。学園に入学するためにも、レイモンドに付き合ってあげてね」
「は、はい。ありがとうございます」
身の振り方……レイモンドと結婚しない未来もあると考えているのかな。
それはありがたいけど……。
「それでは、失礼しますね」
レイモンドが私たちの様子を見て切り上げ、一緒に部屋を出た。
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