1352年 議会

国家および組織(1352年時点)

○ガロア王国

 大陸西部を中心として拡大した軍事強国。

 封建制によって諸侯に軍務を負担させ、出征による拡張で入手した属州からの税で国を富ませていたが、属州で相次ぐ反乱と野盗と化した星雲軍の残党による略奪により衰退の一途を辿る。

 現国王はアルノワ朝のテオダルド3世。主人公オレリア・アルノワの実父で、戦上手の名将だが内治に疎い。


 1346年の「聖堂街の乱」で生じた政治的衝突により、故人であるオリアーヌ妃の洗礼記録・婚礼記録が削除され、第一王子シャルルが王位継承権を失う。

 1349年、教会の後援を受けて聖都シエナの門閥ベナドゥーチ家からマロツィア妃が迎え入れられる。マロツィア妃を中心とした教会派が台頭し、諸侯の統制にも乱れが生じる。

 1350年、レフコス王都の大火をきっかけに、南部属州を騎士として流浪していたシャルルが国の行く先を憂う同志を率いて王位を簒奪する準備を進める。



○レフコス王国

 大陸から海を隔てた西方の島国。

 聖都シエナから遠い田舎とされていたが、オレリアが立ち上げた出版社「アルバス・カンパニー」の刊行する時事情報誌『月刊・同時代』、そしてその朗読を聞くことができるコーヒーショップが起点となり、文化的最先端に躍り出た。

 勇者召喚の儀が執り行われる祭祀場が存在することでも知られ、星雲軍の旗印として勇者を求める教皇派にとって押さえるべき要衝と目されている。

 現国王はエルメット朝のオーウェン2世。リシャールの父。


 勇者の血統を取り入れることによって王権を強固なものにしており、統治は安定している。しかし、それは同時に「勇者が召喚された際は王位を勇者に譲らねばならない」という伝統と背中合わせになっている。

 また、聖人である勇者への盲信から王の負担が大きくなっており、議会である星室庁が機能を失っている。星室庁の復権が第一王子リシャールの目標。


 ミトラス教の教皇派と枢機卿派が対立関係になったことで抗争に巻き込まれており、治安の悪化や物流網の麻痺が進みつつある。

 また、諸侯の中でも教会と手を結び、第二王子のレオを擁立する派閥が生まれており、内外に不安を抱えている状態。

 1350年、レフコス王都の大火で34人の市民が死亡。表向きは雪賊の襲撃とされるが、実態は教皇派の暴走によるものである。



○ドゥムノニア

 レフコス島北部のハレグモナス山以北に隠れ住む氏族。

 痩せた凍土には作物が育たず、野盗に身をやつすことで生存している。

 勇者と魔王の戦いが繰り広げられていた時代にはレフコス王国とドゥムノニアは勇者の元で共に戦っていたが、戦後レフコス島最北端の不毛な凍土に追いやられた。現在は雪賊と忌避される。

 レフコス島北部の鉱山資源が未開発だった主たる要因だった。近年はホプトン男爵領が傭兵団「赤火の虎」を護衛に回すことで開発に成功した。

 マチルダ・ロズブローク(旧姓エルメット)が個人的に物資支援を行っており、オレリアはマチルダと「ドゥムノニア人が飢えることも凍えることもない生活を実現する」と契約している。



○ミトラス教と聖都シエナ

 大陸南東部の半島を中心とするミトラス教の聖都。

 太陽神であるミトラスの恩寵を最も強く感じ取れる色である黒を尊い色としており、都市内の建材も黒が好んで使われている。聖職者の法衣も原則は黒である。

 法王として教皇が君臨しており、行政機関として教皇庁が置かれる。教皇庁の主な役職は使徒の末裔を自称する門閥「八聖家」によって独占されている。

 現教皇のペドロ7世は教皇選出会議ではなく神託によって選ばれた存在であり、平時は権力闘争に明け暮れている八聖家の大半が教皇を中心として連携している。


■教皇庁の部門

・内赦院

 教皇の名のもとに施される聖職者への恩寵を司る部門。

 破門された聖職者の赦免、贖宥状の発行を主な業務とするほか、神の赦しを必要とするほどの悪事である工作活動に従事する。

 所属する聖職者は聴罪師の地位とタリスマンが与えられ、懺悔を聞き届けることで神に代わり罪を赦す奇跡を行使することが可能になる。

 古くから汚職の温床であり、教皇派の工作員は多くが内赦院に属するが、市井の人々は聴罪師が懺悔を聞き届けてくれることから深い信頼を寄せている。

 多くの罪深い聖職者を見てきたためか、甘言を弄して聖職者を堕落させる者も確認されている。


・施与局

 貧者の救済を目的とする部門。

 炊き出しや無料の診療、金銭の給付を行うことで知られ、最も高潔な聖職者が在籍するとされる。

 第二勇者ヒロ・フユハラが設立に深く関わっており、彼の残した警句「救われるべき者に救いの手を。遍く照らす主の光がなお及ばざる陰りにこそ、我が魂の光あれ」が門に刻まれている。

 施与局の聖職者は救護のタリスマンを与えられ、救護司祭、救護司教、救護大司教と出世していく。施しのための小銭入れを与えられており、必要と認められた者に施すことが許されている。

 主に痛みや苦しみを取り除く奇跡を行使するが、治癒の奇跡を行使するためには聖療院での研修を受ける必要がある。

 枢機卿の直轄であり、各地の乞食を用いた情報網の構築に一役買っている。

 また、施与局の下部組織には医療の聖職者が本格的な治癒の奇跡を学ぶための聖療院が存在する。


・聖療院

 施与局の下部組織として存在する医療訓練施設。

 治癒の奇跡を学ぶことができる唯一の機関であり、聖療院での研修を終えた者はその証として第二勇者の聖具を模した隕鉄の眼鏡を与えられる。


・文書局

 ミトラス教の歴史上保存すべき文書や裁判記録、言行録の保存・管理を行う部署。

 保存対象には禁忌の知識も含まれており、その中から勇者のもたらした「銃の設計理念」が流出した。


・カペラヌス

 教皇の世話人として知られる侍従およびその合議機関。

 シエナのイシドルスを筆頭に教皇の代弁者として言葉を伝える役割を担う。


・異端審問官

 信仰に背いた聖職者や異端的崇拝を掲げた者を、裁判を経ずに処刑することを許された超法規的執行機関。

 白い法衣を異端の血で黒く染めることで知られ、恐怖の象徴として語られている。

 枢機卿の私兵として使われるが、残虐性が暴走する傾向にあり、現在は枢機卿の工作員ベルナールによる矯正が行われている。



■八聖家

・ベナドゥーチ家

 八聖家でも最も勢いのある門閥。月桂冠に星の紋章で知られる。

 長い歴史の中で築き上げた財産を活かし、銀行業を営んでいる。

 ガロアに嫁いだマロツィア妃は現当主の娘。マロツィア妃が信仰の名のもとに召集した騎士たちによる軍「星雲軍」には出資を行っていたが、星雲軍の大敗と教皇派の暴走から破産を警戒し、慎重な姿勢を見せている。

 次期当主と目されるフーゴ・ベナドゥーチはシエナ教皇庁内赦院の聴罪師として活動しつつ、教皇派の工作員として一時期はレフコス島にも潜入していた。


・カエターニ家

 枢機卿シエナのノワイエの生家。

 八聖家の中で唯一明確に教皇派と対立し、枢機卿の責務として暴走を食い止めようとしている。

 また、支配下の孤児院・修道院で多くの死者を生じさせる非人道的な実験を行っており、人造勇者・聖女の生産の主導者でもある。

 ノワイエは自らの工作員を送り込んでガロア宮廷内に聖堂街を構築させた黒幕であり、聖餐主義者や異端審問官とのつながりもあるなど、不審点が多い。


・セルヴィティア家

 教皇の世話人カペラヌスであるシエナのイシドルスの生家。

 教皇派の中でも穏健派に位置し、暴走を食い止めようとしている。


・アラゴン家

 現教皇ペドロ7世の生家とされる。

 没落しつつあった家系だが、神託を受けた教皇の生家という新たな名誉を得たことで復権を目論む。教皇派でも随一の過激派。

 美しく聡明な娘フアナをガロア国王テオダルド3世の妻にしようとしていた。フアナ自身も己を「後のガロア王妃」と公言していたが、テオダルドが縁談を蹴ったことで発狂。

 フアナは自らが得るはずだった地位を奪った田舎娘のオリアーヌが毒殺されるよう手配し、さらには教皇派の暴走を扇動してオレリアを死に至らしめようとした。



■その他の教会組織

・星雲軍

 マロツィア妃が教皇派の後援を受けて召集した軍。

 信仰の名のもとに集う騎士を中心として構成されており、ベナドゥーチ家が融資を行っている。

 ガロア南部の異教徒を征伐し、ミトラスの信仰を広く知らしめることを目的としていたが、第一陣は大敗。生き延びた騎士の多くは野盗となり、ガロアの南部属州を荒らしている。

 現在召集されている第二陣は鉄の掟によって統制され、ガロア南西部の沿岸地域を進軍中。


・聖餐主義者

 ミトラス教の中でも異端的信仰を持つ教派。

 神の光は全てを照らすものであり、神の恩寵を秘匿することはその意向に反するものであるとする探究者。ミトラスの空を強く意識した蒼の法衣を纏う。

 禁忌や異端といった形で秘匿がなされることに強い反感を抱いており、信仰のためであれば自身の身体すら実験材料とする。

 かつては自分たちの隠れ里に隠棲していたが、枢機卿が薬物を用いて囲い込みを行った。枢機卿の支配を逃れた一部には教皇派に与している者もいる。



○北方都市群

 大陸北部の半島から河川沿いに広がる商業都市群。

 特定の統治者を持たず、緩やかな横のつながりと評議会による結束で知られる。

 都市群の盟主である商業都市シグヴァルディアが事実上の首都。


 シグヴァルディアの大商会であるロズブローク商会はレフコス王家から嫁いだマチルダ・ロズブロークが夫とともに共同で商会長を務めている。

 マチルダはオレリアから受け取った紅茶についての情報で探検隊を東方へ遠征させ、富を築いた。また、「オレリアがドゥムノニア人を救う代わりに、マチルダはウーティスを守る」という契約を交わした。



○南海

 ガロア王国南部に存在する内海。

 異教徒の海上交易が盛んであることや、南方大陸への進出ルートであることから、ガロア王国繁栄の要として征服が進められていた。

 聖墓ネストリアへの道が拓けてしまうこと、ガロア一強の状況が望ましくないと判断されたことなど、様々な理由から南海への出征は教会の妨害に遭っていた。

 最終的にガロアによる出征は1346年の聖堂街の乱で凍結となった。 

 現在は星雲軍が教皇の直轄領とすべく進出を目論んでいる。



○聖墓ネストリア

 魔王が封印される都市遺跡。

 大陸南部にあるとされ、かつては魔王が治める都市だった。

 現在も生きたまま磔刑に処されている魔王を封印し続けるため、教会が召喚した勇者によって結界が張られている。結界を更新する際、勇者は消滅する。


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