シューティング・スター

クロノヒョウ

第1話



 ここ、天の川に住む住人エトワルの休日は火曜日だけだった。


 銀河の中央を流れる大きな川に星屑をちりばめる。


 それが天の川での仕事だ。


「よし。今日はこれで終わりにするか」


 星屑の入ったカゴを背に、一仕事終えたエトワルは川のそばの自宅に帰った。


 キラキラと浮かんでは光る星たちの間にある漆黒の川。


 その川で自分がちりばめた無数の星屑が可愛らしく光る様子を見ながら寝酒を飲むのがエトワルの楽しみだった。


「今日も綺麗だ……」


 エトワルは満足そうな顔をして眠りにつくのだった。



「エトワル、居るかい?」


 次の日、エトワルの家に訪ねて来たのはメテオールだった。


「やあメテオール。ご苦労様」


 メテオールはエトワルがちりばめる星屑を集めてはこうやって持ってきてくれていた。


「たくさん拾ってきたから、こいつらも川に流してやってくれ」


「うん。助かるよ。いつもありがとうメテオール」


「礼を言うのは俺の方さ。星屑は放っておくとブラックホールにのみ込まれちまう。エトワルのお陰でこいつらはこうやって綺麗なままで輝いていられるんだからな」


「いいや。助かってるのは俺の方だよ。この漆黒の川も喜んでくれているし、何よりも俺が楽しい」


「ハハッ、そうだったな。エトワルはずっとずっとひとりぼっちで寂しかったんだものな」


「ああ。年に一度、カップルがここに落ち合いに来るけど俺のことなんて見向きもしないさ。でも今はこの星屑たちのお陰で寂しくないよ」


「うん、こいつらが役に立ててよかったよ」


「ああ。明日からまた頑張れる」


「そうか、今日は火曜日だったな。休みのところ失礼した。俺もまた銀河の星屑を集めに行ってくるよ」


「うん。気をつけて。また待ってるよ」


「ありがとう。じゃあまた」


 メテオールは笑顔でエトワルに手を振り天の川を出ていった。


「さてと。俺も泳ぐとするか」


 エトワルの休日の楽しみは、この星屑たちでいっぱいの川で泳ぐことだった。


 勢いよく飛び込むとエトワルはスイスイと遥か大きくて果てしなく長い川を優雅に泳ぎだした。




「ママ、あれ見て!」


 天の川の近くの星で、小さな子どもが空を指さしていた。


「なあに? 坊や」


「流れ星だよ!」


「まあ! 本当! 綺麗ね……」


 親子はいつまでも空を見上げて微笑んでいた。



 火曜日になると見えるひとつの美しい流れ星。


 それは天の川で優雅に泳ぐ休日のエトワルの姿だった。




          完



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