えすけーーーぷ
父の再婚をきっかけに私達は姉妹になった。私が物心つく頃には母親と呼べる人はいなかった。なので兄弟も姉妹も無かった。一人だった。髪の色が皆と違うので仲間はずれにされた。私はどこにいても一人だった。だけど母になってくれた人は私をとても可愛がってくれた。姉は遠くから私を見ていた気がする。父が私達の仲を近づけてくれた。頼れる父親だけど尊敬しているかといえばそういうことも無い。小説家だからか家にいる時間も多く、仕事していない時は私達とのコミュニケーションのきっかけを作っていた。それがあったから私は姉と仲良くなれた。まだまだ知らない事は多い。もし父がいなかったら私達は一緒に住んでなどいないだろう。
世界はあの日から変わった。
姉とキスをした。それ以上でもそれ以下でもない。 理由は友達がしていたから、私がしてみたかったから、それ以外の理由はない。姉はきっと私の事が好きだから。そうじゃ無かったとしても姉妹だから大丈夫だと思う。
そっと唇を離すと、固まったように姉は動かない。姉妹とはいえ元は別々の家庭の、別々の人間だったからなのか今私はとても緊張している。
目をぱちくりさせ何も言ってこない。顔を見ると頬が赤くなっていて、耳も真っ赤だった。こんな姉を見たのは初めてで、とても可愛く思える。実際とても可愛い。私の姉は可愛いのだ。
まだいけそうかな。そう思った時には姉はペタんと床に座り込んでいた。四つん這いでにじり寄って耳元に、
「もう一回、してもいい?」
なぜこんなリップサービス(これじゃあ二つの意味になりそうだけど)をしたのかはわからない。無意識でこうしていた。どうせ拒否されたって私の答えは変わりはしない。姉は目をつぶって待っている。やはり私は姉の事が分からない。
何かで見たキスの仕方をしてみる。意外と難しい。でもこれって……。
姉の方から顔を離してきた。
「杏奈、これは、ダメ……」
顔を真っ赤に染め、瞳には涙がある、気がする。
ドクンと心臓が鳴った。
もっとしたい。
もっとその顔をみたい。
もっと――いじめたい。
そんな感情が私のどこからか湧いてくる。この人は私に逆らえない。お風呂から上がってまだそんなに時間は経っていないはずなのに、私と同じシャンプーやらボディソープを使ってるはずなのに、全然違ういい匂いがする。
いつもの衝動とは違うのに、首筋に噛み付く。傷をつける訳じゃなくて、甘い、なにかを吸う様に。私の物にしたいとか、そういった訳じゃないはずなのに誰にも渡したくない感じがする。
不定期に訪れる夜みたいに、姉の呼吸は荒くなってきた。私は一切何も感じない。
ただ心臓の音がうるさい。それだけがこの場を邪魔している。
もしかしたら、姉が私の事が好きな様に。
私も姉が好きなのかもしれない。
私達はこの感情から逃げられないのかもしれない。
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