第5話 凶報
『昼の話の続きがしたいんだけど、都合付いたら連絡くれ。電話するわ』
夕食と入浴と宿題を済ませて、いい感じに月が上った時間帯に親友がメッセージを飛ばして来た。
今いいよ、と返信すると数秒後に携帯の画面が着信表示されたので、応答した。
「もしもし、聞こえてる?」
『おー、聞こえる聞こえる。そっちは?』
「問題ないよ。それで話ってのは?」
『……実はその、
彼の言う
「
『ああ。
「あー、その光景がすぐ目に浮かぶよ。それで出て行っちゃったわけね」
そのため、
『それだけなら、まぁ、まだいいんだ。けどさ、
「ふーむ。どこ行ったか聞いてる?」
『いや。何人か心当たりはあるんだが、その子たちとは連絡先交換してないしな』
中学生ということもあって何日もホテルやネカフェに宿泊するお金がないのか、家出した際に彼女が向かう先は基本的に彼女のお友達である。僕も
「……となると、今僕達が出来る事はその子たち含めて聞き込みするくらいだろうねぇ。
『ああ。察しが早くて助かる。おとんもおかんもいつも通りすぐに帰ってくると思ってる
どちらかと言えば心配し過ぎと思わなくもない。
しかし、なんの事件にも巻き込まれていないとも限らない。それなら、その備えを講じようとしても不思議ではない。
「そうだね。ただ、本当にそうなるとは思いたくないけど、その時は依頼料である情報も用意しておかないとね」
『何言ってんだ、丁度おあつらえ向きなのがあるじゃねぇか』
「え?」
『通り魔事件。この辺じゃ、これ以上ない格好のネタじゃねぇか』
胸の中がざわめき、今の一瞬で想像したくない未来が頭をよぎった。唇を
「ねぇ、
『悪いことってなんだよ。大丈夫だって、本当にヤバそうになったらそそくさと逃げて、別の事件を調べるさ』
僕が用いた表現がちゃんちゃらおかしいと感じたのだろう、電話口からせせら笑いが聞こえた。しかし、
(おかしい。何故『
僕が
「
(くそっ、こんなときに。間が悪い)
「ごめん
僕は親友にまくし立てるように要件を伝えた。おいちょっと、と電話口から不満気な声が聞こえたが、それどころではない。
すぐに服を着替えて、玄関を出た。
「それで、どっちの方角?」
相棒に小声で居場所を尋ねる。仕組みは分からないが、【顕現】せずともトーラスとはコミュニケーションを取ることが出来る。
異様な物体を人目に
「ここから南西に約二千二百メートル先だな」
「今日は少し遠目だね、急ぐか」
自転車にまたがって、示された場所へ移動し始める。後一、二分でおおよその場所に着きそうとなったその時に、トーラスの声が聞こえた。
「むむっ、これは」
「どうした?」
「【アンチ】の反応が消えた」
「え? どういうこと?」
「そのままの意味だ。今し方、【アンチ】の存在が感知できなくなった。何かが起きている。気を引き締めた方がいい」
少しして曲がり角を曲がるとただ広い場所が開けた。近くに倉庫があり、人出が少ないであろうその場所に化物の姿が見えた。正確には化物の遺体であった。異常事態はそれだけでなかった。見知った先客がその近くで佇んでいた。
「来たわね」
「・・・・・・
「君が来るのを待っていたのよ。少しの間、これを泳がせた甲斐があったわね」
「どういう・・・・・・」
質問を述べながら、僕は脳内を活発化させた。彼女の言いぶりから考えるに、僕達をおびき寄せようとしているようだった。
「どうも私達は、釣られてしまったようだな」
トーラスも彼女の意図を掴んだらしい。彼女は、どうしてそんな回りくどいことをしたのか。僕だけに用があるのなら今でなくも学校でもなんでも話しかけてくればいい。
彼女は僕が来るのを待っていたと言ったが、正確には僕だけじゃない。僕の相棒にも用があるのだ。
彼女は一般人じゃない。死体となって転がっている異形の存在がそれを物語っている。
「
「お願い……?」
普段なら彼女の言うお願いがなんであろうと叶えてやりたいと思っていただろう。ただし、今回は状況が違う。警戒心を最大レベルにまで引き上げて、続きの言葉を待つ。
「君が持っている
「やっぱり僕の相棒を知っているんだね」
「白を切られると思っていたけれど、案外すぐに白状してくれるのね。要求を吞んでくれる気にでもなったかしら?」
「理由も無しに渡すとでも?」
「理由ね、……理由ならあるわ。数ヶ月前に
「預言ねぇ……。まさか
「そこら辺の
「……ちなみに、渡した後はどうするつもり?」
「もう二度と使用できないくらいに破壊するつもりよ」
非常に困った。素直に要求を
「よし、それじゃあ、こうしよう。今後は行動を共にして、
「ふーん、つまり君を上手く利用しろ、そう言いたいわけね」
「
「そう。なら・・・・・・、セカンドプランね。ここで君を壊す!」
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