26話 救世なき巣
朝から酒飲みながらイヤホンしてsyrup16gのライブのBlu-rayを見ている。syrup16gは俺がこの惑星で1番好きなバンドだ。(昔から何回も書いてるが)
俺はsyrup16gの曲に支えられながら今まで生きてきた。学校に向かう電車の中、会社に向かう車の中、どこにも行けない家の中、俺はいつもsyrup16gの音楽を聴いて頑張っていた。一見暗い音楽に聴こえるが、その暗いことを叫んでくれる人がいるという事実だけでも俺は救われていた。俺の気持ちを代弁してくれていると思った。そんなバンドは生まれて初めてだった。
イヤホンを外してみたら、下の階からはおじいさんがカラオケをしてる音が聴こえてきた。彼は演歌を歌っている。俺の部屋は3階建てアパートの2階であり、上からも下からも音がする。
ロックにしろ演歌にしろ、歌は良いもんだ。俺もよくギター弾きながら一人で歌ってそれを録音して自分一人で聴いて楽しんでいる。
今更になって、syrup16gのライブのチケットを買わなかったことを後悔し始めた。買っとけばよかったなあ。ライブ行きたかったよ。
syrup16gの他には、それでも世界が続くならっていうマイナーなバンドにも救われてきた。特に「参加賞」って曲が1番良い。ユーチューブにPVがあるのでよかったら見て。初めてPVを見た時俺は泣いた。
他にも山ほど俺が救われたバンドはあるのだが、書くと長くなるから書かない。
発達障害と精神病のある俺には、この世はとにかく生きにくかった。
とんでもなく生きづらい。
好きな女の人から「●●さんは甘えてる」とか「屑」だとか言われたことがある。
実際俺は、俺の抱える発達障害や精神病を、楽に生きるための“免罪符”にして甘えている屑なのかもしれない。
俺が障害年金を貰って細々と生きていることも甘えなのかもしれない。
世の中もっと苦しんでる奴は山ほどいる。
でも俺はそれを実感できない。俺の視界は俺の部屋しか捉えていないからだ。強いて言えばネットで色んな世界を知ることはできる。
ちなみに俺はその女の人からは一方的に絶縁された。
俺の脳は生まれつきバグっているから、感じ方がおかしい。誰かと同じ景色を見たって同じことを考えているとは限らない。他人にとっての“りんご”が俺にとってのりんごとは限らない。そんな現象が度々起こる。やはり発達障害者と定型発達の人の間のズレは免れることができない。
最近、よく高校時代の夢を見る。
高校生でいることが、野球部でいることが、苦痛で仕方なくて、いつも高校から逃げようとしている。そしていつも野球部の先輩に捕まって殴られる。
実際の俺は、高2から不登校になった。
高校は本当に嫌いだった。
夢から目が覚めると、自分がニートであることに安心する。(たまにバイトするから完全なニートではないのだが)
昔から俺は他人とはズレているのが普通だった。
ちゃんとしてるのにいつもおかしくて、どうしようもなかった。
いつも他人からの評価は「変な奴」「頭のおかしい奴」だった。
今では別に何とも思わない。それが俺という人間だと受け入れている。
だが、子供の頃は、どうしてこんなに他人が怖いのか、ずっと悩んでいた。頻繁に父親に暴力を振るわれていたせいかもしれない。とにかく人が怖くて仕方なかった。
俺はたまに優しい奴だと言われることがある。
俺は別に優しくしてる自覚はない。
だが、他人から見て俺が優しいのであれば俺は優しいのだろう。
その優しさすらも捨ててしまった時、俺は犯罪者になってしまうのかもしれない。
だから俺の持つ優しさだけは何があっても殺してはいけないと思っている。
俺はマイノリティとして生きてきたから、マイノリティの気持ちが分かる。
俺はマイノリティとして生きてきたから、無差別殺人犯の気持ちが分かる。
しかし俺は他人を殺したりしない。
他人に恨みも関心も無いからだ。
俺は平和に生きていきたい。街の隅っこを歩いて生きていきたい。
◆
ちなみに俺がこの世で最も尊敬してる個人は、女の人だ。名前は出さないが、俺と同じ発達障害と精神病を持っている。しかし自分の得意なことで年収1000万以上稼いでいる。今ではもっと稼いでいるかもしれない。
世の中金が全てじゃないが、やっぱり金を稼いでる人は強い。
次回に続く
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