25話 光の差す部屋

 朝、俺の住む204号室には光が差している。光が差していようが、土砂降りの雨だろうが、俺の生活には全く関係無い。あまり外に出ないからだ。


 俺が書きたいことはドストエフスキーの地下室の手記とかに全部書いてある。ちなみに俺は地下室の手記を10ページくらいしか読んだことがない。クソつまらなかったからだ。


 俺は今、空しさや虚無や後悔や反省や悲しみすら感じていない。ただ換気扇の下であぐらをかいてタバコを吸って無心で音楽を聴いている。


 あらゆるものを失いすぎて、後悔してたらキリが無い。心が動かない。失ったというのは錯覚で、本当は最初から何も手にしていなかったのかもしれない。


 死ぬ理由は山ほど思い浮かぶが生きる理由はほとんど思い浮かばない。毎日死ぬ日を待っている。能動的に死ぬことはもう諦めた。酒を飲んでタバコ吸いまくってれば普通の人よりは早く死ねるから、それを期待してる。アル中は50才前後で死ねる。


 もう自分の人生に何も期待してない。他者との関わりの中で自分の卑しさや浅ましさを嫌というほど思い知った。俺が何かを求めるたびに、誰かを傷つけ、何かを失う。端的に言って俺は頭がおかしいからだ。


 日記という名目でこの連載を始めたが、ほとんど同じ毎日を送っているから書くことが何もない。


 書くことはないが、なんとか搾り出している。


 もう空っぽだ。


 俺が生きてることがくだらない。


 ◆


 俺と言えば酒みたいなところがある。完全にアルコール依存症である。だが、どんなアル中にも言えると思うが、どんな人にも必ずアル中になる過程がある。俺の場合は精神を病んで会社を辞めて実家に引き篭もるようになって、死にたい気持ちや孤独感や将来への不安・絶望感を無くすために酒に依存するようになった。


 当時仕事を辞めた俺の貯金額は150万くらいあったのだが、そのほとんどを酒とスマホゲームの課金に費やした。ちなみにプロスピという野球ゲームだ。


 あっという間に俺の貯金は尽きて、親の金で年金を払ったり酒を飲むようになった。


 酒を飲みすぎて何度も体を壊して入院したり、頭を壊したりした。


 精神科医に勧められて、アルコール依存症を専門に診ている病院に行ったこともある。


 それでも尚、酒はやめていない。


 酒に本格的に依存し始めたのは20才の頃だった。


 俺には酒しか救いが無かった。


 吾妻ひでおという漫画家が俺以上のアル中で、エッセイ的な作品がとても面白い。あとは小説家で言ったら中島らもがアル中で有名だ。中島らもの作品は個人的に何度も読み返すほど好きだ。


 ◆


 最近、俺の妹が俺の部屋によく遊びに来てくれる。妹とは小さい頃から仲が良い。


 妹の性格は俺とは正反対でとても明るい人間なのだが、妹は妹で病んでいるところがあって、精神科に通っている。心の根底にあるものは俺に似ているのではないかと思っている。あと妹はとても優しい性格だ。


 ちなみに俺も優しい。(自分で言うべきではないが)


 俺自身が社会的弱者であるから、俺と同じような立場の人の苦しみ・懊悩はよくわかる。なので優しい。


 俺はアカウントをコロコロ変えながらネットで活動してるが、基本的に、ウラジーミル・プーチンの悪口しか書いたことがない。プーチンに関しては“大統領”という敬称すら付ける価値すら無い。そこに関してはアメリカのバイデン大統領と同じ意見だ。


 しかしたまにプーチン以外の人にも暴言を吐いてしまう。


 俺の親愛なる読者に対して、「みんな俺のケツの穴でも舐めてろ」と暴言を書いたことがある。その節は申し訳なかった。俺のケツなんて舐めなくていい。もっと綺麗なものを舐めた方がいい。アメとか。


 俺は人からの好感度なんてどうでもいい。


 どう思われようが仕方ない。来るもの拒まず、去るもの追わず。


 最近の俺の楽しみは、来月に出るsyrup16gの5年ぶりのフルアルバムだ。それが聴きたくて今は生きてる。全て新曲で14曲入りである。楽しみすぎる。早く聴きたい。


 そういえば俺は5年前もニートだった。そして5年前も死にたかった。


 時の流れは早くて、俺を速攻で大人に変えてしまった。


 おれは何も大人になれていないのに。


 今年は割と色んなことが起きた。


 1番大きい変化は俺が一人暮らしを始めたり、すぐやめたけどライターの仕事をしてみたり、そういう変化だ。俺個人はかなり前に進めた一年だと思っている。


 俺の家族にも色々あった。


 家族に起きたことに関しては、書かない。


 俺のことだったらいくらでも書くけども。他人の個人情報を書くほど俺はアホではない。


 最近は寒い日が続いている。今年もそろそろ終わってしまう。


 周囲からすれば微々たる変化なのかもしれないけど、俺は今年一人暮らしを始めたというのが一番でかかった。


 あと彼女と付き合って別れた。


 出会いがあれば別れがある。そんなの当たり前のこと。


 いつか俺の読者はゼロになるかもしれません。だが、そしたらまた新しい読者が生まれるのだと思う。


 現に、アカウントを消すたびに新しい出会いがある。継続して読んでくれる人もいる。これはとてもありがたいことだ。


 もちろん俺のことを嫌いになって去っていった人も山ほどいる。


 俺の精神は最近は安定している。もう2度とアカウントは消さないようにする。


 ◆


 退屈ではあるけど、俺の毎日は平和だ。


 来年以降もこの平和が続くと同時に、大人として少しずつステップアップしていきたいと考えている。人生なんて個人個人のペースでいいんだ。




 次回に続く

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る