第8話「異世界アイドルオペレッタ♪♪」

 小さな町の小さなオペラハウス、ドワーフの常連さん、始めてのミノタウロスのお客さん、仲むつまじいワードックとコボルトのカップルや近所のワーキャットやワーラビット、ワーハムスターの人、たくさんの人々が日常を忘れる日常の娯楽を求めてこの小さな劇場にやって来る、舞台と客席をさえぎる幕、緞帳どんちょうを通しても向こう側で歌劇を待ちきれないお客さんの声が聞こえる。



『『今日も舞台の幕が上がるんだ』』


 アイカとチカは異世界に住むアイドルとマネージャーとして緞帳のうしろ、舞台の中央に立っている。


 吟遊詩人が歌い出し小さなオペラ、オペレッタ[異世界アイドルオペレッタ♪♪]の幕が上がる。



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 異世界アイドルオペレッタ♪♪

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪



「私次のオーディションがんばります、絶対受かって見せます!!」


「そうですわホシコ、少しでも多くのステージに立って最高のパフォーマンスを見せるのですわ」


「はいホシアカリマネージャー!! 私がんばります!!」


「そのいきですわホシコ!!」


 エルフの吟遊詩人は歌う、ホシコがたくさんのオーディションを受けては落ち受けては落ちしている事を。


 エルフの吟遊詩人は歌う、ホシコがそれでもめげすにレッスンをし、自分を高めていく事を。


 そのオペレッタ、[異世界アイドルオペレッタ♪♪]はアイカが主役の新人アイドル[]の役をつとめ、チカが敏腕マネージャー、[]の役を演じていた。



♪♪♪



「やったわ、ホシアカリマネージャー!! 私今度のオペレッタで主役になったの!!」


「おめでとうですのホシコ、その調子ですの! あなたには才能があるですの、必ず売れますわ!!」



 エルフの吟遊詩人は歌う、ホシコの努力がむくわれていくのを。


 エルフの吟遊詩人は歌う、ホシコを慕うファンが増えていくのを。



♪♪♪



「アイカお手紙ですの?」


「ファンの人達のお手紙にお返事を書いているの」


「じゃ、これもお願いしますわ」


「なに?]


「ポスターのサイン書きですわ」


「ホシアカリマネージャー!! これって、これって!!!!」


「となり町で開かれるあなたのソロライブステージのポスターですわ♪♪」


「やったーソロライブだーーーー♪♪♪♪」



 エルフの吟遊詩人は歌う、全てが順調だ、ホシコもホシアカリマネージャーも、自分達のやっていた事が間違いじゃないと確信していると。


 エルフの吟遊詩人は歌う、このままこの二人の旅が順調であれと。



♪♪♪



「大変よホシコ、橋が洪水で流されて通れないらしいのですの!」


「じゃ、別の橋から」


「それがダメですの、馬車の通れる橋はかなり遠回りになってしまって三日はかかるらしいですわ」


「ホシアカリマネージャー、それじゃあ明日のとなり町のソロライブステージに間に合わないよ、せっかくオペレッタのオーディション受かったのに、せっかくファンの人達たくさんになったのに、私、みんなが楽しみにしてたソロライブステージを台無しにしちゃう、ファンのみんな「楽しみにしてます」ってお手紙いっぱいくれたのに、私、私、私……」


「諦めてはダメですのホシコ!! たとえどんなに困難が待ち構えててもアイドルは諦めちゃダメですの!!!!」


「でもホシアカリマネージャー……」


「走るのですわホシコ、この辺りの道に詳しいミチオって男が馬車は無理でも人一人なら通れる橋があると言ってますの」


「でもホシアカリマネージャー、馬車で行く道のりを走るなんて、絶対に無理です、間に合う筈がないわ……」


「ホシコ!! ファンを信じなさい! あなたのファンは必ずあなたを待っているですの! あなたは絶対にそこに行かなければいけませんの!!!!」


「ホシアカリマネージャー……、うん、そうだ、ファンの人達きっと待ってるもんね、私走る、走って走って夜通し走って絶対ファンのみんなの元に行く!!!!」



 エルフの吟遊詩人は歌う、ステージ衣装に身を包みファンの待つステージへと走るホシコをこぶする歌を。


 エルフの吟遊詩人は歌う、時間の過ぎた会場でホシコが来ると信じて待つファン達をたたえる歌を。


 そしてエルフの吟遊詩人は歌う、必ずハッピーエンドになるアイドルの歌を。



「みんなお待たせ!! 楽しいステージを始めましょう!!!!」



 エルフの吟遊詩人の歌にのせ、アイカもチカもオペレッタを見に来たたくさんのたくさんの観客達もこの物語の中に入り込んだ、そして小さな町の小さなオペラハウスはこの物語と共に人々を一つにしたのだ。



♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 異世界アイドルオペレッタ♪♪ 完

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