第3話真実と決断
霧子は綾音を連れて、騎士の案内に従いながらとある個室のような場所にたどり着く。
どうやらここがギルドの部屋らしい。
「ここが我らがギルド『クレリア聖騎士団』の応接室になります。
私はこのギルドの兵士にすぎませんから簡単な事情徴収くらいしか権限はありませんが..」
要するにこの兵士は衛兵のような立ち位置の兵士らしい。
現実で言う警察と同じ治安維持のために働く存在だ。
「事情聴取...ですか。
一応私らの話を聞いてくれるだけありがたいです。」
綾音は改まってそう話すが、先程槍を向けられたこともあってやや警戒気味。
だが、冷静に考えてこの世界では見慣れない服装なのだろうとすぐ理解してその警戒も解いた。
思えば綾音だけ学生服だった。
「それで、早速ききますが...慈愛の
と兵士は語る。
どうもこの世界でのサリュエルという神様は、伝説的には偽名を持たないらしい。
慈愛と言うだけあって、人々の願いや思いなどを受け入れる神様なのだろうから、真名で接するというのは何も不自然な話ではない。
とはいえそれは伝説にあるという不確かな情報。
実際はそうじゃないかもしれない。
「...うん、確かにきり...ウチらはここの世界の人間では無いのは確か。」
そう霧子は答えた。
一人称が「霧子」では無いのは、異世界に来てまでこの名前を一人称にするのは恥ずかしいと思ったからだ。
「霧子の言う通り、元々はこの世界と違う日本の徳島県という場所に住んでました。
ここの街並みと違い少し田舎でどこか素朴ですが、とてもいい街だったんです。
信じていただけないかもしれませんが、証拠ならこの服装とこの機械を見せれば信じて貰えると思います。」
要するに自分達は異世界転生者であるといった旨を説明する。
何度も言うようだが、彼女達は死んだ訳では無い。
そうして転生者であることの証拠として綾音は、今着ている服の事と2人が持ってたスマートフォンを机の上に置いて見せる。
「たっ確かにそんな服装は見たこともないし、なんだ?この黒い板は。遺物かなにかだろうかと思えるくらい不思議なものです。」
綾音の服装を舐めるように見ながら、あらかた満足すると机の上のスマートフォンを手に持ってそれもまた舐めるように見る。
「...ウチは...朝目が覚めたらこの姿になってた。こうなる一日前は元いた世界でいう''染落とし''という儀式を行ったくらい。」
霧子も綾音に続いて今の自分の状況も説明する。
思えば染落としの具体的な内容を覚えてない。
どこかの会場で並んで座って...目を瞑ったことくらいしか覚えておらずそこからの記憶が家に帰るまでない。
「?!染落としを、ですか?....どうやらそちらの世界に、この世界の神様達が力を与えたようですね、あんまり私は詳しくないから多くは語れないですけど。あくまで噂程度ですし。」
「しかし、そういうことなら...私ではなく団長様の方が詳しいかもしれませんね。ちょっと団長様を呼んできますー」
兵士はそういうとペコッと律儀にもお辞儀をしてその場を去った。
「あっはい...」
「....こっちの世界にきて神様が霧子に力を与えた?それならなぜ霧子だけで私には何もないんだ...?まだその資格がないからとかなのかな?」
綾音は兵士が去る時に軽く答えた。
その後、兵士が発した言葉の意味を整理し考察している。
確かにここに来る前、霧子は染落としを受けた。
自分は霧子とは違う日程だったので同時には受けてない。
私たちはいつも染落としが終わったあとはどんな感じだったかの話をするが、お互いどうしても儀式の内容だけは思い出せない。
「理由を探っては行けない」という決まりがあるが、恐らくこういう所もそのひとつなのだろうか?。
「ねぇ綾音、なんだか変じゃない?色々と噛み合ってない気がするんだ。もしウチらが転生したってことなら漫画の法則に乗っ取るなら事故なりなんなりで死ぬか、神様が直接訪れてきて招待してくれるかってのが主な気がするんだけど...」
「それも込みで死んでもないのに異世界にいるのもおかしいし染落としが関係しててもウチだけ力が着くのはおかしい」
霧子も霧子で自分なりに考えていた。
ただ彼女の推理はどこか的を外してるような感じだ。
しかしいい線を着いている考え方とも言える。
「それに関してはやはり私たちの家ごと転移させたor切り取ったと考えるのが自然だと思う。染落としの件は霧子はその力を宿すだけの器があって、私はまだその意気に達してないだけと考えれる。」
「もしくは...実は最初から現実世界なんかでは無く、最初からこの世界にいた事にすら気づいてないと考えることも出来るけど...あぁ!こんな事考えてたら頭痛くなるっ!」
綾音はというと1人で色々考察しているがいよいよ限界を迎えたようで髪の毛をくしゃくしゃと両手で掻きむしるようにして若干イラつきながら改めて椅子に座り直す。
「綾音落ち着いて...。ともかく団長さんを待とうよ。」
対する霧子は平然としているが彼女だって必死に頭で考えている。
普段考えることをあまりやらないからこそなのだろう。
「うん、そうだね。ごめん」
霧子の言葉のおかげで冷静になることが出来た。
1度深呼吸をして心身ともに落ち着けようとおもいスーハースーハーと息を吸ったり吐いたりする。
そうして2人が会話をしながら少し待機していると、案内された時に入ってきた木製の扉から1人の男性が入ってくる。
外見は銀の鎧で身を包み、所々に宝石のような装飾があしらわれていて肩幅も広い。
霧子達と明らかに身長が離れていて、顔だけ見るなら凄く強面の厳つい男に見える。
いや、どっちかと言うと漢...だろうか。
しかし気がかりなのは目元ぶぶんだけ黒メガネのようなもので覆われててレンズの部分が黒いから目元までは確認できないということ。
「どうも、綺麗なレディ達。
俺がこのクレリア聖騎士団の団長、アレリア・シュベルグというものだ。
君たちが染落としを知っていると話を聞きつけて話を聞きに来た。」
男はアレリアと言うらしい。
背中には両手剣と思われる刀身がデカい剣を装備している。
そして衛兵から聞いたのであろう話を確認するために直接来たと改めて説明する。
「...あっどうもご丁寧に...、私は冴島綾音...こっちは妹の霧子。その染落としの件で私達も気になっていたので団長様直々に教えて頂けるのならありがたい限りです。」
「...紹介されました霧子です...」
2人はこの聖騎士団のお偉いさんの登場に緊張しながら自己紹介をし返す。
同時に綾音は内心、「この人凄くかっこいい....特にあのサングラスのようなメガネ好き...」と1人惚れそうになっていた。
故に顔も頬が少し赤くなっている。
「おおっと、俺に惚れちゃいけないぞ。あいにく俺の恋愛日記は満席でな。」
「っととそんなことはどうでもいいな、早速本題だが...霧子..?と言ったか?君は今サリュエル様の力を宿していると聞いた。確かにその外見はかの神と合致している。そしてその神の力が宿ったのは紛れもなく染落としによるものだろうと断言出来る。これを見てくれ。」
とアレリアは語る。
そういうとアレリアはどこからか持ち出したのであろう古い本を机の上に置いておもむろにページをめくる。
そこにあったのは染落としと清めの刻の内容が記されたものであろう古文書らしきもの。
2人の大人と子供の男女がそれぞれこの儀式を行っていると思われるイラストが描かれている。
しかし、まるでモザイクがかかっているかのようにこれ以上のことは何も分からない。
「...うそ、私たちの世界にしかないと思ってた言葉がこの世界に古文書という形で記録が残ってるなんて...」
「ウチもびっくり...あんまり難しいことは分からないけれど、なんだか複雑な事情が絡んでそうのが分かった」
2人ともその古文書の中身を軽く見ただけでもその事実に驚愕している。
しかし自分達が儀式を受けた時と同じように、儀式の内容自体はどんなに目を通してもこのイラスト以外のことから読み解くことは不可能に見える。
いや、正確には書いてはいるのだろうが恐らく古代文字だかなんだかで書かれておりまるで分からない。
「俺は元々考古学者でな、今は色々訳あってここ
の団長を務めてる。その経験を活かしてこの古文書の古代文字を解読した。その内容はこうだ」
__現代と幻想の世界は鎖のように結ばれ、それぞれは神のみ行き来できる。しかしお互いの文明は不干渉故、技術の発展や交流などで影響することはお互いにない。しかし神であってもこの二つの世界を行き来するのは容易ではない。故に健全なる魂と健全なる精神、そして健全なる肉体を有する生物を1度媒体とする染落としを用いて一時的に体を借りることで行動することを可能にした。これは清めの刻であっても同じである。変わるのは対象が大人に変わるだけ。
「と記されているようだ。要するにこの世界と君たちの世界を行き来するための手段という形で用いられている儀式のひとつらしい。しかしこの理屈で行くと霧子くんの体についているサリュエル様が元のお体に戻られないのは変な話だな。」
「...あんまりレディにこんな話を口にするのは失礼だが、あえて聞く。霧子くん、君は『生理中』だったりしないかい?もしそうならば神が元の体にお戻りになられる際の枷になっている可能性がある。」
とアレリアは申し訳なさそうに、しかし真剣な話を持ちかけるように口にする。
「...ええっと、確かに生理中だけど...」
「待ってくださいっ!それならどうして私の所には神様が宿ってないんですか?既に生理中だから寄せ付けないってことですか?」
霧子も若干恥ずかしそうにしながらも答える。
一方で綾音は自分にはなぜそんな力が目覚めないのか、もしくはなぜそうならないのかの原因を聞く。
怒りがある訳では無いがただただ疑問に残るのだ。
「綾音くんといったか、君の場合は純粋にまだその刻では無いのだろうと思われる。しかし、ガッカリしないで欲しい。君にもしっかり素質があるし器もある。今すぐには目覚めないだろうけど、いずれ霧子くんと同じように神の力に目覚められる。」
アレリアは綾音を励ますように口角を上げてやわらかい口調で説明する。
「いえっ、神の力を手に入れたい訳では無いのです。
ただただ純粋になぜ霧子なのかということが気になるんです。」
その口調に対して神の力が欲しい訳では無いと否定しつつ、気になることをぶつける。
「それは....俺にもわからないな。いくら染落としを行ったからと言って必ず宿る訳では無いらしいしな。」
アレリアは綾音の鋭い質問に困ったような素振りを見せながら分からないと素直に答える。
「ともかく、君たちは選ばれているようだ。君たちのようなものがこの世界に来ることを異世界転生と君たちの世界では呼ぶらしいが、君たちの場合はどうも...恵まれない形で巻き込まれたらしいね。恐らく君たちの場合はとある魔獣の仕業だろう。」
なんということか、綾音達を巻き込んだのは魔獣の仕業だと話し始めたのだ。
「まっ魔獣っ?!その理論で行くと私たちの世界..便宜上、
便宜上とはいえ現代に関しては結構無理やりなネーミングだが、今は置いておいて綾音達は自宅の玄関から1歩外に出る前に見た光景のひとつに、両親が机に揃って突っ伏した状態で背中から鋭利なもので腹部まで貫かれるようにして殺されてる死体があったのを見ている。
その殺され方が
しかも凶器すら残っていない。
だが、この非現実的な殺され方をしているのが
「...恐らくそうだろうな。あの魔獣...名前はアマゼウスといってな、そこまで詳しい情報もでてない簡素な特徴しか分からないようなやつで等級として禁忌級と俺らは呼んで恐れている。
今わかるのは神が染落としを行ってやっと行き来できる所をあいつは己の力だけで行き来し、獲物を現代幻想問わず見つけては自分の領域に連れてきて餌を殺して喰らうということくらいだ。」
「君たちがその魔獣に巻き込まれても無事だったのは、あいつが聖なる光に弱いからだろう。霧子くんの神々しい光が2人だけでもと守ってくれたのかもしれない。両親の件に関しては...気の毒としか言えない..」
確かに綾音と霧子の2人はいつも同じ部屋で寝ている。
ある意味そのおかげで命が助かったと言えるのかもしれない。
じゃあなぜ両親は揃って机に突っ伏して殺されたのか...食すってことなら死体は残らないはず...。
謎は深まるばかりだ。
「詳しい生態が分かってない魔獣....そいつがウチらの父さんと母さんを殺した..」
霧子は2人の話を聞いてる中でひとり絶望していた。
自分たちだけ助かって親が先に死ぬなんて...親的には子供が先に死ぬよりはマシなのかもしれないが子供視点ではたまったもんではない。
「....なるほど、分かりました。じゃあそいつを殺せば私たちは元の世界に戻れるんですね?」
一方で綾音は明らかに怒りが顕になっているのが分かるくらい若干の圧がかかる話し方をする。
要するに静かにキレるタイプである。
「アマゼウスを殺したからといって元の世界に戻れるかと言われると残念ながら不可能だろう。
しかし元の世界に戻りたいと願うなら叡智の
「そこでだ、俺が決めるようで申し訳ないが..この街の抱えてる問題を解決しながらアマゼウス討伐に向けて協力してほしい。もちろん協力してくれるのならばその分衣食住は提供するし、アマゼウスについてなにかわかり次第、本来は極秘なのだが特別に君たちだけに明かそう。」
「しかし、君たちに選択権を与えないという訳では無い。ノーと答えるならそれでもいい、ノーと答えたとしても最低限我らクレリア聖騎士団が全身全霊をもって君たちを護衛し叡智の
その過程での物資などもちゃんと補給する。
答えを急かす訳では無いがゆっくり考えてくれ。なにせ前者を選んだ場合は文字通り命をかけた狩るか狩られるかの戦いになるからな。」
と長々と説明した疲れか一旦一息ついて、綾音達の答えをまつ。
「そんなの...決まってるじゃないですか。ねぇ霧子。」
「うん....ウチも決まってる」
2人はどうやら意見がもう既に固まっているようだった。
「私たちの父さんや母さんを殺されて、黙って元の世界に帰るもんか。」
「ウチも綾音と同意見、正直怖いけど命よりも大事な家族が殺されたのに尻尾を巻いて逃げたくない」
2人揃って内心はノーとこたえたいくらい話を聞いて絶望していた。
しかし仮にこのまま戻ったとしてもまた自分たちが狙われて殺されるのでは?と思ったし何より、この世に産み落としてくれた両親が殺されてるのに黙って帰れないという恨みと復讐の心が芽生えたのだろう。
「..わかった。君たちのようなレディを亡くしてしまわないよう俺達も協力しよう。幸いなことにこのギルドはほかの街にあるギルドと比べても勢力的にも強さ的にも1番上だ。要するに最前線ということだ。だから情報は入りやすかろう。」
「しかし、剣や魔法すらろくに扱えないようじゃ歯が立たない。だが綾音くんや霧子くん、2人はどうも使い方を知らないだけで魔法の素質はあるようだ。如何程のものなのかは分からないが...どうだ?明日からでも訓練を受けてみないか?最前線のギルドと言うだけあって内容はかなり厳しいものだが無謀に突っ込んで死ぬよりはマシだろう。」
なんか話の流れ的にこのギルドに所属する事になってるような気がするが今更自分たちが決めた道、これを拒否することはしない。
「はい、当ギルドの訓練を進んで受けます。」
「ウチも受けます」
2人も満更でも無い様子。
「はっはっはっ!そうかそれは嬉しいな。まるで可愛い愛娘が2人も出来たようだ。
そういうことなら、ようこそ我がギルド、クレリア聖騎士団へ。本当は正式な試験を通さないといけないのだが、俺の方から国に申請を通しておこう。」
アレリアは2人の覚悟を聞いて表情が緩くなったのかちょっとした冗談を交えつつも歓迎ムードで2人を出迎える。
「さて、2人にはギルド正式の初期装備とギルドの証である紋章が入ったバッチを手渡しておこう。バッチはギルドにおいてかなり重要な役目を果たすものだから無くさないように。主にどういう用途があるか詳細は言えないが、そのバッチがない状態でギルドの門をくぐると侵入者と断定しセキュリティシステムが作動して攻撃魔法が発動することになっている。その威力は直撃すれば即死、かするだけでも部位によっては即死圏内となるほどだ。」
多少話を盛ってはいるもののそれくらい大事なものだから無くすなよと念入りに説明する。
兵士に声をかけると少しした後で装備とバッチが机に並べられる。
紋章の特徴としては四角と三角が交互に入り交じっており、真ん中らへんに2つの剣が交差するような形でデザインされている割とありがちなデザインである。
なお基本装備については簡単な魔導書と鉄の剣、そして鎧である。
ただ鎧は女性用のもので、軽めの金属である魔導金属のー種であるミスリル製のものを用いている。
もちろん軽いだけではなく耐久性もバッチリ。
ただ基礎装備と言うだけあって見た目はどこか新人感は拭えない。
魔導書については2人は今手にして読んでも訳が分からない。
でも書いてあること自体は読める。
「魔導書に書いてある魔法については近いうちに教えるとして、まずは剣術から磨くといい。
先に言っておくと基本装備と言うだけでもちろん強さに応じて装備の見た目や性能は上がっていく。その分扱いにくくはなるが。まあ性能が上がったりすることについては魔獣などから取れる素材を用いるところから始まるがな。」
「なるほど...分かりました。」
まるで某アクションRPGゲームみたいだなと綾音は内心思いつつも突っ込まずに話を聞いて頷く。
霧子も喋らないだけで頷く。
「よし、そうと決まれば早速部屋を案内しよう。2人1緒の方が何かあった時にも対応しやすいだろうから部屋をひとつ貸そう。」
何かあった時、それは団長が見てないところで男たちに夜這いでもされたら面倒だということ。
まあこのギルドに限ってないとは思うが念の為と言うやつである。
「それに関してはこちらから言うつもりでしたので助かります。」
出来ることなら2人で1緒に寝たいしその方が寂しくもないと思って言うつもりだったのだが先に対応してくれるようで良かったと安堵。
「そう言えば、この街が抱えてる問題というのは戦争...なの?」
霧子は問題について聞いてみることにした。
ここに来るまでに見た街の悲惨な姿を見ているのできっと戦争などに巻き込まれてるのだろうと口にした。
「いや、戦争ではない。似たようなものではあるが相手は人間や他種族では無い。魔獣さ。アマゼウスとは到底比べ物にならない下級たちだが、タイプが様々あって討伐に手を焼いているんだ。人手も実は1番大きいギルドの割に足りてなくてな...今の数ですら対応するのに苦労する程なんだ。他ギルドからの協力もあおってみたが他ギルドの街も同じ状況のようで手は貸してくれなかった。」
「一刻も早く対処しないとならないから訓練している余裕なんて本当はないのだが、基礎を怠ることそれ即ち死を意味する。」
彼なりの持論を口にしながらも席を立ち部屋へ案内しようとする。
「確かに初心忘るべからずという言葉がありますし、その気持ちはわかります。」
「とにかくお部屋までいこー」
綾音の話を聞きながら霧子は片手を上にあげてお部屋までついて行く。
なお初期装備達は後で持ってきてくれるだろうと思って置いている。
そうして2人はアレリアに案内されながらひとつの部屋につく。
扉自体はやはり木製の扉だった。
こういう建物にはよくあるものだ。
「ここが君たちの部屋だ。ちゃんと掃除してあるから汚くはないはずだし住み心地も悪くは無いはずだ。明日入団式を行うから今日はゆっくり羽を伸ばして休んでるといい。食事などは後で持ってくる。着替えなどについてはこの世界の通貨であるG《ガジル》を与える。
10万Gくらいあれば足りるだろう。」
「さてと、俺は団長室に戻って仕事を続けるからゆっくりしてくれ。」
そう口にするとお金が入った袋を2人に手渡してその場から立ち去った。
そのお金をどこから持ってきたのか、どうやって持ってきたのかについてはもはやファンタジー世界なので突っ込まないことにした。
それにしても1G辺り価値はいくらになるのだろうか?1G=1円みたいな単純なものなら計算しやすいのだが...ともかく合計で20万Gが初期費用として手元に渡された。
「...私、あの人のこと好きになりそう。あーいう気遣いが出来るギザな男...好きだから...」
「はぁ..またそんなこといってぇ...恋愛日記は満席だーとかカッコつけて言ってたでしょ?きっとアレリアさんには奥さんがいるんだとおもう。もしくは毎日日記を取りたいほどにモテてるのかのどちらか。まあともかく一旦部屋に入ってゆっくりしようよ。買い物は後で二人で行くとしてさ。」
「そうだね、まずは部屋に入ろうか。」
そう言って2人は部屋に入る。
内装自体は日本の和風と似たようなつくり。
床はリビングのような作りになっているためか本当に異世界に来たのだろうか?と思わせるほどに既視感を感じる。
しかしこの方がかえって生活しやすい。
「じゃ、早速ウチは寝る...おやすみー」
「ってちょぉおいっ!もうねるんかぁああいっ!....まぁいいけど」
言ってる側から早速寝てしまった霧子。
いつものベッドじゃないと思ってたら違和感なく寝れるようで言ったそばからすんなりと寝始めた。
なんとも奇妙な話だが霧子の言う通り、ここまで来るにも沢山歩いた。
1回自分も横になっておこう..と思った。
「待っててね父さん、母さん。絶対仇をとるからね」
スマホに保存してあった家族写真をみて1粒の涙を流しながら、ゆっくりと目を閉じる。
明日からは入団式と同時に訓練が始まる。
2人の大まかな目的は変わってしまったが、何故神になったのかの原因がなんとなくでも分かって突き止めれたので満足したのだろう。
両親が殺された理由も恐らく魔獣が関係しているだろうということも分かったから目的がその魔獣の討伐と、ついでといっちゃあれだがクレリア城下町の問題を解決することが目的になった。
__2人の冒険はまだ始まったばかりだ。
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