第10話:杉山
郷土最大の謎
そして
「鶴見神社は
だが、
「鶴見川流域でしか広まっていませんから」
「え、そうなんだ」創和は初耳だった。育美も同感だ。
市治は、なるほどと思う。
「
「それって、ちーちゃんの周りだけでしょ?」架橋は疑う。
「いや、寺社から歴史に興味を持った方は、私の周りにはいません。でも、
と、市治はバッグからセカンドPCを取り出し、PDFに保存したそのレジュメを見せた。
「このようなこともあろうかと思って、用意しました」
とはいてイラストのみならず、横浜市の歴史関連情報も大抵はこのパソコンに入れてある。
創和は苦笑いした。
「このようなことって、一体何処の技師長よ……」
架橋は感嘆した。
「ほんとだ。タイトルに"郷土最大の謎"って銘打ってあるねー」
杉山神社は古代、
そのためなのか、例えば全国に広がる
だから杉山神社の歴史は全て仮説の域を出ない。
だがそんな仮説は、昭和戦後の先人が少ない二次史料とフィールドワークで判明した成果だ。
だから今の私たちらこれを尊重し、基礎情報とすしながら新たな発見と説に繋がるしか、歴史認定への道はない。
杉山神社の数は
現在、神奈川県神社庁が保有する神社データベースを見ると、横浜市内に三十四社、神社庁管轄外に一社あるので、合計三十五社が残ってることになる。
市治の持つレジュメには、三十五社すべての一覧がある。
そこで創和はタブレットから、ルーレットを開く。
「市内なら、あとひとつくらい行けるよね!」
架橋が乗った。
「行こう! 面白そう!」
育美は疲れてるが、
「横浜の謎なら興味あるわ」
と賛成した。
市治も、乗り気では無い。
「なんと気まぐれな……」とはつぶやくけど。
創和は元気に屁理屈で返す。
「なに言ってるの? 旅の醍醐味は時間とお金の無駄遣いだよ。行けば大抵、予期せぬ興味が現れるってこと。ま、今回はお金かかんないけど」
「旅というほどでもありませんが……」市治は付き合うことにした。
「ということで、車、お願い」
「いや、今日は持ってきてません」
「あ、そうだった。じゃあ、お酒、呑めるね」
「晩御飯までには帰ると伝えてあります」
「いけずー」
市治と創和の無駄話をよそに、育美が創和のタブレットを持って「まわすよ」と、ルーレットを始めた。
出た数字は二十二。レジュメの順番を追うと、
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