きーくんと半分こ
ある母子家庭の男の子の年末。きーくんの年越しのお話。【赤いきつねと緑のたぬき用】
ある年の年末、とある母子家庭の親子の年越し。
「ママ、うちってさ、としこしそばってたべる?」
「きーくん、年越しにそば食べたいの?そう言えば、年越しそばは、食べたことないねぇ。」
「うん・・・べつにいいや・・・・」
きーくんはママと年末間近のスーパーマーケットからの帰り道に、ママに聞いてみた。
ママは、働いているからいつもお迎えは最後で、帰り道のお買い物がいつものコース。
うちには、パパは、いない。
なんでいないのかは知らないけど、お仏壇の写真で顔は知ってる。
年越しそばも、食べたことがない。
でも、一緒に食べたいって言っていいのかな?怒らないかな?嫌いじゃないかな?
今日は、もう12月の28日で保育園が最後の日。
お友達のいっくんは、パパと2人でおそばを作るんだって笑ってた。
まりちゃんは、帰ったらすぐに新幹線で遠くのおばあちゃんのお家に行って、お餅つきするんだって言ってた。
ホントは、みんなをずるいと思う。
なんでか、わからないけど、ずるい。
きーくんのパパは居ないし、じぃじもばぁばもすぐ近くにいるから新幹線にも乗れないし、じぃじとばぁばの家はマンションだからお餅つきもできないし、お泊りで「お寺にお参り」に行っちゃうから元旦には会えないし。
ママがいるから平気だと思ってても、やっぱりみんなをずるいと思う。
少し拗ねてる顔してるのかな?ママが、きーくんの顔を覗き込んでくる。
「ママいってらっしゃい。ことしさいごのおしごと、がんばってくるんだよ。」
「はぁい。いってきます。」
ばぁばの真似をして言ったきーくんのおでこにチューをして、ママはお仕事に出かけて行った。
29日は、ママがまだお仕事だし、じぃじもお友達とお出かけしちゃったから、ばぁばと2人でお留守番した。
ベランダの「お花の手入れ」のお手伝いをしたり、かっこいい「お侍さん」が出てくるテレビを見たりする。
今日の朝、「お利口さん」にしてたら今度じぃじが「お侍さん」の剣を買ってくれるって、約束したから今日は「お利口さん」にしてるんだ。
ばぁばがお夕飯の買い物に行くのもついて行って、お野菜を取ってきたり、お金をレジのお姉さんに渡したり、お手伝いをした。
今日は、ばぁばの作ったご飯を4人で食べる日だから、から揚げにしてもらったんだ。
ママが帰ってくると、3人で「お帰り」を言って、ご飯を食べた。
大人3人は、色々とお話をしていたけど、きーくんはもう眠たい。
お家まで、ママが抱っこしてくれたらいいなぁ。
「きーくん!ママは捨ててって言ったよね!!」
「いやだ!すてない!」
「だって壊れるじゃん!遊べないし、もう遊んでないじゃんか!!」
「こわれてない!あそんでる!すてない!!」
「ママには、訳が分かんないっ!もー、知らないっ!勝手にしなさい!!」
30日は、「大掃除」でママと喧嘩した。
大事にしてるおもちゃを捨てなさいって、ママが意地悪を言うから、きーくんは怒ったんだよ。
全部、ママが買ってくれたのに、捨てたくない。
ママがお風呂とトイレと台所をお掃除して、きーくんはきーくんのお部屋をお片付けした。
きーくんのお部屋は、きーくんだけのテントがお部屋の中にあって、大好きで大切な場所。そこにあるおもちゃたちも大事なお友達だらけ。
お掃除が終わって、ママがきーくんにごめんなさいしてくれたから、きーくんもママにごめんなさいした。
一緒にコンビニで、バニラのアイスを買って、半分こして仲直りした。
ママのお膝で、おっきいスプーンであーんしてもらいながら食べるバニラアイスは、すごくおいしい!
「ママ、なにをつくってるの?」
「ん?おせちだよ。少しだけど、きーくんの好きな伊達巻を作ってるの。」
「ふわふわあまあまのたまごやき?」
「そーだよ。きーくん、好きだよね?」
「うん!!だいすき!!」
31日の「大晦日」は、ママの伊達巻が食べれる幸せな日。
ふわふわして、あまあまな卵焼きはきーくんの好物だから。
ママが「伊達巻」を作り終わると、一緒に公園で追いかけっこをして、お昼にホットケーキを作ってくれた。
夕飯は、「手巻き寿司」で、キュウリとカニカマをママに巻いてもらった。
やっぱり、「年越しそば」は、食べないのかな?
「きーくん、お蕎麦食べる?」
「あるの?」
「うん。買ってきたよ。ほら!あ~かいきつねと、みどりのたっぬっきっ!きーくんのお蕎麦とママのおうどん。」
「・・・・・・・」
「え?どーしたの?なんでそんな顔してるの?嫌だった?」
「・・・なんで・・・なんで、ママはおうどんなの!!いっしょにおそばたべたかった!!」
「え・・・だって、おうどんの方が好きだし・・・きーくんがお蕎麦食べるっていうから・・・・」
「きーくんだって、おうどんのほうがすきだよ!!でも、おしょうがつは、おそばなんだよ!!ゆきちゃんせんせいが、いってたもん!!なんで、おうどんなのぉ!!」
大泣きしてママを困らせたけど、今日は絶対にママと一緒にお蕎麦を食べたかった!
ママがどっちも半分こしよう?って、言ったからきーくんの新幹線のお茶碗にお蕎麦を半分入れて貰った。てんぷらもママと半分こした。
・・・・ずるっ・・・・ずるずる・・・・
食べながら鼻水が出てきて、ママが笑いながら「お鼻ちーん」してくれた。
「ママ・・・」
「どうした?」
「ゆきちゃんせんせいがね、おわりよければすべてよしだからおおみそかは、えがおでいるんだよって、みんなとのおやくそくなの。きーくん、ないちゃったから、おやくそくまもれなかった・・・どうしよう・・・」
「ん~。大丈夫じゃないかな?まだ、今年終わってないし、寝るときにきーくんが笑っておやすみなさいが出来たら、いいと思うよ?」
「ほんとう?」
「うん。笑っておやすみなさい出来る様に、今日はお風呂に緑のシュワシュワ入れようか?」
「いいの?シュワシュワ、いいの?」
いつもはママが本当に疲れた時しか使わない、お風呂のシュワシュワを入れてくれるって聞いて、急いでお蕎麦を食べた。
シュワシュワが溶けていくのを見ながらママとお風呂でお歌を歌って、おふろのおもちゃと一緒に体と頭を洗って、お布団に入った。
「ママ、あしたは、おうどんをはんぶんこしようね?」
「いいよ。お揚げさんも半分こだね。」
「うん。ママ、ことしいちねん、おつかれさまでした。」
「うん。きーくんも、今年一年、お疲れ様でした。おやすみ」
「おやすみなさい。」
きーくんのお疲れ様にママが笑って、きーくんも嬉しくなって笑った。
ママのトントンが気持ちよくって、嬉しい。
明日の朝は、元気におはようって言うんだ。
「おはよう!ママ」
「おはよう。きーくん」
「あけましておめでとうございます!」
「はい。あけましておめでとう。今年も一年、よろしくね。きーくん」
「うん!!」
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