第2話 俺のスキルは無限の可能性
俺、レン・アーメントは17歳になった。
この世界では17歳で成人というライン引きをされており、その歳になると成人の儀を受けられる。
騎士の家系出身者である俺はこれまで騎士見習いとして過ごしてきたが、成人の儀を迎えれば正式に騎士の一人として迎えられることになっているようだ。
「遂にこの日が来たか……」
ちょっと緊張してきたな……。
騎士見習いたちが一同に集う大聖堂。
さらに聖騎士団において各部隊を率いる騎士団長たちまで集い、雰囲気は厳格そのもの。
そんな中の一員である俺は深呼吸する。
成人の儀は日本でいうところの成人式であるが、明確に違うことが一点。
それは成人の証として神の祝福を承り、〝スキル〟を得られることだ。
このスキルは実に種々様々であるが、もし武術に有利なスキルだったなら聖騎士団でも活躍していけるだろう。
実際、有望な新人が現れたら騎士団長たちが率先して引き抜きにくるのだとか。
そう――俺がこれまで目指してきた聖騎士団。
スキルがどんなモノかで、俺の未来は決まる。
神様どうか何卒、俺に優秀なスキルを与えてくださいますよう……何卒……何卒……!
届け、俺の想い!
そう心の中で必死に念じる。
「ローグ・アイマン。お主のスキルは【風の刃】じゃ。風を剣にまとい、自在に操れるようじゃぞ」
「あ、ありがとうございます、大司教様! 神に感謝を!」
俺の前の騎士見習いにスキルが授けられ、ザワッと沸く一同。
いいなー、【風の刃】か。
戦場に出ればさぞ活躍できるスキルだろう。
俺もあんなの欲しい。
そんなことを思っていると、遂に俺の順番が回ってくる。
「お主はレン・アーメントじゃな。では、その身に神の祝福を」
「はい、どうかこの身に神の祝福を」
大司教が祈りを捧げる。
すると――
「……うむ、レン・アーメントよ。お主は神の寵愛を受けたかもしれんの」
「! と、申されますと……!」
「お主のスキルは【
――どよめく会場。
そのどよめきは、さっきよりも明らかに大きい。
それはそうだろう。
名前に〝神〟と入ったスキルを授けられるなんて、幸運にもほどがあるのだから。
【
確かにこれは強力、というより便利だろう。
例えば剣やナイフを【
使い方によってはさぞ強力なスキルになるだろう。
【風の刃】みたいにブオーン! ズバーン!みたいな派手な戦いはできないだろうが、それを補って余りある能力ではあるはずだ。
「ありがとうございます、大司教! 神に感謝を……!」
このスキルがあれば、俺は戦場で活躍できる!
まさに無限の可能性があるスキルだ!
もう今から楽しみで仕方ないな!
華々しく活躍する自分を妄想し、将来に胸躍らせる俺。
――その後、全ての騎士見習いたちへの成人の儀は無事終了。
【
結果、わかったことは以下の通り。
・【
・最大有効範囲は20メートル程度。ただし目視できる場合に限る。
・腕力、握力などは俺の筋力基準。
・掴んでいる物、握っている物の感触がある。
とりあえずはこんなところか。
もっと試していけば、さらなる発見もあるだろう。
「早く戦場で試してみたいな。あ~あ、早くどこの部隊に配属されるか決まらないもんかね」
成人の儀が終わった騎士見習いは、優秀なスキルを獲得した者から聖騎士団のどの部隊に入るのかが優先して決まっていく。
どうにも騎士団長たちの間では、成人の儀が終わった後にプロ野球のドラフト会議みたいな新人獲得の話し合いをする習わしがあるらしい。
ウチの部隊にこいつを入団させたい、みたいな。
騎士見習いにとって、有名な部隊に入ることは大きな目標の一つ。
勿論、それは俺も同じ。
俺はどんな部隊に入ることになるのかな~。
もう待ち切れないな~。
早く決まんないかな~。
家の庭先で【
「おーい、レン。お前宛てに聖騎士団から手紙が届いてるぞ」
「! 本当か!?」
父親の声を聞いて、俺はすぐに家の中に戻る。
そして俺が手渡されたのは、青い封筒に入った手紙だった。
この青い封筒こそ――聖騎士団の配属部隊が決まった証拠である。
「や、やった! ようやく配属先が決まった! どれどれ、俺を選んでくれたのはどこの部隊なんだ……?」
期待に胸膨らませ、俺は手紙を広げる。
そこには――
「なになに……〝レン・アーメント。貴殿を『第081部隊・ワルキューレ』へ配属とする〟…………………………おい、第081部隊って、おい待て」
書かれてあった部隊名に、俺は我が目を疑った。
『第081部隊・ワルキューレ』――。
騎士なら誰もがその名を知る、聖騎士団の中でも一、ニを争う練度と強さを併せ持つ精鋭部隊。
無論俺も知っている。
とても有名な部隊だからな。
だが、正直部隊の強さなどより――俺たち男の騎士には、別の意味で有名だ。
何故なら――『第081部隊・ワルキューレ』は、所属騎士が全て女のみで構成された部隊。
つまり男子禁制の部隊だから。
そして、そんな部隊を率いるエステル・オ・パイヤネン騎士団長は――聖騎士団の中で最大の
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