第八乳 四天王らしいけど大したことなかった
ばったばったと斃れていく敵。
ゆっさゆっさと揺れまくる乳。
文字通りに胸の内を明かした俺に応えてくれた
『―—!―—!!』
「出たわね、四天王の一角、炎爵フレイムオーダー!」
ゴオオオ!ぶるん!ぶるぶる!ぶる!ぶるばごおおおおおぉぉぉーん!
ばるんばぉぶらっしゃああぁぁぁあい!
カーチェの見事な連撃で仕留めた。
『―—!―—!―—!』
「今度は氷爵アイスブリザード!でも私たちは負けないっ!」
ビュウウウ!ふるふるっ、ちらちらっ。ちらぁっ!ちらあああぁぁぷるん!
ちらちーら!ちらっぷるーの!チラプルーン。
アオイの猛烈な火炎魔法でたおした。
『―—!』
「雷爵サンダ(略)どんなに強くても私たちは(略)」
ゴゴゴ、ゴロゴロピシャーン!ぷるぷるぷるっ!ぷるん……ぷるる!ぷるんぷるぷるるるあーん!ぷるぁぁぁ!!ぷっるるひゅん!ぷるっひゅらららら!
トルテの華麗な剣技が(略)
『―—』
「地爵アーs(略)」
ドドドドッ!ズゴゴぷるぷる!ゴゴぷるゴゴゴぷるぷる!ドゴゴ(略)
たおした。
雑魚を蹴散らし、魔王の側近たる四天王とやらもあっさりと下した俺達は、そのままの勢いで魔王の間へと踏み入った。荘厳な王の間は天井がぽっかりと空いており、満天に広がる緑の妖星に見下ろされている。
そして、王の間の中心にある玉座に座っていた影が、立ち上がった。
『ふふ、よくぞ来た。よもや四天魔を下す程だとは。予言の導師とやらの力は本物だったということか』
魔王の声は、深い海の底から湧き上がってくるような、穏やかでも威圧的でもない不思議な女性の響きだった。
「魔王ヤマ=ヴェーダ!そうやって余裕を見せていられるのも今の内だけ。覚悟しなさいっ!」
トルテちゃんのおっぱいが吼える。
「ふははは、その意気や良し。ならば私も全力で応えてみせようぞっ!」
一発笑っておけば威厳が保てるだろうという体で、魔王の影が立ち上がる。
ばっさー。魔王はマントか何かを翻し、その身体が顕わになった。
「あっ」
俺は、そのおっぱいを見た瞬間、がくがくと震え出してしまった。
身体中に電撃が走る。
「ああ……あああ……!」
魔王はでかい鎌か何かを構えて胸を張っている。
なんてことだ。
なんて……
なんていい乳なんだ……!
俺が人生を捧げて追い求めていた究極のおっぱいが。
全人類の夢が、十メートル先でぶるんぶんと震えている。
さすが魔王を名乗ることだけある。圧倒的な貫禄、そして魔性。
つまり魔乳……!こいつの事は魔乳と呼ぼう。
魔乳は紫色の肌をしている。その胸でばゆんばゆん弾み、妖しい光沢を纏うおっぱいは、まるでつやつやの巨峰だった。人種や肌の色なんて関係ない。そのまんまるいおっぱいの円は、完全無欠の円周率を体現している。π《パイ》とは良くいったものだ。その数学的美しさこそが全てだ……!
バキバキのレザースーツから今にも零れ落ちそうなほどのスケールっ!そしてそれを支えるだけの構造的数学的理論値ッ!!俺の人生は唐突に完成してしまった。オンリーワンを求める果て亡き探求の旅は、色々な意味で終焉を迎えている――。
俺は、魔乳と対峙して身構える三人の選ばれし黄金の乳たちを押しのけ、ふらふらと進み出ようとした。
「ちょっ……ちょっとあんた!どうしたの!?」
「導師さまっ!?」
「理想のおっぱいが…………」
などと供述を繰り返す俺に、トルテたちはおっぱいを見合わせる。
「おっぱい好きなのは判ったけどさ、ここでソレはあんまりでしょ!」
「……私たちのおっぱいじゃ駄目なの……っ?」
カーチェとアオイが何か言っている。
いいや、違うんだ。君たちのおっぱいだって素晴らしい。
しかしアレは、次元が違う。あの質量、質感、形。全てが……
「パーフェクト……パーフェクトなんだ……」
「駄目です、導師さま、誘惑に負けてはダメっ……!」
トルテちゃんのおっぱいが慌てている。
「皆!皆で導師さまを止めましょう!目を覚ましてもらうの。あなたの仲間は、私たち……私たちのおっぱいでしょう、って!」
「判ったわ!」「う、うん……」
「さあ、揺らして!」
それまで俺を圧し留めていたおっぱいたちが、俺の為に、俺のためだけに踊り始めた。これまでの敵を倒す為の戦闘乳術ではなく、俺という仲間を失わないための……。
ぷりん!ぶりんぶりん!ぶるぶるっ、ぷるる~ん。ちらんっ。ぶるる。
「………………」
「これでも駄目なの?皆、もっと激しく……!」
ぶるん、ぶるるるっ、ちらっ、ばるんっ……バルルル、バルバールン!ブロロロ!ブルォオオオオオ!キュイーン!ブルキュゴオオオオオオオオォォォ!!
その昂りは、もはや人の耳では聴こえない程の領域に達した。
それに伴い、また黄金の光が産まれ始める。三者のおっぱいが共振し、共鳴し、奇跡の金円を描いていた。これは祭り。祭りなのだ。人々の想いと情熱が集う祝祭。乳祭り。まるで天の岩戸に引きこもった天照大神を誘い出したという祭りのように。ちょっと形式は違うけど、大体は同じなのでまあいいだろう。
とにかく、その祭りは、誘惑に身をまかせそうになった俺を圧し留めたのだ。
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