第19話夜明けの街角

 繰り返していく日常の中で、夜明けの口笛吹が、サイケデリックなサウンドで、僕の耳を圧した。僕は、朝日を待っていた。イレイザーなジェノサイダーが僕を駆り立てる。僕は、ネック型のスピーカーを肩に掛け、永遠と、夜明けの口笛吹きを待っていた。シド・バレットが歌う。僕は笑う。

 テンションの波がぶっ飛んで、感覚の法悦、そして、ジェノサイダーにまじって洗われる神の人格、僕は無言のまま、田んぼのあぜ道を走った。スポーツタイプの自転車で。田んぼのはるか向こう、黄色い太陽が昇る。

 不意に網膜の裏で、青いピエロが、囁いた。

「追いかけてね。太陽をどこまでも、どこまでも、どこまでも」

 僕は口笛を唄う。

 シド・バレットの声と僕の声が完全に共鳴し、鳴り響く、朝焼けの、サウンド&ビジョン。

 イレギュラーなイレイザー。本当にうんざりする。

「やっちまえ。やっちまえ。あんな太陽はぶっ壊して、快楽の太陽、大麻を、吸い続けるように、煙草をふかして、ぶっ飛んで、いけ」

 歌が生まれる。

 曙光。 


「真実の友とは」


語りあかしたあの夕べ。研ぎ澄まされる感覚の麻痺の中で、頭で踊る、あの言葉。

そう、「助けてくれ」と私に言った、その叫び。私は手を捧げて、あなたを求めた。

そして、あなたは、乗ってくる。音楽に。リクエストはありますか? うん、君の好きな歌を、そうですかなら、ブラックな曲でどうですか? うん、それがいい。君は、少しナイーブだ。でも、心の底に、大切なものを持っていると信じている。それは何か、ユーモアだ。血の果てに獲得された、あなたの心を解きほぐす、癒しの歌。月までどうでしょうか? 否、私は地球人。あなたはロケットに乗ってくる。そして、月まで発射される、孤独の苦しみが、僕の歌で、美しい花となる。そう、花の香りがしてくる。戯れの先にある楽園。そこで、永遠に刻まれる平和への兆し。その兆しはどこにあるか? どこにもない。あなたが、美しいと感じたその花に、宿っていると、信じている。信じることが大切です。共にいよう。真実の友よ。そこに、朝はいらない。夜明けを、永遠に来ない夜明けを、語り合おう。いつかの修学旅行のように。


 僕は、トム・ヨークのシリアスな声に、胸を痛めつける。

 もうシドバレットは消えネックスピーカーから「クリープ」が聞こえている。

 苛立ち、胸の奥の傷口に触れる絶叫。僕は、さらなる高揚感で、風をきる。

 風の音とともにノイジーなギターが、ガガガッと鳴り、アイ・アム・クリープと歌う。僕は、ユニゾンする、そう勃起しながら、スポーツタイプの自転車をこぐ。

 空を横切った。白いカラス。「トゥータティス」。僕の中で、ビリーブが声を出す。そして、祈る。しかし、それは呟き。独り言のように。まるで、孤独なアコスティックギターのように。

 

「片時も離れないこの想い」


 月夜の晩に、瓦礫の上から、空を見上げた。

すると彗星が、一瞬、僕の瞳に映った。

疲れて、身を横たえる、目をつぶり、瞼の裏に浮かぶ、悲しげな恋人の瞳。

僕は、この戦場で、意味もなく傷ついた。

そして、眠りゆくその夜、そっと幕屋を出て、再び空を見上げた。

すると、そこには、恋人の優しい面影を宿した、あの日々があった。

それは、手をつなぐ、手を結び合う、恋人のHEARTサイン。

もう眠ろうか、夜の虫たちが泣いている。悲しげに、そしてひっそりと、湧き上がる泉の中で、幻灯の、女神が、僕に言う。

「傷ついた日々を、忘れないで」

「温かい心を取り戻して」

 そう、目をこする、滲む、流星。

 そして、淡い天使たちの会話。

 この瓦礫の山で、夜明けを迎える。

 そして、通り雨。

 一瞬に感じた、時間の、その後に、ひと時の虹がかかる。

 僕らは希望を忘れない。


 ぼくはサニーのことを想い、そのまま自殺した。

 そして、夢から覚めた。

 

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