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 みよりさん達が帰って行くのを見届けてからしばらくして、佐藤さんの側にある機械が音を立てる。駆けつけてきたお医者さん、看護師さんと入れ違いに私はカナエに引っ張られるようにして病室を出た。


「ユメノはここにいて」


 カナエはまるで小さな子供に話しかけるように言うと、私をエレベーター前の椅子に腰掛けさせる。それから一人で佐藤さんの病室へ戻っていった。

 まるで、映画やドラマのように現実感がない。理解したくない現実なのに、時間だけは流れていって、全てが流れていく映像のようだった。

 思いつく限りの出来ることはしたと思う。でも、まだ何かあったんじゃないかとぐるぐると考えてしまう。


「もうここにいない方が良い。ユメノ、耐えられないでしょう」


 戻ってきたカナエは力の入らない私を横抱きにすると、そのまま窓からふわっと飛び上がる。

 夜の闇に、当たり前のように光がある。車のヘッドライト、店の照明、ビルから漏れる明かり、煌めく星空。信号の赤に、同じように動きを止める人々。

 人は、亡くなったらどうなってしまうのだろう。そう考えたら、何故だか無性に私を抱えてくれているカナエに縋り付きたくなった。カナエは戸惑いの表情で私を見る。

 自分が死をこんなに怖がる日が来るとは思わなかった。そして、それを和らげてくれる存在が現れることも想像していなかった。


「どうしたの」


「家に着くまで、こうしていていい……?」


「……もちろん」


 カナエの線の細い声が、力強く感じた。

 夜の生暖かい風が私達を優しく吹きつける。カナエの何の匂いもない黒装束に包まれて、泣き疲れたのか私は眠ってしまっていた。

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