第二部
プロローグ
一筋の光も通さないような暗い、暗い空間。その中心には唯一の光を放つ、闇に溶け込むような漆黒のゴブレットが鎮座していた。
ゴブレットには二人の人影。一人は水色の髪を腰まで伸ばした中性的な男性。もう一人はフードを目深く被った小柄な人物だった。フードの人物は背後にいる中性的な男性に興味がないのか、背中を向けたままゴブレットを見つめ続けている。
「我が君」
中性的な男性が、美しいお辞儀をしながら呼び掛ける。しかし、フードの人物は振り返らなかった。それでも構わないのか、中性的な男性はお辞儀をしたまま口を開いた。
「計画は、滞りなく進んでおります」
「……」
フードの人物は何も言わない。ゴブレットを見つめ続け、部屋の中は沈黙に支配される。
このまま時間ばかりが過ぎていくのかと思われたが、突然、この静寂に波紋を立てるような足音が響いた。フードの人物はその音には反応を示し、その音の方向へと顔を向ける。
「……待っていたよ」
フードの人物は嬉しそうな声色で足音のする方へ語りかける。
足音はどんどん近づいてくる。そしてついに、ゴブレットの光に照らされ、その足音の正体が明らかとなった。
漆黒のゴブレットに照らされ、姿を現したのは鉄紺の髪に銀色のメッシュが入った青年だった。青年は無表情のままフードの人物に一定の距離まで近づくと歩みを止めた。
「アオガネくん」
アオガネと呼ばれた青年は、フードの人物に応えるようにニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます