第二部

プロローグ



 一筋の光も通さないような暗い、暗い空間。その中心には唯一の光を放つ、闇に溶け込むような漆黒のゴブレットが鎮座していた。


 ゴブレットには二人の人影。一人は水色の髪を腰まで伸ばした中性的な男性。もう一人はフードを目深く被った小柄な人物だった。フードの人物は背後にいる中性的な男性に興味がないのか、背中を向けたままゴブレットを見つめ続けている。

 

「我が君」


 中性的な男性が、美しいお辞儀をしながら呼び掛ける。しかし、フードの人物は振り返らなかった。それでも構わないのか、中性的な男性はお辞儀をしたまま口を開いた。


「計画は、滞りなく進んでおります」

「……」


 フードの人物は何も言わない。ゴブレットを見つめ続け、部屋の中は沈黙に支配される。


 このまま時間ばかりが過ぎていくのかと思われたが、突然、この静寂に波紋を立てるような足音が響いた。フードの人物はその音には反応を示し、その音の方向へと顔を向ける。


「……待っていたよ」


 フードの人物は嬉しそうな声色で足音のする方へ語りかける。


 足音はどんどん近づいてくる。そしてついに、ゴブレットの光に照らされ、その足音の正体が明らかとなった。


 漆黒のゴブレットに照らされ、姿を現したのは鉄紺の髪に銀色のメッシュが入った青年だった。青年は無表情のままフードの人物に一定の距離まで近づくと歩みを止めた。


「アオガネくん」


 アオガネと呼ばれた青年は、フードの人物に応えるようにニヤリと不気味な笑みを浮かべた。




 


 

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